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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉


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3/50

3話 残念会

夜7時

BAL Lagoon


柔らかな明かりの店内、焦げ茶色の木目と落ち着いたライトに彩られるオシャレな風景とは裏腹にとても賑わっている。

肉の焼けるいい匂いが食欲をそそる。


客達は皆楽しそうに、厳しい現実を忘れるかのようにはしゃいでいた。


「「「お疲れ様でしたー!カンパーイ」」」

グラスを合わせ乾杯をする

澪桜の為の残念会。


……やっぱりネーミングがものすごく嫌なんですけど。残念て何!?私の事!?


心の中で改めて盛大にツッコむが、今日は山本さんの奢りだ。気持ちよく奢ってもらうとしよう。


仕事の話や、山本さんの上司達の愚痴、沙也加ちゃんの恋バナなどたくさん話をしながら料理を頬張る。


「……このアヒージョ美味」

ウマウマと美味しそうに食べる澪桜を見て目を細めた山本が確信を付いた質問をする。


「……またフラれたか?」


ピクっと肩をすこしだけ反応させた澪桜

「何も言ってないのに……なぜそれを……」

エスパーかと思う澪桜。


「お前さー。分かりやすいんだよな。何かあると表情抜け落ちるから笑」

「あ!それ!分かります!!ロボットみたいになりますよね!!」


「業務は滞りなく行っておりますっ!!!!」

澪桜は反論する。


「だから!!そこがロボットなんだってば!!」

松井が爆笑しながら言った。


(言いたいことばっか言いやがってコノヤロウ……)

澪桜はわなわなするが反論出来ない。だって正解なんだもん。


「……そうですとも!!ええ!フラれましたとも!ええ!!」

開き直った澪桜はビールを飲み干しオカワリを注文する。

山本の奢りなのでお構い無しだ。


「てかなんでフラれたんだよ。何があった?」

美人で思いやりのある後輩。山本の評価はそうゆうものだった。


「あれ?山本さんは知らないんですか?」

キョトンとする沙也加。

不味い!!と思って止めに入る。

「ちょ……ちょっと沙也加ち……」


「澪桜先輩って変なんですよ!

告白された後に『好きになるまで友達でいて貰えますか?』って聞いて、友達になるんだけど、何話したらいいのか分からなくて会話にならず、挙句の果てには会っても1〜2時間で現地集合現地解散しちゃう。

だから、相手が他の人好きになってフラれるんです!毎回!男性怖いから2人きりで車のれないし!!ブフッ」


「はぁ!?マジか!!!なんだその付き合い方!?ガキか!!!」

思わず立ち上がる山本。

周りの視線を感じ、ペコペコと頭を下げた


「…………だって。相手は私を好きになってくれてるみたいだから……あとは私が好きになればと思ったんですもん……友達からなら安全かと……。」


ゴニョゴニョと口ごもる澪桜。

ちゃんと焼き枝豆は食べる。


ふむ。と少し考えた山本は

しばらくして笑いながら喜んだ。


「そうかそうか!それならちょうど良かった!!」


「……ちょ……ちょっと!!何がいいんですか!?これ残念会なんですよね!?失礼極まりないんですけど!?」


「……あー!いやいやそうゆう意味じゃない。

悪い悪い!

ちょっと思うとこがあってな。

俺の友達の結城周(ゆうきあまね)ってやつがずっと前からお前と話してみたいから紹介してくれって言ってきてしつこかったたんだよ。」


「紹介……?」


(冗談じゃない。やっと何もかもリセットした所なのに余計なノイズを私の人生に入れないで欲しい。)


澪桜はお断りしようと口を開く。

「すみませんがご遠慮したいです。」


「……なんでだよ?今まで何人か知り合って来てんだろ?……あと一人ぐらい友達やってみても良いじゃねえか」


それはそうだが……男性と友達になるメリットを感じないし、基本会話が続かない。

もう無理矢理会話を続ける努力なんて懲り懲りだ。


するとその様子を見ていた松井がキラキラした目で口を開く。


「……その人ってイケメンなんですか?」

さすが肉食系女子。食いつきが半端ない。

ある意味清々しいと尊敬する澪桜。


それを聞き待ってましたとばかりに山本は自分の事のように友達自慢が始まった。


「イケメンもイケメンだよ。

男の俺でも圧倒されるくらいにはな。

そいつは俺の大学の同期の中では一番の出世株でさ!!だからって鼻にかけるようなやつじゃなくてな。変わらず今もよく連絡し合う友達なんだよ……良い奴でさ。」


ふふん!と自分の自慢をするように語る

更に続けた


「正直、あいつのこと嫌いな女なんてほとんど見たことねぇな。見た目も中身もパーフェクトってやつ。鼻にかけてねぇのがまたすげぇ所でさ。」


「おおおー」

松井は拍手している。

見たい見たいとミーハー心全開だ。


ため息をつきながら澪桜は疑問を口にした。


「いや、そもそも何で、そんな凄い方が私なんかを知ってて紹介されたがってるんですか?ものすごく意味不明ですけど。」


疑う澪桜に山本が言った。

「ほら、3年くらい前に篠山部長と俺とお前で一緒に参加した10社合同プロジェクトあっただろ?ほら、新人のお前は俺の補佐で勉強として付いてきたやつ。あれのプレゼンの総指揮任されてたやつ、あいつが周だよ。あの時も紹介しだろ?」


「……?あー……なんかそんな事あったような……無かったような。」

あまり覚えてないと澪桜は首を傾げる。


「それだよ。それそれ!そこが良かったんだって。

俺にはよくわかんねぇけど。」


(いや、私の方がずっと意味不なんですけど。)

ツッコミたくて仕方ない。


相手の心情が全く想像つかない。何がいいのか理解不能だ。


すると山本はこう言った。


「近づいて来るやつはだいたい色んな"欲"で周を見るからな。

……特に女はな。


それを嫌悪してた周は

昔から人間嫌いだったんだけど、お前にはまったくそれが無かったから、純粋に友達になって話してみたかったんだと。

現にほら、顔すら覚えてないだろ?」


「確かに……」

それなら納得だが……だからといってめんどくさい事には変わりない。


「ちなみにこいつ(松井)じゃまず無理だけどな」


「山本さん!!それは失礼すぎですよ!!私だってそんなナルシス男なんて願いさげです!!どうせ大したことない!そんなやつ!」


プンプンと松井は怒りながらハイボールを飲み干す。


「あはは。そうかそうか。そりゃ好都合、お前に好意寄せられても困るとこだったからな。

じゃあここに呼ぶけど問題無いな?

……周がナルシスかどうかは見てから言えよ!腰抜かせ!!」


ハッハッハと胸を張った

山本さんが威張る意味が分からん。


……そんなにハードル上げられてその人も可哀想にと思う澪桜。

まぁ、どちらにしろどうでもいい。


「お好きにどうぞ!!

それに私来週はパイロットと合コンですから!!めちゃくちゃなイケメンゲットする予定です!」


フン!と鼻息を荒くしながらまくし立てる松井。


「よおし!じゃあ電話するぞ!!!」

と、スマホを取り出したので、慌てて制止する。


「ちょっと山本さん勝手に決めないでください!私は男性との出会いなんて今望んでません!それに今日は私の残念会なんですよね!?3人で飲めばいいじゃないですか!?」


山本はニヤっと笑いながら澪桜を言いくるめる。

「じゃあ、ただこの場で1回喋ってみるだけって事でもいいんじゃねぇか?試しにさ。残念会だからって俺の友達を紹介してはいけない理由なんてねぇだろ?な?」


なんだその理屈は……そう思ったが酔っ払った山本さんに何を言っても無駄だと感じで仕方なく折れることにした。


「……分かりました。まぁ、この場で話すだけなら。」


よしきた!と了承を得て速攻でLINU電話を始めた。


「もしもし?おー。周か?今大丈夫か?

例のあの件、OKもらったぞ。

うん、今隣にいる。

ああ。そうそう、

そんで今から来れるか?

……分かった分かった。じゃあ地図送るわ。」


電話を切ってこちらを向きニヤニヤしている。


「……5分で来るってさ。あいつどんだけだよ」

あいつ慌ててたよと言いながら

わははと爆笑し黒ビールを飲み干した。


それを見て澪桜は頭が痛くなってきた。

……面倒くさい事になったな。


せっかく先の人生の方向性が決まったの思っていたのに、私の周りはそれを許してくれないらしい。


初めての人(2回目らしいが)と話をしないといけないなんて……

人見知りの澪桜は、知らない相手の場合、感情の機微が分からない分、空気を力いっぱい読むことに専念しなきゃいけなくなるので

神経使うため苦痛でしかない。


ひとしきり笑ったあと……山本が真面目な顔をして言った。


「……安達。お前大した出会いすらした事ないんだろ?

ならまだ諦めるな。今回の周ですら話してみてダメだったら、そん時考えろ。

……ま、俺はアイツを信じてるけどな。


頭も良いし、性格も良い。

きっとお前のいい友達になるさ。

……俺の自慢の友達をそこら辺のアホな男共と一緒にするな。」


私の傷を……全てを見透かされ、励ましてくれている上司に少し心が暖まる。


「……はい。」

澪桜はなぜか照れくさくなってしまい

下を向いて枝豆を食べた。


「いいこと言ってんのに枝豆やめろ」

うん。正しいツッコミだ。

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