3話 残念会
大幅に改稿致しました。
夜7時
BAL Lagoon
柔らかな明かりの店内、焦げ茶色の木目と落ち着いたライトに彩られるオシャレな風景とは裏腹にとても賑わっている。
肉の焼けるいい匂いが食欲をそそる。
客達は皆楽しそうに、厳しい現実を忘れるかのようにはしゃいでいた。
「「「お疲れ様でしたー!カンパーイ」」」
グラスを合わせ乾杯をする
澪桜の為の残念会。
……やっぱりネーミングがものすごく嫌なんですけど。残念て何!?私の事!?
心の中で改めて盛大にツッコむが、今日は山本さんの奢りだ。気持ちよく奢ってもらうとしよう。
仕事の話や、山本さんの上司達の愚痴、沙也加ちゃんの恋バナなどたくさん話をしながら料理を頬張る。
「……このアヒージョ美味」
ウマウマと美味しそうに食べる澪桜を見て目を細めた山本が確信を付いた質問をする。
「……で?なんでフラれた?」
ピクっと肩をすこしだけ反応させた澪桜
「……この人はまた唐突に核心をつく様なことを……」
まだ始まったばかりでアルコールも入ってないというのに。
デリカシーがないというかなんと言うか。
ムカつくことこの上なしだなと思う澪桜
「お前さー。あれで普通にしてるつもりってのがまず間違いなんだよ。感情抜け落ちた顔で淡々と作業こなしやがって」
「あ!それ!分かります!!ロボットみたいになりますよね!!」
「業務は滞りなく行っておりますっ!!!!表情は関係ないかとぉ!?」
澪桜は反論する。
「いや、あの能面顔でツッコまれないと思ってるのがズレてるよって話してるんですよ!澪桜先輩!」
松井が爆笑しながら言った。
(言いたいことばっか言いやがってコノヤロウ……)
澪桜はわなわなするが反論出来ない。だって正解なんだもん。悲しくは無いけど反省してたからさ。
ワナワナしながらも答える澪桜
「……悪かったねぇ能面で!……そうだよ!また友達やめましょうて言われたよ!絶縁だよ!!」
開き直った澪桜はビールを飲み干しオカワリを注文する。
山本の奢りなのでお構い無しだ。
「てか何だ?その絶縁って?……彼氏じゃねぇのか?」
美人で思いやりのある後輩。そこそこモテてるんだろうというのが山本の客観的な評価だった。
「あれ?山本さんは知らないんですか?」
キョトンとする沙也加。
不味い!!と思って止めに入る。
「ちょ……ちょっと沙也加ち……」
「澪桜先輩って変なんですよ!
告白された後に『好きになるまで友達でいて貰えますか?』って聞いて、友達になるんだけど、何話したらいいのか分からなくて会話にならず、挙句の果てには会っても1〜2時間で現地集合現地解散しちゃう。
だから、相手が他の人好きになってフラれるんです!毎回!男性怖いから2人きりで車のれないし!!ブフッ」
「はぁ!?マジか!!!なんだそれ友達て!?ガキか!!!」
思わず立ち上がる山本。
周りの視線を感じ、ペコペコと頭を下げた
「…………だって。相手は私を好きになってくれてるみたいだから……あとは私が好きになればと思ったんですもん……友達からなら安全かと……。」
ゴニョゴニョと口ごもる澪桜。
ちゃんと焼き枝豆は食べる。
ふむ。と少し考えた山本は
しばらくして笑いながら喜んだ。
「そうかそうか!それならちょうど良かった!!」
「……ちょ……ちょっと!!何がいいんですか!?これ残念会なんですよね!?失礼極まりないんですけど!?」
「……あー!いやいやそうゆう意味じゃない。
悪い悪い!
ちょっと思うとこがあってな。
俺の友達の結城周ってやつがずっと前からお前と話してみたいから紹介してくれって言ってきてしつこかったたんだよ。」
「紹介……?」
(冗談じゃない。やっと何もかもリセットした所なのに余計なノイズを私の人生に入れないで欲しい。)
澪桜はお断りしようと口を開く。
「すみませんがご遠慮したいです。面倒臭いです。」
「……面倒くさ……!?なんでだよ?今まで何人か知り合って来てんだろ?……あと一人ぐらい友達やってみても良いじゃねえか」
それはそうだが……男性と友達になるメリットを感じないし、基本会話が続かない。
もう無理矢理会話を続ける努力なんて懲り懲りだ。
するとその様子を見ていた松井がキラキラした目で口を開く。
「……その人ってイケメンなんですか?」
さすが肉食系女子。食いつきが半端ない。
ある意味清々しいと尊敬する澪桜。
それを聞き待ってましたとばかりに山本は自分の事のように友達自慢が始まった。
「イケメンもイケメンだよ。
そいつは俺の大学の同期の中では一番の出世株でさ!!エリート街道まっしぐらな癖に鼻にかけてなくてな。
変わらず今も繋がってんだよ。」
ふふん!と自分の自慢をするように語る
「へえ、それは心の広い人だ。山本さんなんかと友達続けるなんて」
「うん、確かに」
澪桜に続き松井も頷く
2人とも山本に辛辣
「ぐっ……お前ら奢ってもらってる分際で……!!ムカつく事ばっか言いやがって!!!」
ぐぬぬと腹を立てながらビールを飲み干しオカワリを店員に要求する山本
ため息をつきながら澪桜は疑問を口にした。
「いや、そもそも何で、そんな凄い方が私なんかを知ってて紹介されたがってるんですか?ものすごく意味不明ですけど。」
疑う澪桜に山本が言った。
「ほら、3年くらい前に篠山部長と俺とお前で一緒に参加した10社合同プロジェクトあっただろ?ほら、新人のお前は俺の補佐で勉強として付いてきたやつ。あれのプレゼンの総指揮任されてたやつ、あいつが周だよ。あの時も紹介しだろ?」
「……?あー……なんかそんな事あったような……無かったような。」
あまり覚えてないと澪桜は首を傾げる。
「あの時だよ。お前のその雑な感じが気になったんだと。」
(いや、雑て!!そこがいいて!その人も山本さんもなんかムカつく!!)
ツッコミたくて仕方ない。
相手の心情が全く想像つかない。なんでそんな理由で3年前から!?
すると山本はこう言った。
「あの時のお前の凛としてるのに飾りっけが無い感じが話しやすそうで、ただ純粋にお前と友達になって話してみたかったんだと。アイツ女っ気なんて今まで一回もなかったからなぁ。顔は良いのに人付き合い苦手なやつでさ。」
「確かに……まぁ。飾ってはないですけど。」
言わんとすることは分かる。私にもなかなか友達出来ないし、異性は特に話し合いそうな人なんて出会ったことないから。
「ちなみにこいつ(松井)には紹介出来ねぇ!がっつきそうで!」
「山本さん!!それは失礼すぎですよ!!私だってそんな陰キャ男ごめんです!!どうせ大したことない!そんなやつ!」
プンプンと松井は怒りながらハイボールを飲み干す。
「あはは。そうかそうか。陰キャは嫌か!
じゃあとりあえずここに呼ぶけど二人とも問題無いな?
……周が陰キャかどうかは見てから言えよ!腰抜かせ!!」
ハッハッハと胸を張った
山本さんが威張る意味が分からん。
……そんなにハードル上げられてその人も可哀想にと思う澪桜。
まぁ、どちらにしろどうでもいい。
「お好きにどうぞ!!
それに私来週はパイロットと合コンですから!!めちゃくちゃなイケメンゲットする予定です!」
フン!と鼻息を荒くしながらまくし立てる松井。
「よおし!じゃあ電話するぞ!!!」
と、スマホを取り出したので、慌てて制止する。
「ちょっと山本さん勝手に決めないでください!私は男性との出会いなんて今望んでません!それに今日は私の残念会なんですよね!?3人で飲めばいいじゃないですか!?」
山本はニヤっと笑いながら澪桜を言いくるめる。
「じゃあ、ただこの場で1回喋ってみるだけって事でもいいんじゃねぇか?試しにさ。残念会だからって俺の友達を紹介してはいけない理由なんてねぇだろ?な?」
なんだその理屈は……そう思ったが酔っ払った山本さんに何を言っても無駄だと感じで仕方なく折れることにした。
「……分かりましたよ……強引なんだから。まぁ、この場で話すだけなら。」
よしきた!と了承を得て速攻でLINU電話を始めた。
「もしもし?おー。周か?今大丈夫か?
例のあの件、OKもらったぞ。
うん、今隣にいる。
ああ。そうそう、
そんで今から来れるか?
……分かった分かった。じゃあ地図送るわ。」
電話を切ってこちらを向きニヤニヤしている。
「……5分で来るってさ。あいつどんだけだよ」
あいつ慌ててたよと言いながら
わははと爆笑し黒ビールを飲み干した。
それを見て澪桜は頭が痛くなってきた。
……面倒くさい事になったな。
せっかく先の人生の方向性が決まったの思っていたのに、私の周りはそれを許してくれないらしい。
初めての人(2回目らしいが)と話をしないといけないなんて……
人見知りの澪桜は、知らない相手の場合、感情の機微が分からない分、空気を力いっぱい読むことに専念しなきゃいけなくなるので
神経使うため苦痛でしかない。
ひとしきり笑ったあと……山本が真面目な顔をして言った。
「……安達。お前大した出会いすらした事ないんだろ?
ならまだ諦めるな。今回の周ですら話してみてダメだったら、そん時考えろ。
…ま、問題ないと思うけどな。
真面目で抜けてて、面白ぇし。きっとお前のいい友達になるさ。……周をそこら辺の耐久力の無いダメ男と一緒にすんなよ?」
私の傷を……全てを見透かされ、冗談まじりに励ましてくれている山本に少し心が暖まる。
「……むぐむぐ……はい。」
澪桜はなぜか照れくさくなってしまい
下を向いて枝豆を食べた。
「おい、いいこと言ってんのに枝豆やめろ」
うん。正しいツッコミだ。




