28話 誓い
今回も長めです。
昨日山本に散々惚気けた結城
しまいには
「付き合ってもねえのに気持ち悪いぞお前!!
彼氏面すんな!!」
と怒られてしまった
でも反省なんかしない。
というか女に捨てられてからずっと独り身の残念ダメ野郎に何を言われても響かないし。
でもとりあえず
酒とピザのお礼に有益な情報を教えてもらった。
安達さんに対する忠告も。
「あいつ美術館行きたがってたぞ。ふぇ……何とかが今海外から来てるんだと。だから期間中に行けたら行きたいみたいなこと言ってたよ。」
「それとなんか元彼に車で送って貰った時に、無理やりホテルに連れてかれそうになったせいで男と二人で車乗るの怖いらしい。」
それだけは知れて本当に良かった。
元カレか……やっぱいるよねそりゃ。
最低な男だったみたいだけど。
あいつが一昨日泊まりに来て昨日も夜まで居やがったせいで俺は今安達さん欠乏症なんだ。
今日も本当は会いたかった。
でも山本がいる前で昨日電話出来なかった。
せっかくの3連休だったのに。
3日、デート中にまた誘えば良かった。
安達さんの手作りが食べられて舞い上がりすぎてた自分が今更憎い
LINUだけじゃ満足できなくなってしまったせいで
日々悶々としてしまう。
───毎日会いたい。
仕事終わったら一緒に過ごしたい。
休みの日も一緒に何処かに行きたい。
その為に……もっと仲良しの友達になりたい。
……でも、どうやって?
悩めば悩むほど答えは見つからない。
ただ、胸が苦しくなるだけだ。
とりあえず明日の事を考えよう。
そう気を取り直しパソコンに向かう。
カタカタとキーボードを打つ。
「……フェルメール。これか。」
とある美術館で現在開催されている
“ルネッサンス絵画とフェルメールの世界展”
というタイトルの催しだった。
6月まで続くらしいが
安達さんが望むなら期間中何回だって連れて行ってあげたい。
「……誘ってみようかな。」
少しフェルメールの歴史背景を勉強してから行くべきか?
いや、安達さんの方がきっと詳しい。
それなら話を聞く方が喜ばれるかもしれない。
色々パターンを想像し誘い文句を考えた。
でも……スマートな語彙が思いつかない。
やめた。こないだの時みたいに、素直に誘おう。
断られたら……また日を置いて誘えばいい
嫌われない程度に。
そう思って
ゆっくりベッドに移動し
寛いだ状態でLINUを開いた
「こんばんは。今日はお電話しても大丈夫ですか?」
送信する。
本当は今から……そう言いたいが澪桜の状況が分からないから返事を待つ
するとすぐ返信が来た
『こんばんは!丁度私もそうLINUしようとしてたところだよ!何時でもいいけど、私からかけようか?』
……可愛い。
同じこと思っててくれたなんて。
キュンとする結城
早く声が聴きたくて直ぐに電話をかけた。
「……もしもし。こんばんは」
結城の低く甘い声が部屋に響く
『こんばんは。結城さん
今日はゆっくりすごせたかい?』
澪桜独特の古典的な口調
女性っぽくは無いが柔らかい話し方
「はい。1日中掃除してました」
本当は君に会いたかった
そう思いながら
『偉いね、結城さんは綺麗好きなんだねぇ。
私は衣替えの為にセーターや毛布達を洗って収納したよ!梅雨が来る前に』
楽しそうな口調で返してくれた。
褒められて嬉しい結城
「……普通ですよ。
え?セーターって家で洗えるんですか?俺はいつもクリーニングに出してました」
少し驚くように聞いた
『洗えるよ!エマーロさんで洗うといいよ。縮まないから!』
洗剤にさん付け……可愛いにもほどがある
「え?そうなんだ!俺も買ってみよう。タンブラー乾燥はやめた方がいいかな?
……これピンクと黄色があるね。
安達さんはどっち使ってますか?」
画面を操作し調べながら澪桜に聞いた
どうせなら同じ香りに包まれたい。
『それはなるべくやめた方がいいかもしれないね。縮むリスクを考えたら陰干しがいいのかなぁ?
そして干す時もなるべく平干しがいいけど、私は普通にハンガーに2つ折りして干してる。
……ちなみに私は黄色!』
その後も洗濯談義が続く
洗濯好きの結城。ハッと我に返る
……どこぞの主婦か。俺は。
何を楽しくてるんだ!思わず自分にツッコんだ。
明日の話がしたいのに、なかなか上手く会話を誘導できない。
しばらくして澪桜は言う
『休み明日で終わりだねぇ。あっという間だよゴールデンウィークなんて。結城さんは明日の休み、どんな風に過ごすんだい?』
やったぁ!安達さんから予定聞いてくれた!
感謝する結城。
会話の糸口を見つけられず悩んでいたから助かった
でもその前に。
「安達さんは?明日のご予定は?」
結城にとって重要な質問。
ベッドサイドの小さなキャビネットにスマホを起き
正座して聞く
『ん?私?明日は特に何も無いからダラダラ過ごすつもりだよ。衣替えも終わったからね。』
良かった!……それなら誘ってもいいよね?
結城は胸を撫で下ろし深呼吸してから話し始めた
「そっか。……俺は明日美術館に行ってみたいなって。前に安達さんからお話聞いて、それで───」
澪桜が食い気味で返す
『美術館!いいねぇ!!今はフェルメール展が〇〇美術館に来てるよ!?興味持ってくれたんだ。……そっかそっか。』
自分の話が人に影響を与えられた事が嬉しくて結城の言葉を噛み締めていた。
「もし良かったら……なんだけど……。明日俺と一緒に美術館、行きませんか?」
自信なさげに結城はおずおずと……なるべく素直に聞いた。
かっこ悪いけどそれ以外語彙が出てこないから。
『え!?明日??……別にいいけど……』
少し……歯切れが悪い。
結城は焦った
「……どんだけぼっちなんだよ。ひとりで行けよ!て思ってるでしょ!?」
断られるのが怖くて不安で……笑いで誤魔化した
するとスマホから爆笑する声が響いた
『ぼっち……wwwそうだった!!あはははははははは!!!結城さんは……ぼっちだったんだった!!!!あははははははははは!』
「いや、笑いすぎだし!!安達さんも同類でしょうが!!」
爆笑する澪桜に思いっきりつっこむ。
内心ホッとしながら。
『ごっ……ごめんごめん……。いや、誘われると思っていなかったからさ。
楽しそうだね!正直なところ、明日一日暇を持て余すところだったから嬉しいよ。なにせ私もぼっちですからね!あはははははは!』
色気も何も無い澪桜の返事。
でも快くOKしてくれた事が凄く嬉しい。
「じゃあ……連休最後の日は思いっきり楽しみますか。美術館って行ったことないからよく分からないんだけど……何時がいいとかあります?」
結城が優しく聞いた
『そうだねぇ。午後はツアー客とかで混む可能性が高いんだよね。あそこの美術館。
しかも明日はゴールデンウィーク……うーん。
開館してすぐとかどう?それならゆっくり回れるかもしれない』
え!?朝から会える!
うっかり声に出しそうになるが必死に堪えた
「開館直後、いいですね。……10時か。じゃあ念の為9時半にお迎えに伺っていいですか?あの道なら渋滞にはならないと思うけど」
スマホでナビを開いて場所とルートを確認した。
『え?車で?』
聞き返す澪桜
「うん。
だって美術館の最寄り駅で待ち合わせて歩いて行ったら……この位置だとかなり時間ロスですよ?だったら車で行った方がまだ良くないですか?」
待ち合わせデート……それもいいけど、効率が悪いしなにより結構歩かせてしまう。
ドライブデートも捨てたもんじゃな───
ドライブ……?
つい重要な事を忘れていた。
澪桜は男性の車に乗るのが怖い……
山本から忠告されていたはずなのに。
───しまった。
「すっ……すみません!やっぱ駅で待ち合わせにしましょうか!!車は無し!!
えっと……待ち合わせ何時にしたら……」
ヤバい!嫌われる
焦りと不安から声が震える
どうしよう。
終わる───
『……もしかして……
私を心配してくれているのかな?』
優しく問う澪桜の声
「えっと……あの。」
上手く答えられない
『……そうか……山本さんから聞いたんだね?
まぁ……うん、一度男性の車に乗って怖い思いをした事があるからね。確かに男性に誘われても車は避けてきたよ。
でも……私は結城さんなら不思議と怖くないよ。というか怖いと思った事がないよ。』
(俺なら……怖くない?)
「……じゃあ……車で迎えに行ってもいいの?」
不安げに聞いた
「うん。是非お願いするよ。確かに結城さんの言う通り駅で待ち合わせだと効率悪いよね。じゃあ……明日のチケット代は私に任せて!」
張り切った様子で答えてくれた。
“男としてお前を見ていない”
そう言われたようなものだが……
少しだけ澪桜の特別になれた気がした。
それなら悪くない。
安達さんは男性との出会いはもういいと言っていたと山本から聞いた。諦める前に俺と友達になってみろと残念会のあの日言ってくれたそうだ。
でもきっと彼女は、もう異性としての出会いとかそういうのは懲り懲りなのだろう。
好きでもない相手に告白される煩わしさは……すごくわかる。
……俺も同じだから。
それで俺に友達になってくれてありがとう、とお礼を言ってくれたんだろう。
初めて公園で会ったあの日。彼女はとても嬉しそうだった。
俺が友達だから君はこんなに優しくしてくれるんだよね。
大丈夫、好きな気持ちなんて
押さえ込めば問題ない。
君の傍にいるんだ。
君が用意してくれた”友達”って椅子から落ちないように。
俺は伝えない。
恋する気持ちは我慢できるから。
君を傷付けたり裏切ったりなんか……絶対しない。
結城は今……心に決めた。
「……じゃあ俺はランチご馳走しよっかな。何系が食べたいですか?」
一際優しく甘い声で囁いた




