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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉


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25/42

25話 宝石蜂

※虫の回です。澪桜が暴走します。イラガセイボウが出てきます。

苦手な方はスキップ推奨です。内容が分かるように簡単なあらすじを後書きに書きました。


新緑の香りが鼻を掠め

さわさわと木の影が優しく揺れる

心地よい昼下がりの日差し

丁度ふたりの座るベンチは日陰になっていた


チャイを幸せそうに飲む澪桜の横顔を微笑みながら見つめる

(……買ってきて本当に良かった)

また買ってあげよう。次は何が喜ぶかな

そんなことを考えていた


だが澪桜は違ったらしい

「もう少ししたら……イラガの時期ですなぁ」


「い……いらが!?」

想像より遥かに遠い澪桜の言葉にびっくりし、鼻から出そうになるカフェラテ


「別名電気虫と呼ばれています。去年のあれは……とても痛かった……」

遠い目

そよそよと爽やかな雰囲気を醸し出し

言ってることは様子がおかしい。


何をそんな切ない感じで言ってるんだこの人はと心の中で思う

……この空気、結城は知っている。

まずい……早く話をそらさないと


「あの、あだ───」

「イラガセイボウ!!ご存知ですか!?イラガに付く寄生バチです!!」


ああああああああ。

声にならない結城の悲鳴

紙一重で、間に合わなかった。


「いやぁ痛くて痒い記憶と共に……イラガセイボウの事を結城さんに話したかったの思い出しました!!良かった良かった!!」


(全然良くないですよ!?……俺に話したかった?

え、可愛い。それはめっちゃ嬉しいけど……

内容が嬉しくなさすぎる!!また要らない知識ぶっ込む気だこの人!)


今の結城は怯えて警戒する猫のようだ、

そう。毎回電話で余計な知識を増やさせられている。色んなジャンルの無駄な知識。

澪桜の話し方が面白くて忘れられない。それがとても不本意。

イラガて。……俺虫、苦手なのに

後で気になって検索してしまう……嫌なのにやめられない。


「もし嫌だったら正直に言ってくださいね?

私は細かな感情が分かりません。その場の空気が凍りついたりしないと判断できないから。

結城さんの嫌がることはしたくないので

電話で散々寄生虫の話しておいて今更かもしれないけど……」


空気を読もうとしたのだろう。

結城の顔を見てくぐもった感じを察知したらしい。

誠実な澪桜の態度に好感さえ覚えてしまう。


「あ、いえ……そんな。俺も楽しいです。

確かに寄生虫なんて……俺の人生には関わり無かったけど面白いですよ。お話は」


気にしてくれてた事が嬉しくて、つい見栄を張ってしまった。……悪手だ。


「本当ですか!?嬉しい!!

そして安心しました!結城さんも興味あって良かった!!

イラガセイボウって寄生虫の中でも群を抜いて綺麗なんです!宝石みたいなんですよ!!寄生虫の概念が変わるはずっ!!」


キラキラとした目で結城に食いついて話す

(うん。……概念て何。)

綺麗な寄生虫だから好きになってねってどういう感情?

全然意味が分からない。

そんな結城を無視して澪桜のマシンガントークは続く。


「イラガセイボウとはですね、その名の通りイラガに寄生するハチです!イラガが終齢幼虫になるまでに卵を産み付けるらしいです。そしてイラガが繭になったらその繭ごと奪い取る。イラガの養分を吸い取り、繭をそのまま活用するんですよ!」


「へえ。ちなみにイラガって……どんな所に繭つくるんですか?」


はっ!!とつい出てしまった質問を取り消そうと口を塞ぐがもう遅い

それを聞いて

ぱあっ!!っと眩しいほど目を更に輝かせ

とても嬉しそうに揺れながら澪桜は続ける


「桜や柿、楓、梅、ケヤキなんでもつきます!しかも針飛ばすから傍を歩いただけで私みたいにイラガに負ける時もあります……だいたい6~9月頃に大量発生するから気をつけて!危ないゾ☆!!!結城さん肌弱そうだから!」


「はっ……はい。気をつけます。」

お茶目に言われても……内容が……。

あれ?ギャップってこうゆう事だっけ……?


ネットで検索した恋愛テンプレを思い出し……現実逃避。


「で、イラガセイボウという寄生バチがどれだけ綺麗な蜂か見て欲しくて。……ほらほら!」


物凄い笑顔でスマホで見せてくれる……

見たいような見たくないような。

どうせ後で検索してた気もする。

そう思い直して、恐る恐る画面を覗いた。


イラガセイボウ

瑠璃色とエメラルドグリーンのメタリックで

……確かに宝石みたいな美しい蜂。

だがどこか毒々しいその色は寄生バチという名に相応しい気がした


「うわ……たしかに。

綺麗な蜂ですね……瑠璃色だ」


満足そうに澪桜は話し出す


「ね?……寄生虫って気持ち悪がられる事が多いですが、自然界には無くてはならない存在。彼らが偏りをコントロールしてくれているんですよ。

地上の生物を魚の餌にしてくれたり、田んぼや生きた木を守る為に間引きしたり。そう考えたら尊いし、この綺麗さも頷けるでしょ?」


そう言って画面の中の蜂を満足そうに眺める

話の内容は全く色気もないし可愛くない。

でもなぜか……結城にはそんな彼女が綺麗に映り、考え方が真っ直ぐで余計に好きになってしまった。


全くときめく場所じゃないのに

胸がきゅっと軋んだ


「そんな風に考えられる安達さんが、素晴らしいと思います。」


精一杯伝えた。

君が特別だって。


「いやいや、全然。話聞いてくれる結城さんの方が凄いというか……優しいというか。

……友達になれて良かったって心から思っています

私なんかと友達になってくれてありがとう

いつもしょうもない私の話に夜遅くまで付き合ってくれて、ありがとう。

……今日は結城さんにそれを言いたくて来ました」


結城に向かって深く微笑む

心からの感謝の気持ちを込めて。


時が……止まる


思わず澪桜の儚い笑顔に見蕩れた。

景色に溶けるような光に透けるようなそんな光景に

息を飲む───


結城は我に返り、焦った。

心臓が……うるさくて

顔がみるみる赤くなっていくのが分かり

思わず顔を背けてしまった。


「いえ!そんな!全然!!澪桜さんのお話が面白いから……聞いてしまうだけで!!

こちらこそ!友達になって頂けて光栄っていうか!お礼を言うのは俺の方っていうかっ!!!」

慌ててカフェラテを飲む


「なんか暑いですね!あははは!」

そう言ってカーディガンを脱いだ

かなり挙動不審。


「確かにいい天気ですね!絶好の光合成日和」


目を瞑って新緑の匂いを嗅ぐ

絹のような髪が揺れた

背けたはずの顔がまた澪桜を追う。


どうしても目が離せない。

気付くとすぐ君を見てるんだ。

目に焼き付けるように。


この時間が終わらなければいいのに。

時が止まってほしい。

本気でそんな事を思ったのは生まれて初めてだった。


こんなんじゃ全然───

……足りない。


安達さん。俺、君ともっと仲良くなりたい。

君が知りたい。



頬を紅潮させ……結城は呟く

「……安達さん。」


「はい?」


「……次の休み来月の3日も……来ていいですか?」

澪桜をまっすぐ見つめる結城

前髪が風に靡く


一瞬目を丸くしたが……

すぐにニッコリと微笑んで答える


「はい。是非!次はお昼前にしましょうか?11時とか。

……おにぎらずくらいで良ければ作ってきますから。日向ぼっこしながら食べませんか?」


断られたらという不安が一気に消え

澪桜の提案に

心が踊る

「え!?本当ですか!?」


「うん。今日のお詫びとお礼……にもならないけど」

そう言って申し訳無さそうにする。

まだ気にしていたらしい。


「お詫びとかそんな!……嬉しすぎます!わー!!次の休みが楽しみです!俺も何か買って来ようかな!?」

そんなこと忘れてましたとばかりに結城ははしゃいで見せた。


「それいいね……間違えた!……ですね!ピクニック気分で楽しそうですよね!」

おっと!と澪桜は言い直す。

今日だけでも何回か敬語は崩れていた。


(そんなこと……気にして欲しくない。)


もっと近づきたくて結城は

澪桜に提案した。


「……もう、敬語はいいですよ"友達"なんだから。」


「そうですか?でも……結城さんは綺麗な敬語だし」


「俺のはただの癖。基本会社でしか会話しなかったかからかな。

慣れたら俺もタメ口で話しますよ。だから気にしないで。ね?

歳もひとつしか変わらないんだし。」


事実を踏まえて押しつけにならない程度に

切実さを滲ませた


「うん。わかった……じゃあお言葉に甘えようかな」


「……ありがとう。そうしてくれると、すごく嬉しいよ。」


わざと敬語を使わず……澪桜を安心させてみせた。



少し澪桜と近づけた気がした。

今日だけだと思ったデートが

次に繋がった。

彼女にとってはデートじゃない。

だとしても……

たまらなく嬉しい。


より仲の良いい“友達”になれた気がして

結城は1人幸せを噛み締める


──────今は。

澪桜の独特な価値観に触れ更に心を奪われていく結城

知りたくもない知識と共に深く澪桜という人間に触れていく。


そんな結城に澪桜は感謝の気持ちを伝える。

私なんかと友達になってくれてありがとう。

それが伝えたくてここに来たと。


結城は頬を染め

5月3日にまた会いたいと言う。


澪桜はそれを快諾し、また公園デートの約束をする。


時折崩れる敬語に欲が出る結城は

もう、タメ口で話して欲しいと持ちかける。


より距離が縮んでいく2人。

友達として仲良くなっていく事に幸せを感じる結城だった。


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