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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉


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17/41

17話 サカバンバスピス

今回も……カエルという言語が多少出てきます。

それとその種類が数種類。

名称のみですが。


苦手な方はご注意ください。


クリスマスイブから書き始めた本作。お付き合いくださいました方本当にありがとうございました。

来年もどうかよろしくお願いいたします。

良い年をお迎えください☆

パチ……


明るくなる廊下。

そこを抜けると開放的なリビングが現れる。

白と黒に統一された生活感を感じさせない部屋。


「……さてと。」

そう言って風呂場に直行する。

服を脱ぎその場でドラム式洗濯機に入れ、

シャワーを浴びる。


風呂上がりに顔や身体を保湿し、

白のカットソーと黒い緩めのパンツを履き、

髪の毛をタオルで乾かしながら

リビングのソファに腰を落とす。


手にはスマホ。

帰ってからずっと澪桜にLINUを送っていた。


(……へえ。映画館一人で休みの日に行くんだ。……安達さんの好きなジャンルって何系だろう)

頬を緩ませながら次の返信を考えていた。


そこにとんでもない邪魔が入る。


着信。

山本だ。


「……なんだよ……面倒くせぇな。」

舌打ちし、一気に顔から表情が消える。

(そういえば朗報だのなんだの言ってたな……。出ないと延々と出るまでかけ続けてくるからなあいつ。)


諦めたように仕方なくスワイプする。

まぁ電話しててもLINUできるし、と

スピーカーにした。


「……何」


すると電話越しにイラついた声が返ってくる。


「そこはせめて、もしもしから入れよお前!!!

俺に対して雑すぎねぇか!?」


どうでもいいクレームだ。


「……ウザい。反応がウザい。で、朗報ってなんなんだよ?

俺忙しいんだけど。」


澪桜に見せる表情や声とはまるで違う、

低く冷たい態度。

だがLINUを打つ手は止まらない。


「……お前……どうせ今も安達にLINU送り続けてるから……それで忙しいんだろ。」

クックックと笑う山本。


……一瞬止まる結城。


「え……なんで知って……」

「今日、安達から聞いた」


(安達さああああああああああああああん!!!!)

声にならない叫びと共にクッションに顔を埋め即死した。


電話から高らかな笑い声。


結城は恥ずかし過ぎてなかなか復活出来ない。


「あはははは!安達の言ってたこと……ガチだった!!!

あはははははははは!!!」

爆笑する山本


「笑うなぁぁぁぁぁ!!!やめろぉぉぉぉ!!!」


クッション越しに叫ぶ

結城の心の叫び


「……悪ぃ悪ぃ。で……でもお前、そ……即レスて。

あはははははははははははは」


「ぎゃぁぁぁぁあ!!!助けてぇぇぇぇ」


大学時代からこうやっていじられ続けてきた。


「……あー笑った。でも朗報は本当だぞ。

あいつ肩がこるんだとさ。」


「……肩?どうゆう意味?」

少しだけクッションから顔を覗かせた。


「お前とLINUしてたら即レスすぎて……肩がこるんだと……ぶっ!!」


「何が朗報だよぉぉぉぉ!!

オーバーキルだよぉぉぉぉ!!!」

頭をぐしゃぐしゃにして耳を真っ赤にする。


「……いや、だからさ、

あいつの為に電話にしてやれよ」


……グシャ……手の動きが止まる。


「……電話?」

「そう。そしたらあいつも喜ぶよ。

お前との話すごく楽しいんだってさ」


楽しい……?

本当に……?

ときめく結城。


「でっ……でも……安達さんにもプライベートが」


「お前ら同じこと言うな。

お互いこんな即レスしあってんのに

プライベートもクソもあるかよ」


昼と同じことを言わされげんなりする山本。


「そうかな……。ど……どうしよう……緊張してきた。

……きっ……今日電話してもいいかな!?」


やっと結城が復活した。


「いいんじゃね?待機してると思うよ。

……ていうかさ……お前何してんの。」


「……ん?何が」


「……カエル。」


「カエル……ああ、昨日の話か。

驚いたよ、安達さんがカエル好きなんて。

話続けたくてネットで調べ───」


「あーあ。お前やらかしたな」


「え?」


「あいつ……お前のこと尊敬してたぞ。

こんな話の合う聞き上手で聡明な方は初めてです。

だってよ。」


「……全然そんな事ないけど。

やらかしたって何が?」


山本は静かに───ホラー映画の伏線のような不穏な声で言う。


「あいつの専門は……カエルじゃねぇから。」


「……は?」


「だから、あいつが好きなのは、カエルじゃないって言ったの。」


「え?でも昨日カエルの話」


「……昨日がたまたまカエルだったってだけの事だよ。」


意味が分からない。

あんなに楽しそうに詳しく語っていたのに……


山本は続ける。


「ブフォトキシン。聞いたろ?」


「ぶ……ああ、ヒキガエルの毒の……」


「そういうことだよ。

あいつは両生類専門じゃない。

というか生物専門じゃない。

まぁ……これからせいぜい頑張れ」


「え……それってどうゆう───」


「じゃあな、電話してやれよ」


そう言って一方的に切られた。


なんか……モヤモヤする。

「どうゆう意味なんだよ。」


しかしそれより!!!

安達さんに電話ができる!!!!


やばい緊張してきた。


ソファからベッドに移り、

スマホを置いてその前に正座した。


「まず……確認をとろう」

そう言ってLINUする。


『あの……もしご迷惑でなければ少し、お電話してもいいですか?

ご都合のよい時間がもしあったらなのですが……

いきなりすみません。断って頂いて全然大丈夫なので!』


震える手で送信。


既読。

一気に緊張と不安。


すぐ返ってくる。


『いいのでしょうか?

結城さんにご迷惑なのでは?

私はいつでも大丈夫ですよ』


『迷惑だなんてそんな!

では今からかけていいですか?』


『はい。お待ちしてます』


「うわー!!!うわー!!!!安達さんと電話!!!」

嬉しすぎて思わずベッドでローリングする結城。


ひとしきり喜びを噛み締めた後

また正座に戻り、

緊張しながら……通話のアイコンを……押す。


すぐ繋がった。


「もしもし?」


少し高めで透き通る声……澪桜だ。


ドッ───

心臓が跳ね上がる。


「もっ……もしもし。こんばんは」

ガチガチに固まりながらやっと声を出す。

正座のまま。


「こんばんは。結城さん、お電話ありがとうございます」

流れるような優しい声。


「いえ、とんでもないです。

すみません俺、初めての電話で少し緊張しておりまして……」


照れ隠しに自虐した。

先程まで上ずってた声が低く落ち着いた声に戻っていく。


「あはは。私もですよ。

家族以外と電話したのなんて本当に久しぶりです。

あ、会社は別として」


(家族以外は……電話しないんだ。)

その言葉が妙に嬉しい。


「それを言ったら……俺もそうか笑」

無意識に“自分にも誰もいない”と伝えてしまう。

分かって欲しくて。


「ふふふ。そうなんですね。

……にしても昨日はかなり白熱しましたね!

カエル談義!」


一気にいつもの澪桜のテンション。

緊張が少し和らぐ。


「……ですね!

安達さんがこんなにカエルが好きなんて……

とても詳しいし正直驚きました。」


「私そんなカエル詳しくないですよ!

好きですけどね!!」


(ん……詳しくない?)

結城、混乱。


「私の知識は稚拙だし、間違ってる時も多いし、

広く浅いので……」


稚拙?

あんなに語っていたのに?


「え、でも昨日あんなにヒキガエルの話……」


「はい!あとナマカフクラガエルとか……

イエアメガエルとか……

ヤドクガエルくらいしか知りません!

浅いですね!あははは」


(いや、それ十分深いのでは……?)

結城ショート寸前。


「今日は何を話しましょうか……

あ、結城さんはサカバンバスピスはご存知ですか?」


「さか……え?」


「サカバンバスピスです!!

古代魚でしてね!オルドビス紀に生息していた魚です!

とても可愛いんですよ!!それでですね───」


「えっとあの……両生類だけが好き……とかでは」

恐る恐る確認。


「違いますよ!!

私は虫、寄生虫、両生類、爬虫類、バクテリア、細菌、微生物、宇宙、古代生物、宝石、元素なんかが好きです!

……あと毒、素数、数独、料理、お菓子作り、編み物、絵画、映画、音楽とかも好きですね!

映画は知ってるか。


あと最近は筋トレとかも好きですよ!!ダンベルを買いました。

まだまだあるけど……今思い浮かぶのはここらへんかなぁ。……よく間違えてるし、全く詳しくは無いんですがね!あははははは!」


「え……ちょっと待って……覚えられない」

結城、混乱の極み。


そして───

頭に響く山本の声。


───あいつの専門は両生類じゃない───


「この事かーー!!!!!!!!」

目の前のスマホを前に崩れ落ちる結城。



(こんなの……ついていけない……

いや、安達さんは期待してくれている。

聞き上手だって褒めてくれている。


頑張れ……頑張れ俺。

サカ……サカ……何とかを思い出すんだ……!)


よく分からない知識の暴力により、

吐血しそうになりながらも

必死にシナプスを呼び起こす。

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