13話 結城の憂鬱
※この話は12話の澪桜の休憩中と同時系列の結城のお話。
クレストリンク・ジャパン
午後12:20分
いつもと変わらぬオフィス。
開放感のある現代的な雰囲気の真っ白な職場。
そこにオシャレなカフェのように計算された日差しが柔らかく差す。
その一番南向きのデスクに結城はいる。
新規事業開発部。マネージャー 結城周
澪桜に見せた優しくて温和な雰囲気はそのままに上司として気安く近ずかせない、気品のようなオーラを纏う。
普段結城は自身のデスクか、気分転換に外に出て軽く昼食を済ませる。
今日はコンビニで買ったパン。
片手で食べられるので効率が良いから選ぶ。
大した意味は無い。ただ空腹を埋められればそれでいい。
最近は澪桜の休憩に合わせるようにこの時間に休憩を挟んでいた。
綺麗な横顔を下に向け少し微笑みながら
LINUをする。
(やっと昼か。……安達さんご飯たべたかな。)
澪桜の顔を思い出す。目鼻立ちの整った中性的で凛とした顔。表情、声───
もっと仲良くなりたいが……引かれたくない。
精一杯理性を働かせ、頭でシミュレートし文章を打つ。
最初は5~6回返信が来ればいいと思っていたが澪桜はレスをするとちゃんと返してくれる。
質問すると的確に返してくれる。
そして会話が面白い。
LINUなんて面倒臭くて嫌いだったのに今は違う、
楽しくて仕方ない。返事が欲しくて仕方ない。
仕事の話になった。
澪桜の会社のことが気になる。
今は春。入りたての新入社員と恋……なんてないよなと思いつつも少し聞きたい。
そんな何気ないメッセージでふと気になる言葉。
「……安達さんが1人を受け持つ……?」
ピタッと止まる結城の手。
(……まさか、相手は女性だよな。)
自身の部署はその点をかなり重視する。
トラブルにならないよう、細心の注意を払っている。
マンツーマンでは指導しない。仕事の流れを把握させ実践的に職務に当たらせる。
それを指導係にまとめさせ結城が統括する。
澪桜の会社の方針や仕組みまでは分からない。
山本に聞くようなマネもしたくない。そこまで踏み込むべきではないから。
すると……澪桜から少し落ち込んでいるような文面が返ってきた。
心配になり、思わず直ぐに返信する。
こんな感情を出して話してくれているのは初めてだった。
これは心を許してくれてきている気がする。
物凄く嬉しいが……浮かれてはいけない。
ポンと澪桜からのメッセージが。
……彼……?
指が止まる。
(まさか……指導にあたっている相手は……男?)
ミシっ……と響く。
スマホを持つ左手が出した音だった。
(そいつのせで安達さんが傷付いている。
新卒で何も出来ない癖に態度だけ一人前のやつなのだろう。)
そう思うだけで腹が立ってきた。
トントントン……
人差し指でデスクを叩く。
トン……
指が止まる。
つい、色々な可能性を考えてしまった。
(もし……その後輩に好意があるから、今落ち込んでいるとしたら……?
今回のトラブルが解決し、和解した後……そいつが安達さんを好きになったら……?)
背中に冷たい物が走る。
焦るな……大丈夫だ。
もしそんな片鱗が少しでも心にあれば彼女ならきっと……俺とやり取りなんてしていないはず。
……そんな奴に簡単に心を奪われるなんて安達さんなら絶対に無い。
彼女は真っ直ぐな人だ。きっと曲がったことは出来ない。
安達さんのことなんてまだ何も知らない癖に───
そう思いつつも
自分を安心させる為に
心の中で何度も言い聞かせた。
深呼吸し、メッセージを入れていく。
苛立ちを隠し、詮索しないように……澪桜の気持ちに寄り添い、それでいてアドバイスにならないように。
いつもより時間をかけて打った。幾度となく読み返し、納得した上で返す。
そしてついでに……もしそいつが辞めても澪桜のせいでは無い、気にしなくていいと暗に伝える。
澪桜の心の中にそんなやつのことを1ミリも入れて欲しくなかったからだ。
ただ、言葉は慎重に選び、悟られないようにした。
トントントン……また人差し指がリズムを刻み出す。
不安と苛立ちを誤魔化すように
するとすぐお礼のLINUが届く。
飛びつくように画面を見る。
……内容からして、そんな特別な相手ではないとすぐ分かった。
ふう。……ため息を付いて椅子にもたれかかる
あっという間に先程のまでの黒い気持ちが消えていった。
ホッとしたのと同時に罪悪感に駆られた。
(知り合って間もないただのLINU友達のくせに…………最低だな俺は。)
後悔の念を伝えその後にデスクに置いてある食べなかったメロンパンが目に入った。最近よく買うやつ。
凹んでいるであろう澪桜を少しでも笑顔にしたくて、写真を撮る。そして送った。
すぐLINUの内容が
いつもの澪桜に戻ってくれた。
それが嬉しくて堪らなくなった。
(安達さんに……会いたい)
胸が疼いた。
結城は闇属性。




