23話
一旦、ハロルド陛下と別れ、執務室に向かう。
「ロイゼ団長」
ノクト殿は私に気がつくと、微笑んだ。
「顔色が先ほどよりも良くなりましたね。いいことでもありましたか?」
――いいことなら、あった。
陛下との間に新たに加わった関係性を思い出し、表情が少し緩む。
「はい」
でも、いいことと同時にそのおかげで、気づいたこともあって。
あなたに向き合わなければ――謝らなければならないことがある。
そのために、まずは役割を果たさなければ。
「ノクト殿」
意図して表情を切り替える。
「はい」
ノクト殿の柔らかい表情も、私の変化を察して副団長のものへと変わる。
「私と共に来てくれますか? 先ほどの件を陛下に報告に行きます」
「かしこまりました」
頷いたノクト殿と共に執務室を出る前に――。
「……失礼しますね、ノクト殿」
ノクト殿のバッジに触れる。瞳と同じ金のバッジは副団長の証だ。
少しだけ斜めを向いていたので、まっすぐに付け直す。
「ありがとうございます」
「いいえ――」
ふと取り戻した記憶が鮮やかに蘇った。
ノクト殿に魔法を教えてもらったことも、魔法を暴発させて死にかけたときに心配させたことも、初めて魔術師団に勤務した時のことも、部隊長に任命された時の祝杯も、団長の推薦状をもらったときのことも。
その全てに、ノクト殿はいた。
本来ならノクト殿こそ団長の座に座ることを期待されていたはず。それなのに、ノクト殿の優しい目はずっと変わらない。
その優しさに甘えきっていたこと、記憶喪失になって、初めて気がついた。
そして、私が目の前で魔法を行使したことで、とんでもなくノクト殿を傷つけてしまったことにも。
「団長?」
「……少しぼんやりしていたようです。いきましょう」
これから先は、陛下の御前での報告となる。気を引き締めなければ。
◇
「――以上が、ご報告となります」
満月の夜やノクト殿をエルマが王子様と呼んだ件も含めてすべて、陛下に報告した。
「ああ、ありがとう」
ハロルド陛下は頷き、手元の資料に視線を落とす。
その資料は、エルマの発言をまとめたものだ。
「誰にも……か」
小さく呟くと、ハロルド陛下は資料を置いた。
「ディバリー副団長」
「はっ」
「エルマ・アンバーの調査と尋問は君に一任する」
エルマはノクト殿に好意を持っている。これを利用しない手はない……ということだろう。
「かしこまりました」
ノクト殿が頷いたのを確認して、ハロルド陛下は私に視線を移した。
「それから、ロイゼ。エルマ・アンバーに魔力ではない力の核があったと言ったな。こちらの件についての君の見解は?」
逃げるエルマには、何らかの力の核が埋め込まれていた。あれは、おそらく――。
「破壊兵器のようなもの、だと思われます。盗聴用の魔法回路も仕掛けられていたので、その盗聴内容次第では、口封じもできるように」
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