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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
五章 私が取り戻せたもの、取り戻せなかったもの

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23話

 一旦、ハロルド陛下と別れ、執務室に向かう。

「ロイゼ団長」

 ノクト殿は私に気がつくと、微笑んだ。

「顔色が先ほどよりも良くなりましたね。いいことでもありましたか?」


 ――いいことなら、あった。

 陛下との間に新たに加わった関係性を思い出し、表情が少し緩む。


「はい」

 でも、いいことと同時にそのおかげで、気づいたこともあって。

 あなたに向き合わなければ――謝らなければならないことがある。

 そのために、まずは役割を果たさなければ。


「ノクト殿」


 意図して表情を切り替える。

「はい」

 ノクト殿の柔らかい表情も、私の変化を察して副団長のものへと変わる。


「私と共に来てくれますか? 先ほどの件を陛下に報告に行きます」

「かしこまりました」

 頷いたノクト殿と共に執務室を出る前に――。


「……失礼しますね、ノクト殿」

 ノクト殿のバッジに触れる。瞳と同じ金のバッジは副団長の証だ。

 少しだけ斜めを向いていたので、まっすぐに付け直す。

「ありがとうございます」

「いいえ――」

 ふと取り戻した記憶が鮮やかに蘇った。

 ノクト殿に魔法を教えてもらったことも、魔法を暴発させて死にかけたときに心配させたことも、初めて魔術師団に勤務した時のことも、部隊長に任命された時の祝杯も、団長の推薦状をもらったときのことも。


 その全てに、ノクト殿はいた。


 本来ならノクト殿こそ団長の座に座ることを期待されていたはず。それなのに、ノクト殿の優しい目はずっと変わらない。

 その優しさに甘えきっていたこと、記憶喪失になって、初めて気がついた。

 そして、私が目の前で魔法を行使したことで、とんでもなくノクト殿を傷つけてしまったことにも。

「団長?」

「……少しぼんやりしていたようです。いきましょう」


 これから先は、陛下の御前での報告となる。気を引き締めなければ。



「――以上が、ご報告となります」

 満月の夜やノクト殿をエルマが王子様と呼んだ件も含めてすべて、陛下に報告した。

「ああ、ありがとう」

 ハロルド陛下は頷き、手元の資料に視線を落とす。

 その資料は、エルマの発言をまとめたものだ。

「誰にも……か」

 小さく呟くと、ハロルド陛下は資料を置いた。

「ディバリー副団長」

「はっ」

「エルマ・アンバーの調査と尋問は君に一任する」

 エルマはノクト殿に好意を持っている。これを利用しない手はない……ということだろう。

「かしこまりました」

 ノクト殿が頷いたのを確認して、ハロルド陛下は私に視線を移した。

「それから、ロイゼ。エルマ・アンバーに魔力ではない力の核があったと言ったな。こちらの件についての君の見解は?」


 逃げるエルマには、何らかの力の核が埋め込まれていた。あれは、おそらく――。

「破壊兵器のようなもの、だと思われます。盗聴用の魔法回路も仕掛けられていたので、その盗聴内容次第では、口封じもできるように」

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