欲無き者
むかし、大泥棒と呼ばれた男がいた。
彼は、人種に始まり国境や宗教果ては兵器まで。
人間にとって問題になっていたもの全てを盗み
世界をひとつにまとめあげ、平和をもたらした。
しかし彼には誤算があったそれは、人の感情は
どこまでも欲深く、悪意に満ち溢れていた。
争いの火種を全て消しても争いを辞めなかった。
これに愛想をつかした大泥棒は
世界を手に入れようと準備を始めたのでした。
「実際どこまでが事実なんだろうね」
かなり細かい地図じゃないと載ってないような
辺境の村の更に外れにある数軒の家の中の
古い書物を読み終え、パタリと閉じて
少女が疑問を隣りの少年にぶつける
「さぁね、こんな狭い村じゃ
世界の事実なんて知る機会ないからね
村の外の世界が気になるのかい?。一心」
「いや、全然!私達はこの村で2人っきりだけど
竜ちゃんと一緒だから十分幸せ!」
「それって、一生僕と一緒にいたいってこと?」
一心と呼ばれたのは長い黒髪の我の強そうな少女
竜ちゃんと呼ばれたのは、オールバック風の
ふわふわした金髪の少年。本名は伏竜
2人に親はいない、幼い頃村が魔獣に襲われ
ただでさえ、少なかった村人や家が壊滅して
2人の両親達は、一心と伏竜を庇って死んだ。
それから2人は1つ屋根の下暮らしている。
密かに思いを寄せる伏竜は、幼なじみの
唐突なカミングアウトに心を躍らせるが
当の本人である一心は、不思議そうな顔をする
「当たり前でしょ?私一人じゃご飯作れないもの」
「なんか、思ってたのと違うなぁ…」
一心は、決して不真面目という訳では無いのだが
どこが抜けていて、一言で言うならズボラだ
しかし、持ち前の元気と体力で
人に嫌われる性格では無い。
それに比べて伏竜は、大分設定を盛った
ラブコメのヒロインくらい生活力がある上に
頭脳明晰で根が素直なので、こちらも
人に嫌われるような子では無い。
体力面で見るなら一心には少し劣る
「それに、私がいなきゃ竜ちゃん
寂しがっちゃうでしょ?」
「ちょっとだけだね」
伏竜は自分の気持ちに気づいてるのではと
疑心暗鬼になりながらも、悪くない気持ちだった