第二十話:魔王、トラック転生者と会話する
例の『異世界街道』を歩いていると、目の前に巨大な箱型の物体が現れた。
これが、『自動車』というものであり、その中でも『トラック』という種類であることを私は知っている。
なぜか、転移者や転生者は、これに轢かれて死んで、こちらの世界にやって来ることが多い。
トラックが喋りだした。
「おい、ここは異世界か」
どうやら、トラック自体に転生したらしい。
機械に転生とは、神もメチャクチャだな。
麻薬でもやって、らりっているのか。
「はい、異世界ですが」
「その恰好! お前、転移者だな、轢き殺してやる!」
「待ってください。私は元々、この世界にいるものです。異世界転移したものではありません」
「そうか、とにかく俺は転移者、転生者を全員ぶっ殺してやる。どこかにいねーか、教えろ!」
トラック転生者は、マフラーと言われている部分から白煙を出しながら、怒鳴り散らした。
「いきなり、乱暴ですね」
「あいつらが、やたらトラックに突っ込んでくるから、トラック運転手はノイローゼになる奴が続出だ。俺も、うつ病になって自殺したんだ」
「はあ」
「あのふざけた転移者、転生者を片っ端からひき殺してやる」とトラック転生者は息まいている。
「あのー、問題があると思いますが」
「何だよ」
「動くためには、燃料にガソリンというものが必要なんですよね」
「そうだけど」
「ガソリンなんて、この世界に無いですよ。よく知りませんが、ガソリンスタンドという場所もありません」
「ゲッ! それじゃあ、今ある燃料が無くなれば終わりじゃねーか。もうほとんど無いぞ」
「そういうことになりますね」
「クソー、何てこった!」とトラック転生者は嘆いている。
そこにスライムが数匹現れた。
また通り道をふさいでしまったのか。
「スライムが、あなたにどいてもらいたいらしいですよ」
「しょうがねえなあ」とトラック転生者がバックする。
道が空くと、スライムが私に襲いかかって来た。
腹がすいていたのか。
魔王に飛びかかるとは無礼者め!
瞬殺!
あれ、スライムの相手をしていたら、トラック転生者がいない。
爆発音が下から聞こえて来た。
誤って、崖から落っこちたみたい。
炎上している。
「ギャー! 熱いよー! 死にたくないよー!」とトラック転生者は絶叫をあげて、死んだ。
何のために転生したんだ。
それにしても、なぜ、燃料がほとんどないのに、あんな大爆発を起こしたんだろう。
城に戻って、イフリートに聞く。
「ガソリンというものは気化したほうが燃えやすいんですよ。燃料がほとんど無かったといっても、気化していたものが燃料タンクにあったから爆発したんでしょう。満タンだったら、ひょっとして、爆発はしなかったのかもしれません」
神はなぜ、せめて満タンにして転生させないのか。
ガソリンスタンドのバイトよりサービスが悪いな。




