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ウィンターソルジャー  作者: 鷹雪
冬の終わりに
12/27

紛糾せざるをえない

今回から新章に入ります。

 その日の天気は曇り。天を覆う雲の間からは時折、負けはしないぞっとばかりに太陽が燃えたぎる自分の存在をアピールしていた。気温はどちらかというと肌寒く感じ始めており、それが季節の移り変わりを感じさせる。

 フローラ=バスティアー二。

 齢40をこえた彼女は、もう若くはない。季節の変わり目はつらいと感じるようになった。しかし、今日ぐらいの天気であるなら、それは過ごしやすいと思うくらいだっただろう。


 だが、現実は非常だ。


 会議室の中は外界のおだやかさのかけらもなくまさに今、灼熱の真夏日より波に熱く紛糾していたからだ。

 左に座るもの達の中から、「それはいけない、そんな迎合は許さない」と怒鳴り声が上がると、反対側からは「許さないとは何事だ。罪は浄化すべし、法に従うべし」と複数の声がたちまちあがる。

 そんなのはまだいい。

 理性があるうちはこれでもいいが。そのうち感情がだんだんと剥き出しになっていくと「この裏切り者!犬のふりをするのがそんなに楽しいか」とか「魔法を憎むあまり、自己否定かネクラ野郎」「馬鹿のうえに愚かとは救えない」とかいいだし、それを受けた方も「黙れよ、妄想野郎」とか「我らの罪は神の慈悲にすがって初めて許される」「悪魔っ、この悪魔共め。焼却してやる」などとなっていくのである。

 そう、もうそうなることはわかりきっていた。

 今回の議題ですでにこれまでも17回開催したが、いつも混乱のるつぼと化し、一度として結論が出たことがなかったからだ。

 それでも最初の数回までは理性的だった彼等も、次第に普段の鬱屈した思いをなぜかここに持ち出し始め、教会かギルドか。魔法か神か、というおかしな論議にすっ飛んでいくようになってしまった。

 そうして今回の第18回が開かれたわけだが、もうすでにそれぞれの派閥は議題の事など忘れ始めているのはその様子から明らかであった。

 フローラは横目で部屋の入口に置かれた看板を見る。そこにはこう書いてあった。


『とある死霊術師の処遇について』


 そうなのだ、はっきりと名前すら記載できないたった一人の魔法使いの存在が。たった一人の少女が。彼女の罪が。

 今、このウインター・エンドの魔術師ギルドを2つに割るほどの難問となって立ちふさがっていたのだ。



「もう…………いいでしょう。これで終わりましょう。」

 フローラがそう静かに口にしたのは、会議を進行を手伝ってくれた副議長と書記の2人が。

 お互いが怒声を浴びせ始めたのを冷静になれと割って入ること3回、感情に任せて部屋の壁に魔法でやつあたりするのを慌てて後ろから飛びついて止めること2回。

 年配の老人が年甲斐もなく熱くなりすぎて口角泡をとばしながら、うーんと唸って倒れ。

その老人を副議長と書記が運び出している間にお互いが再び罵りだしてとうとう拳で決着付けようと、あろうことか会議室の机の上に双方が拳を握って駆けだそうとした、まさにその時であった。

 フローラの座る位置からいきなり冷気が吹き上げると、部屋の中にいる幹部クラスの魔術師達のあいだをふきぬけていった。こうなったら自分の拳で決着をつけてやるといきまいていた魔術師達も、これでようやくこれまで一言も発してこなかった議長がどれほど怒りをこらえているのか、ということをやっと理解した。


 彼女の怒りと、その言葉を聞くと叱られた子供のようにみながすごすごとまた元の席にもどって座りなおす。

 それを確認してからフローラは改めて結論を口にした。

「皆さんの意見を聞きましたが、過去17回のうち結論がつくことは1度もなく。そして今日もどうやら結論が出る可能性は低そうだ、私はそう考えました」

 すると、フローラのその言葉に老人が声を上げる。

「しかし、マスター。結論が出ないというわけにはまいりません。これはこの魔術師ギルドの、いや、魔術師と呼ばれるもの達の存在と名誉に関わることのなのです」

 その言葉が終わると間髪いれずに反対側からも若い魔術師が口を開く

「そうです、結論が出なかったというわけにはいきません。法が、教会が答えを待っております。我々の結論によって世界が魔法をどう考えるか…そこまでの影響は与えないかもしれない。しかし、この三国連邦においては確実に我々魔術師というものを、人々が見る目が変わるのは間違いないのです。ですから……」

 最後に意見を言おうとしたのだろう、それを阻止せんと反対側から一斉に反論が噴き出しまた会議室は騒然とした騒ぎに沸き始めるかに思えた。


「静かにしろっ!」


 フローラの今度の怒声は凄かった。

 怒りの叫びと同時に、先ほどよりもきつい冷気が今度は吹き抜けるのではなく彼等の体に張り付いた。実際、この部屋の温度も何度が下がっているのは確かだ。なぜならフローラが座っている椅子の表面にはキラキラと水蒸気が凍ってへばりついていて、そこから微妙に床などを放射状に広がっていたからだ。

 きっとあまりにも激しい怒りでなにかの制御が甘くなったのだろうが。

冷静で知的と有名な彼女にしてはめずらしいことだった。

「繰り返します。皆さまの意見は十分に聞きました。その考えも、論拠も全部です。しかし、結論は出さなくてはならない。私にもわかっています。だからここに宣言します。」

 その言葉の厳しい調子から、最後の宣言に至ったことでここにいる魔術師達は皆一様に緊張した。彼女はとうとう決断したのだ、あの我々をして悩ませる少女をどうするかを。

 そんな風に皆が注目する中、実はフローラ本人は何を口にするべきかわかってはいなかった。

 彼女としては、先ほど指摘されたような今回の一件は確かに世界を揺るがしはしないだろうがこの国の価値観に影響を与える可能性は大きいことくらいは、初めからきちんと理解していた。だからこそ、ギルドの統一された意志の元で動こうと考えたのだ。

 ところがその会議が終始この調子である。

大誤算であった。もはや彼等に問題の解決を期待するのは時間の無駄と言ってもいいだろう。


 しかし彼女にも迷いがないわけではなかった。即断はできない、ならば時間が必要であった。


「これより一週間後、私自身がよく吟味した上でこの一件の決断を下します。つまり来週の……そうですね、定例会議があります。その冒頭で皆様の前で発表します。もう、いいですか?もう、話しは結構です。18回にもわたって聞いてきたのです、さすがに私の我慢にも限度があります。このことで争うことも、口論も聞きたくありません。いいですね!?」


 こんな事態になってしまったことへ、内心の困惑ぶりを外にかけらもだすことないように、あえて怒りをあらわに言い放つその姿は、確かに威厳と迫力があった。そして会議室の中にいた面々もそれを聞いてうなづくだけで、誰も異論を口にするものはいなかった。

 もしかしたら、彼等にしても彼女が代わりに決断してくれるならそれが一番だ、とでも実は思っていたのかもしれない。




 倒れた老人を医務室に放り込むと、慌てて戻ってきた副議長と書記だったが。戻ってきた彼等2人が見たのは言葉少なく会議室を退出する幹部達と、さらに肌寒く感じる室内の奥であまりみたくもない、いつもは柔和な笑みを浮かべている議長が眉間にしわを寄せ、言葉にしたくないほどの不機嫌な顔であった。

 議長は多くを語らず、「今日は終わります、次回結論を私が出します」とだけ言うと2人はすべてを了解した。そして、きっと気になっていたのだろう。先ほど倒れた老人の様子を見に、再び駆け足で会議室を出ていった。



 そこでフローラは「ふぅ」とため息をつくと目を閉じる。

こんなに激怒したのは久しぶりのことだった。

 そして、さっそく腕を伸ばすと1冊の本と呼んでいいほどのまとめられた報告書の束に手にとってパラパラとめくりだす。

 幹部達は、片や魔術師の未来を憂い、もう一方は法に従うべきと言っていた。だが、彼女がこの件に感じたのはもっと別のもの、はっきり言うとこの少女への哀れさと、なにも出来ないことへのやりきれなさだった。

 なんとも皮肉な話である。彼等はあれでも自分に比べればまだ真面目に、理性的にしていたのだ。

 とにかく残された時間は少ない、自分も頭を冷やしてこの件に当たらなくては。


 フローラは再び事件の概要について見直すべく、ページをめくった。



▼▼▼▼▼


 魔法を扱う者の中にも、強烈な個性を持つ者はいる。

普通の魔法使いには理解できない独自の考え方を持ち、実践する者達がいる。

 そして、このウルバノ ラソという人物もそうであった。彼はその強烈さゆえに、一か所にじっとしていることがなく、旅でほうぼうの魔術師ギルドを訪れるという生粋の旅人であった。

 事件はこの彼の存在があり、彼がこのウィンター・エンドに来たからだともいえるだろう。

 半年前、この三国連邦に入った彼はまっすぐ国を縦に横断するようなルートを選択。

 そしてよりにもよってこのウィンター・エンドに昼夜ぶっ続けで弟子達を引き連れ歩いてきたのだ。

 はっきりいうと、しばらく前からこの町の周りの治安はお世辞にもいいとはいえない。とくに夜間に町に向かうルート上にいるというのは自ら死の危険を高めているようなもので、襲われないことの方がめずらしいくらいだった。

 そして事件はおこった。

 そのルート上で先に襲われていた商人と襲った何者かがいるところに彼等の一団が出くわしてしまったのだ。

 ラソは旅慣れた魔術師である、その時も慌てることなく「おやおや、これはこれは」と平然とした顔で腰に下げていた剣を抜き放った。いつもならこの後で襲撃者相手に大立ち回りの一つもすることになっただろう。

 しかし、この時はそうはならなかった。

 何が起きたのか、それはその後で駆け付けたという衛兵達の報告書からうかがい知れる。


『手傷おった被害者が駆けこんできたことで、我々に出動の命令が下されました。そうはいってもすでに夜も深い、現場についてもきっといつものように奴らは消えた後だろうとおもっていたのです。

 異変を感じたのは現場の手前、300ほどの所でした。

 はるか先、木々の向こうでなにかが光輝いて飛び交い、明るく輝いているのが見えました。更に近づくとそれが人の体ほどの大きさの炎や木々に当たって炸裂する雷だとはっきりしてきました。

 同時に、人の声らしきおかしなものと怒声も聞こえてきます。

 この段階で、正直に言いますが我々はこれ以上先には進めないと判断しました。

なにかはわかりませんが、自分達の向かう場所で何者かたちが魔法を用いて戦っており。しかも遠目に見てもそれは1人2人の規模ではないのが明らかで、かなりの数がそこにいると思われたからです。

 我々は大事をとっていったん距離をとることにしました。臆病といわれてしまうと返す言葉もありませんが、直前に大きな火球がこちらに飛んできたのでそのままでは巻き込まれると思ったのです。

 この頃です、森に火がつき始めたのは。

 離れたところに移動した後、私はまず伝令をだし、現在の状況と援軍の要請を求めました。森についた火が広がった時に備えなくてはと考えたからです。

 そして我々はそのままそこでじっと待っているしかありませんでした。

しかし、幸運にも森についた火の勢いはそれほど大きなものにはならなかった。

そんな火の勢いが収まりかけた頃、それまで聞こえていた戦闘音も聞こえなくなっていた事に気がついたのです。

 これなら危険もないかもしれないと思いました。

 すると前方から、酷い目にあったといいながら魔術師達の一団に出会ったのです。

 さっそく私は、彼等に質問をしました。彼等もそれには快く応じてすらすらと答えてくれました。


 それによると、夜半過ぎ。

道を歩いていた彼等は哀れな商人達を襲って物色していた盗賊らしき一団と鉢合わせをしてしまったそうです。

 ところが、驚いたことに彼等は魔法使いだったらしく。強力な魔法を彼等にはなってきたんだそうです。

 彼等は必死で魔法で応戦しました、そこに丁度我々が接近したということのようです。

 とにかく、焚火は最初の段階で魔法によって吹き飛んだためお互いがどこにいるのかわからないまま飛び交う雷と火球をたよりに戦っていたと言います。

 気がつくと自分達しかいないということに気がつき、ようやく相手が逃げたのがわかったのだといいました。

 見たところ確かに彼等は泥だらけで大変疲れている様子でしたので、このまま町のギルドへとむかうよう指示しました。

そうして私達はようやく現場に到着。そのあとで援軍と合流して消火活動などにあたりました。


 本来ならここで事件は終わりとなるはずでしたが、そうはなりませんでした。

 実は最後に念のため現場周辺を調べて見たのです。

すると、あきらかになにかの邪法が施されたと思われる遺体があちこちから出てきたのです。その数あわせて12体。もしかしたらもっとあったかもしれませんが、我々が発見できたのはこれだけです。

 教会から来ていた神官戦士の方によると、あまり見慣れないめずらしい術だとの証言を頂きました。


 我々は仕方なく、魔術師ギルドに到着したはずのあの彼等の話をもう一度聞くべきだと考えました。

 彼等は今回も我々の捜査に非常に協力的で、もめるかもしれないと思っていただけにとても助かりました。

 といっても彼等自身、自分達が何を相手にしたのかはわからなかったといいますから、結局のところ新しい発見にはなりませんでした。



 今回、教会からの強い要望で再捜査となったということですが、我々が言えることは以上です。これは、前回提出した報告書にもありますので確認していただきたいと思います。

 さて、最後に一点。なにか新たに気付いた事、気になることはないかとの質問がございました。

 実は前回の報告書には書いていないことがひとつあるのを思い出しました。

 入り違いに町に入った彼等に話を聞いた際の事です。我々の中であの時の彼等の人数より1人足りないのではないかと言う意見が出ました。当時は急いでましたし、彼等に疑念を抱くようなものも感じられなかったのですが一応しらべてみたのです。

 なんでも彼等はよく旅で移動する魔術師達だそうで、前回宿泊した施設、ギルドなどから人数に間違いはないとの確認が取れました。

 このため彼の言葉は気のせいだろうということになったのです。また、彼等もこの町での用事を終えると再び旅の空の下へと戻ったと報告を受けています。


 以上が、私が知るこの事件のすべてとなります。』


 フローラは読み終えると、もう一度ため息をついた。

『彼等に疑念を抱くようなものを感じられなかった』だって?まったく、この衛兵は何を見ていたのだろうか。

そうした一方で、あの朝。あの問題しか作り出すことにかけても有能な魔術師ラソとの一件について思い返していた。



▼▼▼▼▼


「まぁ、ラソ。一体これはどうしたというの!?」


 まだ日の光もでていない時間だった。大変ですを繰り返して自分を起こしに来た当直の若い生徒につれられて寝間着にガウンをかけた姿で玄関に来たフローラは客人達の姿を見て驚いた。

 あのラソとその弟子達は皆が泥だらけのうえに、怪我やら火傷などしていてまるでなにものかに襲われたのは明らかだったからだ。

 ラソはその魅力的な笑顔をまずフローラにむけると、厳しい顔に戻って弟子たちに対し「風呂を用意してくれる。その後で怪我をしているなら自分たちで何とかしろ。寝るのは飯を食った後だ」と言い放つ。

 フローラもそれを聞くと後ろで困った顔をして立っていた生徒を呼び、いくつかの指示を出し、生徒も再び駆け足で飛ぶようにギルドの奥へと走り去っていった。これからちょっとした騒ぎになるだろうが、まぁそれも仕方ないだろう。

 その騒ぎの元凶でもあるラソはというと、泥だらけのままフローラのそばによってきて

「これはこれは、ウィンディ・マスター。出迎えていただき光栄ですよ」

 どうやら挨拶がわりにハグでもしようということらしい。

「ええ、まぁね。それよりも、近づかないでくださいな。泥で服を汚されるのはわたし、好きではないの」

 できるだけ離れたかったが、寄ってくるのだから仕方ない。だが、抱き寄せて挨拶などしようものならフローラは躊躇なくぶん殴るつもりだった。

 相手もそれを察したか、苦笑いを浮かべると

「先輩は相変わらずキツイですね。だから男に逃げられてばかりなのですよ」

「うるさい。それより一体何があったのか説明なさい」

「ああ、そっちが気になりますか」

 そうラソは呟くと、自分の後ろを指差していった。

「実は彼女なんですよ。」

 そこには汚れを落としに奥に行った弟子達から離れ、ラソとフローラの後に続く少女が立っていた。彼女もやはり泥だらけで、髪の一部などが焼けてちりちりになっていた。

「彼女?………このお嬢さんが、どうしたのよ。」

 そう言いながら、ラソと違いフローラは少女に近づくとガウンの端をつまんで彼女の顔の汚れを落としてあげる。

 可哀そうに、髪の毛が焦げてしまって。この娘、火傷もしてるみたい。

 そうして何気なくフローラは少女の目を見てしまった。

 背中を感じたことのない寒気が走り、思わず震えた。

 少女の目は、そこには闇が広がっていた。そして死人のように感情のない表情。

 この娘、ひょっとしてこの娘は!?

「実はね、フローラ先輩。その娘に我々は襲われたのですよ。」

 愉快そうにそう語るラソの言葉の意味することを理解すると、フローラはパッと大きく後ろに飛びのいて少女との距離をとった。



▼▼▼▼▼


 思い返して再び腹が立ったのでフローラは声には出さなかったが、口の中でラソにむかって一通りの罵声を浴びせる。そろそろこの罵声も呪いの言葉に変わりそうな勢いだ。

 あの迷惑を持ちこんだ当の本人はといえば、このことを悟ったのか、それともいつもの気まぐれの虫がうずいたか。2月を待たずして次の町へと問題だけを置いてさっさと旅立っていってしまった。

 そしてトラブルと、扱いに困る少女だけがギルドに残った。

 こんなこと、決して人には言わないし言えないが。あの夜、あの阿呆のラソが少しでも気をきかせて少女を町に入れる前に殺してくれたなら。こんなに多くの魔術師が悩むことはなかったはずだろうに。

 そしてそこには当然、自分がこんな悩ましい決断をしなくてよかったのにという泣き言でもあったし。そしてきっとさっきまでこの会議室で怒鳴り合っていた皆の正直な思いであっただろう。

 再び目を落として、ページを開く。

 今度は「彼女の過去」とかかれたページだった。

 そこには彼女が少女に冷徹な決断を下せない、その理由がつらつらと詳細に載っていた。



▼▼▼▼▼


 これはわたしの物語。

 ずっとなにも望まなかった、望むことなど出来なかった。

否定はしなかった、終わったあとで自分にも好奇心はあったのだと言い訳をした。

でも終わりは来るのだと自分を励ましつづけた。

おとうさんのように、おかあさんのように

 今、自分は魔術師達が住むギルドに隠された牢につながれている。

 ここで明らかにした罪が裁かれるのを待っている。

 見上げると格子の間に、雲の間からのぞく太陽の光が見てとれる。

 自分の居た夜にはないもの

まぶしくはないのに、その光はなぜか重くわたしの身体にのしかかるように感じる。

 太陽よ、どうか聞いてほしい。

 自分が多くの人々に憎悪の目を向けられる中、この大地から飛び立つその時は

 雲ひとつない青空の下でその最後を照らして欲しい。

 それがせめて最後に望むわたしの願い

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