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星詠みの少女  作者: 宮沢ケンゾウ


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第一章 図書室の異変


放課後の図書室には、静寂が積もっていた。


愛子は窓際の席に座り、開いた本の上に顎を乗せたまま、うとうとしていた。黒髪がさらりと机に広がり、深緑のセーラー服の胸元で赤いリボンだけが鮮やかだった。


*また居眠りしてる……*


自分でもわかっていた。でも、どうしても眠れずにいた昨夜のことを思えば、これくらい許してほしい。


夢のなかで、星が降ってきた。無数の光の粒が校舎の屋根を突き抜けて、愛子の手のひらに集まってきた。温かくて、少し痛くて——


「……落とすよ」


低い声だった。


愛子はばっと顔を上げた。本が机の端から滑り落ちかけていて、それを細い指がひょいと掴んでいた。


眼鏡の男子だった。黒い学ランに黒髪。クラスが違うから名前は知らなかったが、図書委員のたすきをかけているのは見たことがあった。


「……ありがとう」愛子は素直に頭を下げた。


「ここ、禁止だけど」と男子は本を机に戻した。「居眠り」


「わかってる」


「わかってるならやめれば」


「わかってることと、できることは別」


男子はしばらく愛子の顔を見ていた。それから、黙って自分の当番仕事に戻った。


愛子は本の表紙を眺めた。『古代の星座と失われた言語』——昨日の夢の話が気になって、なんとなく手に取った本だった。


*星が降る夢を、三日続けて見ている。*


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