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第26話 襲撃は旅の途中で2





 捕らえたレイダー達は魔鋼ワイヤーで縛り上げて、更にその腕や脚にも、ネージュの魔術的な凍結拘束を施してある。地面に寝転がっている彼らは身じろぎすることは出来ても、移動することは不可能だ。


 食事や排泄の世話も不要になるよう、彼らには強力な鎮静効果のある麻酔魔法も重ねて施してある。治癒系統の魔法であり、どちらもアッシュが施術した。


 本来なら殺されても文句は言えない立場であることは、レイダーたちも理解しているようだ。暴れたり抵抗する素振りは全く見せなかった。


大人しく身体の自由を明け渡し、今ではアッシュの鎮静魔法によって深い眠りのなかに落ちている。


 

 レイダー達を完全に無力化したあとで、アッシュ達は夕食を摂った。


 作ってしまったシチューを捨てるのも勿体ないし、これからどうするのか話し合いをしながら、夕食にしようということになったのだ。


 既に夕暮れは過ぎ去り、木々の狭間に溜まっていくのは夜の闇だ。暗がりに満ち始めた森の底で、携帯用コンロの火が温かく揺れていた。


 積もった落ち葉と土くれの上に、5人分の人影を描いている。


「はぁ~……。こんな状況でも、アッシュの作ってくれるメシは最高だな」


アッシュはいいお嫁さんになるぜ……。カルビはビーフシチューを食べながら、しみじみとした口調で付け足した。


「帰ったら、アタシと結婚するか?」


 冗談だとは分かるのだが、どのような反応を返すべきなのか。


「え、えぇと……。あ、ありがとうございます?」


 料理の味を褒められているということだけは分かるので、アッシュは一応、礼だけを述べて頭を軽く下げた。


「アッシュさんは私のお嫁さんですのよッ!」


 シチューを食べ終えたエミリアが紙皿を置いて、鋭い目つきでカルビを睨んだ。


「……いや、貴方も何を戯《たわ》けたことを言ってるのよ……」


 もはや指摘する気も失せたのか。ネージュが疲れたような顔になる。


「ねぇ、アッシュ君。こんなバカ達の話は、8割ぐらいは聞き流してちょうだいね? いちいち真に受けて居たら、きっとストレスになるわ」


 優しく気遣うように言ってくれるネージュに対して、今度はエミリアが反抗的な声を上げた。


「ちょっと待って下さい!? 8割も話を聞き流されては会話が成立しませんわよ!?」


「おいネージュ」間髪を入れず、カルビが表情を引き締める。「エミリアはともかく、アタシが本物のバカみてぇな言い方はやめろよ」


「私へのフォローは無いんですのっ!? というか、さりげなく悪口を言われてませんか私……!?」と驚愕した顔になるエミリアを尻目に、カルビは至って真面目な顔だ。


「それになぁ、アタシのことを悪く言うよりも先に、お前は先に自分の部屋を掃除しろよ。ネージュ」


 説教口調のカルビに言われて、ネージュが吹き出して顔を真っ赤にした。


「なっ……! ばっ……! なっ、何を馬鹿なことを言いだすのよ貴女はっ、そっ、そんなデッカい声で……ッ!」


 一瞬だけチラッとアッシュの表情を窺ったネージュは、すぐに恐ろしい形相になってカルビを睨みつける。


「ローザの家に部屋を借りてからは、ずっと綺麗に使っているわよ! 頻繁に掃除もしているし、適当なことを言わないでくれる!?」


 並の冒険者なら死を覚悟するような迫力と殺気を向けられても、やはりカルビは怯まない。


「アタシはなァ、お前の生活能力がちょっと心配だから言ってやってるんだぜ?」


 すっとぼけたような心配顔をしたままのカルビは、ネージュの部屋の散らかり具合について懇々と言い募ろうとしている。


「ほら。お前がローザの家に引っ越しするとき、アタシが手伝っただろ? そん時のことだ。忘れもしねぇよ。お前が前に借りてた宿の部屋、チラッと見たけど、あれじゃゴミの詰め合わせっつーか、もうゴブリンの巣穴と見分けが――」


「黙れ……ッ!!」


 そこでネージュが動いた。いや、地面を蹴って飛び出した。両手を伸ばしたネージュが物凄い踏み込みの速さを見せ、カルビに飛び掛かっていく。


「うむぁぁあ……ッ!?」


 身体を仰け反らせたカルビが、随分と必死な、というか素の悲鳴を上げた。暢気に語っていたカルビの両頬をネージュが抓りあげて、思うさまに引っ張ったのだ。


「アッシュ君の前でッ……! 私のことをッ……! 変に言うなッ……!!」


「お、おまっ、や、やめほッ……!! らって、ほんろぉの……っ、むぁあああああッ!!?」


「黙れ……ッ! この……! 黙れ黙れ……ッ!!」


 まるで子供みたいに必死な半泣き顔になったネージュは、普段のクールビューティーさなどは完全に捨て去って、カルビに馬乗りになる。そして、これでもかとカルビのほっぺたを抓りまくっていた。


 カルビも両腕を動かしてネージュを押し退けようとしているが、カルビをこれ以上喋らせまいとしているネージュの力に押し負けているようだ。


 赤い顔でムキになっているネージュはもう、カルビの頬を引き千切る勢いである。


「もぎひひひひぃぃぃいいい……!!」


 両頬を真横に引っ張られているカルビの珍妙な悲鳴が、夜の森の中に木霊する。


「ネージュは部屋を綺麗に使ってくれてるよ。……っていうか、寧ろカルビの方がモノを増やしてるでしょ? ちゃんと掃除してね?」


 カルビのことを助けようともしないローザは、ひらひらと手を振ってみせるだけだ。


「ネージュさんの御部屋は見たことがありませんけれど、お風呂や洗面台にある私物は整頓されていますものね。……カルビさんは散らかしてるときが多いですけれど」


 普段の生活を振り返るように続いたエミリアも、ネージュに馬乗りにされているカルビを見下ろすだけで、特に救いの手を差し伸べる様子はない。


 カルビとネージュが取っ組み合いをしている光景に圧倒されつつあったアッシュだが、彼女達の遣り取りのなかで確信したことがあった。


「ローザさん達は、“家持ち”のパーティだったんですね」


 パーティやクランで宿を借り切っている冒険者達のことを“宿持ち”などと言ったりするが、“家持ち”のパーティとなると、更に少なくなる。


 冒険者居住区で部屋を買うではなく、アードベル市内にある住宅街に冒険者が家を建てるとなれば、ギルドや行政を通した手続きと審査が必要になる。


 そのため、ゴロツキ紛いの冒険者がどれだけ荒稼ぎしてきても、アードベル市内に家を買うことはできないことも多い。


 翻って言えば、冒険者がアードベルで家を持つということは、ある種の成功者の証と言ってもいい。



 だがローザは、複雑な笑みを口許にだけ作って、アッシュと目を合わせずに肩を竦めた。


「一応は“家持ち”かもしれないけど、私が建てたんじゃないし、買ったわけでもないから……」


 この話題を先に進ませたくないのかもしれない。レイダー達へのローザの態度が、やけに剣呑であることと何か関係があるのだろうか……。

 

 アッシュがローザの横顔を窺っているあいだに、ネージュは跨っていたカルビの上から退いて、やはり子供のように鼻を鳴らしてそっぽを向いていた。


 ただ、思う存分にカルビの頬を抓くり回したので、それなりに気が晴れて落ち着いたのかもしれない。


 一方、「おー、いててて……」と少し涙目になっているカルビは両手で頬を撫でている。


「自業自得ですわね」


エミリアは、微笑ましいものを見守る顔つきだ。


 ローザも「言えてる」と軽く笑ってから、彼女の家に関する話題を切り上げるように、食べ終えたシチューの紙皿を地面に置いて手を合わせた。


「御馳走様、アッシュ君。いつもご飯作って貰っちゃってゴメンね。ありがとう」


 美味しかったよと微笑みを浮かべるローザに続いて、カルビやネージュ、エミリアも手を合わせて、「御馳走様」のポーズを見せてくれる。


「いえ、食材を用意してくれていたのはローザさん達ですし、それを使わせて貰っている僕の方こそ、御礼を言わねばならない立場ですよ」


 アッシュが用意した食材や食料と言えば、携行用の乾パンや缶詰、干物などばかりだった。

 

 だが、こうした遠出にも慣れているふうのローザ達は、食糧保存用の高性能アイテムボックスを存分に活用していた。


 簡素な保存食に加えて、肉類や野菜類、調味料などを豊富に携帯してきていたのだ。こうして温かい食事を摂れるのは、やはりローザ達の御蔭でもある。


「それに、僕が作ったものを美味しいと言って食べて貰えることは、素直に嬉しいですし……」


 ローザ達に同行しているこの旅の中でアッシュは、自分の行動によって彼女達が喜んでくれることに、安らぎのようなものを感じていた。


 彼女達のパーティが持つ温かさを、この忌むべき身体に分け与えて貰っているような感覚だった。


「たくさん食べてくれて、ありがとうございます」


 何だか妙な感じで、不自然な礼を述べている自覚はある。だが、その感謝の気持ち自体はアッシュの本心だった。


 このときのアッシュは、自分が自然と笑みを浮かべていることに気付き、内心で驚いた。


 社会性を取り繕うためでもなく、場の空気を維持するためでもない。何の意図も意識も含まない、純粋な笑顔が零れていた。


 そんな自分自身にアッシュが動揺するよりも先に、ローザ達が揃って動きを止め、珍しいものを見たような顔になって、こちらを凝視していることに気付いた。


 彼女達の頬に赤みが差しているように見えるのは、やはりコンロの火の所為だろうか。


「……おい、アッシュ」


 カルビがちょっと怖い顔になっていたので、アッシュも少し背筋を伸ばした。


「ぇ、は、はい、なんでしょう?」


「アタシ達の前以外では、そういう風に笑うなよ。いいな?」


「えっ、ど、どうしてですか?」


「どうしてもだ」


 赤い顔のままのカルビは、不機嫌そうに唇を尖らせてそっぽを向いた。


「カルビの意見に賛成するのは不本意だけど……」と続いたのは、アッシュの方をチラチラと見ながら、何故か悩ましげに顔の半分を手で覆っているネージュだった。


「あまり無防備な笑みを無闇に見せるのは、止めた方がいいと思うわ」


 ぽしょぽしょとした声を溢すネージュの頬にも、コンロに揺れる火の色とはまた別種の赤さがあった。


「だね~……。なんかこう、ドキッとすると言うか。2人きりのときに見せられちゃうと、いろいろと勘違いしちゃいそうになるよね」


 楽しそうな苦笑を浮かべたローザだったが、すぐに怪訝そうな顔になってエミリアの方へと首を向けた。


「……ていうかエミリア、どうしたの?」


「いえ、何でもありませんわ……」妙な鼻声で応じるエミリアは、地面に腰かけた姿勢で鼻を手で抑えて、上を向いている。


「ただ、アッシュさんの笑顔が素晴らしくプリティィィィ&ラブリィィィィで……、そして、ンンンンンンン……、余りにもセクスィィィィでしたので、こう……、胸が熱くなってしまって……。やはり人間というものは、自らの魂を震わせるものを目の当たりにすると、自然と熱いものがこみ上げてくるものなのですね……」


 陶然とした口調のエミリアは鼻を抑えたまま、その緋色の瞳を潤ませて、木々の隙間から見える星空を眺めていた。


 まるで初心な少女が、自らの胸の高鳴りと響きの行方を、夜空の向こうに探すかのような眼差しだった。


「お前の中から込み上げてきてんのは、ただの鼻血だろ? アッシュの可愛さにやられて、のぼせちまってるだけじゃねぇか」


「魂が震えてるんじゃなくて、自分の欲望に任せて興奮してるだけよね……。まぁ気持ちはわかるけれど」


「ち、ちがわいッ!! これは鼻血ではなく、ぇ、えぇと……そのっ、そうっ!」


 鼻をおさえて上を向いていたエミリアがガバっと振り返り、カルビとネージュを順に睨んで声を荒げる。


「心の汗……ッ!! 淑女的ピュアハート・ドリップですわ!!」


 ズビビッ!! と洟を啜るように盛大に鼻息を吸い込むエミリアに、「心の汗は鼻から出ないでしょ……」と半目になったローザが軽くツッコんだ。


「あ、あの」とアッシュも控えめに声をかける。


「治癒魔法を施しておきましょうか? 先ほどまでの戦闘で受けていた何らかダメージが、今になって出血に繋がったのかもしれませんし」


「い、いえっ……! そんな、わざわざアッシュさんに治癒魔法を編んで頂くようなことではありませんわっ! ただの鼻血ですし、すぐに治まるはずですから! ズビビッ!!」


 慌てたようにアッシュに両手を振って見せたエミリアは、少し恥ずかしそうに目を逸らして再び上を向き、それからまた鼻を啜った。


「やっぱり鼻血じゃねぇか」

「やっぱり鼻血じゃない」


 カルビとネージュが声を揃え、白けたような眼差しをエミリアに向ける。


「まぁ、怪我じゃなくてよかったよ」ローザは優しげに眉を下げたあとで、小さく息を吐いた。


「トラブル続きだけど、皆が無事なのが一番なんだし」


「えぇ。それは間違いないですね」


 ローザ達を順に眺めて、アッシュも頷く。冒険者として最も気を付けなくてはならないのは、当然のことだが“生き残る”ことだ。


「そもそもの話、下らねぇトラブルさえなけりゃ言うことはないんだがな」


 皮肉っぽく唇を歪めたカルビが、拘束して寝転ばせているレイダー達の方を視線だけで一瞥した。ネージュもそれに倣ってから、軽く鼻を鳴らす。


「対処ができたところで、余計な仕事が増えるのよね」


「まぁ、レイダー達に襲われることになったのも、元を辿れば墳墓の一件が原因だから。トラブルがトラブルを呼んでいるというか……」


 色々と思い出すような目つきになったローザが、エミリアと同じように夜空を見上げて、また息を吐く。


「それでもギルドからの御指名だから、この依頼を受けないってワケにもいかなかったもんね~」


 ゼナルブ墳墓で隠しフロアを埋めてしまったことに対して、ローザ達とアッシュは、貢献度を大幅マイナスされるようなことはなかった。


 その代わりなのかもしれないが、貢献度のプラスもなく、ローザ達の等級にも変化はなかったし、アッシュも5等級のままだった。


 5号区ギルドでリーナと出会ったのと同じ日に、そのことをアッシュ達は窓口で確認している。ガリクスの依頼に関しては、報酬は受け取ることができたものの、貢献度については変化なしという、奇妙な結果に終わることになった。


 冒険者ギルド内でどのような話し合いがあったのかは判然としないが、アッシュ達がギルドを除名されるような事態にならなかっただけ幸いだった。


 やはり、依頼主であるガリクスが直接動いてくれたのが大きいのだろう。


 6号区ギルド支部でガリクスと別れてから、アッシュ達は彼とは顔を合わせていない。


 埋まってしまった隠しフロアを掘り出すために、ガリクスは土属性魔法の扱いに魔術士か、魔術師、場合によって魔導師を雇うために忙しく動き回っているそうである。


 だが、ギルドの窓口で彼からのメッセージは受け取ることができた。


『今回の件はすまなかったな。気が向いたら、いつでも俺達のクランに来い。最後まで戦い抜いたボウズもな。歓迎するぜ』


 簡潔な内容だったが、ああいった専門クランに誘われるということは、ローザ達やアッシュの実力を評価したという以上に、クランマスターであるガリクスにも信頼された証だ。


 だが、窓口での話はここで終わらなかった。


 ローザ達の実力を見込んでいるという意味以上に、今回の処分が軽いもので済んだ代わりという意味合いが大きいのだろうが、ローザ達はギルドから直接の依頼を受けることになった。


 その依頼とは『辺境の町を防衛するために、力を貸して欲しい』というものである。ローザ達とアッシュが森の中で野宿をしているのも、その町に向かうためだ。


「人々を守ることを頼まれて、断る理由などありませんわ!」


 上を向いていたエミリアが顔を下げ、真面目な表情になってローザ達とアッシュを見回した。


「まさに、冒険者である私達の力が求められているのですから!」


「とはいえ、アタシ達はおまけみたいなモンだ。ギルドの説明じゃあ、もうエルンの町には『正義の刃』と“剣聖”が入ってるって話だったろ」


 カルビが軽く鼻を鳴らす。


「それに、辺境伯サマの領兵騎士団もな。それだけ戦力が揃ってるところに、アタシ達の居場所があるのか不安なぐらいだぜ」


「でも……、町の状況を聞いた限り、厄介者扱いされている私達にまで依頼が回ってくるのも理解はできるわ」


 木の幹に凭れ掛かったネージュが顎に手を当て、考え込むように視線を下げる。


「町の付近で、何かの地下施設が複数見つかっただけでも事件なのに。そのうえ、正体の分からない魔物の群れが断続的に現れているとなれば、事態は深刻よ」


 地下施設という言葉の響きに、アッシュは胸の中に澱んでいくものを感じた。その不快感と悪寒は表に出さず、今回の依頼内容を思い返す。


「……窓口での説明では僕達とは他に、発見された施設を調査する冒険者も集められている、ということでしたね」


「うん。地下に潜って探索する冒険者とは別に、町の防衛を手伝うのが私達の仕事って感じだからさ」


 アッシュに頷いてくれてからローザは、確認するように続ける。


「つまり今回の依頼では、戦闘力よりも協調性が大切ってワケだね~?」


 含みのある言い方をするローザは、やはり含みのある目線をカルビとネージュ、それにエミリアに向けた。


「ローザさんが何の心配をしているのかは分かりませんが、私ほど協調性のある冒険者など、アードベルの何処を探しても2人といませんわよ? まァさに、オンリィィィワァァンンヌッ!」


 自信満々に言い放つエミリアが、傲然と胸を張った。


「……貴女みたいなのは2人といない、という部分だけは同意できるわね」


 酸っぱそうな顔になったネージュが、横目でエミリアを見て呟いた。


「まぁ、アタシ達の協調性がどうこうって話は置いとくとしてだ」


 カルビが面倒そうな言い方をして、軽く伸びをした。それから首を回してゴキゴキと鳴らす。


「あのレイダー共、どうする?」


 カルビの声は、もう疲れていた。ローザとネージュも口を閉ざし、顔を顰めている。レイダー達への対処は貢献度にも関わるし、冒険者の重要な仕事だ。


「罪深い方々ではありますが、この山奥に放っておくわけにはいきませんもの」


 腕を組んだエミリアが鼻を鳴らし、地面に転がるレイダーたちを哀れむように見下ろした。


「明日の朝になれば、エルンの町まで歩いて貰うしかありませんわね」


 その面倒さからくる憂鬱を想像したのだろう。「見張り役は誰だよ」「私達しかいないでしょ」とカルビとネージュの2人が溜息を吐き合う。


 顔を俯かせたローザは、地面に横たわっているレイダーたちを見下ろした。その眼差しの険しさを誤魔化そうとするように、苦笑して肩を揺らしてみせる。


「こんな悪人を10人以上も引き連れていったら、“剣聖”さんに呆れられそうだよね~。またお前たちか、みたいにさ」


“トラブルがトラブルを呼ぶ”。


 先ほどのローザの言葉は、やけにアッシュの頭に残り続けた。


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