第50話:ミートソースパスタ
店の扉が、からん、と鳴った。
「いらっしゃい」
静かな声とともに、奥からおかみさん――忍さんが出てきた。
深夜0時過ぎ。店内は静まり返っていたが、一人の若いサラリーマンが、疲れた顔でカウンターに腰を下ろす。
「……すみません、何か温かいもの……できれば、子供のころ、母が作ってくれたミートソースが食べたくて」
忍さんは微笑む。
「うちは“深夜食堂しのぶ”って名前だけど、メニューにないものも、マサさんが何とかしてくれるわよ」
奥の厨房にいるマサさんが、静かにうなずく。
ごそごそと手際よく材料が出され、フライパンが温められる。
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【ミートソース調理描写】
挽き肉をオリーブオイルで炒め、刻んだ玉ねぎ、人参、セロリが加えられる。
赤ワインが注がれ、アルコールが飛んだあと、トマト缶とケチャップ、塩胡椒、少しの砂糖で甘味を整える。
煮込む間に、マサさんがスパゲティを茹で始める。
ソースが煮詰まり、艶が出たころ、茹で上がった麺が深皿に盛られ、その上に熱々のミートソースがたっぷりとかけられた。
粉チーズを軽く振って――
「はいよ、ミートソース」
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男は一口、フォークを差し入れた。
その瞬間、懐かしさが舌に広がる。
「……これだ、母さんの味と少し違うけど、なんか、泣きそうになる味です」
「味って、不思議よね。誰かの心に繋がってる。思い出とか、愛情とか」
忍さんがそう言って笑う。
男は、もう一口、ゆっくりと噛みしめた。
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「ミートソースレシピとワンポイントアドバイス」
▶材料(2人分)
・合い挽き肉…200g
・玉ねぎ…1/2個
・人参…1/4本
・セロリ…1/4本(なくてもOK)
・ホールトマト缶…1/2缶
・ケチャップ…大さじ2
・赤ワイン…大さじ2
・塩・胡椒…適量
・砂糖…小さじ1
・パスタ…200g
・粉チーズ…お好みで
▶ポイント
・野菜はできるだけ細かく刻むと口当たりが良く、甘みも引き立ちます。
・トマト缶を加えた後は、弱火でじっくり煮込むことで味に深みが出ます。
・赤ワインがない場合は、水+少量のウスターソースでも代用可。
家庭の味に近付けたいなら、赤ワインは使用しなくてもよいかも。




