part3
神主の元に着きました。
お母さんはヤマネが病気に侵されているのではないか
心配でいっぱいです。
ヤマネ母「神主様、ヤマネは…ヤマネは…」
神主「…舞巫女ヤマネよ。其方は厄神様の力を
受けたことには相違ない。だがそれは、
何かしらの導き。厄神様は破滅をもたらす。
これは…まずいことだ。」
それを聞いたお母さんはとても驚きました。
言ってしまえば、ヤマネには厄神が憑いていることになるのです。
そのことをヤマネは理解できていないようなので、
神主が説明しました。
ヤマネ「え…。私が厄神様に?」
神主「其方の話には嘘偽りがない。
よって其方の夢は真のことだ。
厄神様が力を『与える』のではなく
『捧げる』と仰った以上、これ即ち、
厄神様の全てが其方に憑いていることになる」
ヤマネはここで、かなりの大事に至っていることを
自覚しました。自分がその場の流れに身を委ねて
受け取ってしまったものは、自身が再封印した、
里の者達が恐れていた『厄』そのものだったのです。
神主「ヤマネよ。其方の絶大なる力は、この世界には
相応しいものではない。
軽蔑として言っているのではない。
其方は神となったのだ。もう人間ではない。
人と神の共存が不可能なのは、
何千年もの歴史が生んだ、この世の真理だ。
そして我ら人類が上位存在の神の御言葉を
我ら神主らが間に立ち、他者に告げる理由の
一つもまた、かつての人類の祖と神が交わした
取り決めだからだ。…つまり短略すれば
其方は神の世界へ参る必要があるのだ」
ヤマネは信じることができません。
あんなにも楽しい時間を送ってきて、これからも
一緒の時を里の皆と過ごすはずなのにと。
受け入れられないのです。
ヤマネ母「ヤマネ…。お家に帰って色々
整理しようか。
お母さんもちょっと落ち着きたいの」
ヤマネ「分かったよ、お母さん…」
神主「取らねばならぬ措置は一つだが、
精神一到も大事だ。ヤマネはまだ齢5つ。
ゆっくりと心をまとめてきなさい」
こうして一旦家に帰宅をすることにした母娘の2人の後ろ姿は、澄んでいた青色の明るい昼の空から
群青色の暗い夕方の空に吸い込まれていきました。