91.一目
「結婚して下さい!!」
「なんで?」
「一目惚れしました」
「うーん。そう。ちょっと、待ってね。聞いてくる」
鍛冶場で今日も精を出していたフランは、突如現れた豊かで長く波打つ紫色の髪を持った人に声を掛けられ、自分では判断できずに助けを求めて駆けだした。
「え?」
「ユガリの息子じゃねえか、どうしたんだ?」
鍛冶場の奥から現れたズウゾに熱に浮かされたかのように答える。
「彼女に結婚を申し込んだのです」
「はあ?」
「よーせーさーん。助けてー」
鍛冶場の外で助けを呼んだフランの呼び声に答えて、ミハとエルディランドゥが忽然と現れた。
「フラン!どうしたの?」
「一目惚れされちゃった。どうしたらいい?」
「え?ええー!!」
ミハの驚愕の声とエルディランドゥの驚いた顔に、疑問を浮かべてフランが問う。
「結婚した方がいいの?」
「待ってくれ」
ミハより早く立ち直ったエルディランドゥが待ったをかける。素直なフランは待つ。
「うん」
「ミハ?」
「エル、家族会議招集だよ! フランも参加ね。相手には待ってもらって」
「分かった」
踵を返そうとしたフランをエルディランドゥが再び止める。
「相手は誰だ?」
「?知らない人」
「フラーン!!私達が行ってくるから、フランはここで待ってて」
軽い感じで「うん」と頷いて大人しく立っているフランをその場に残し、鍛冶場の中に戻る。
「エル、どんな人だと思う?」
「精霊が通した相手だからな」
「ズウゾさんも中に一緒にいるんだよね?」
「その筈だ。知り合いかもな」
「同年代の?」
「どうだろうか」
ミハとエルディランドゥは逸る心を抑えつつ、鍛冶場の出入り口を潜った。




