92.対峙
「どこかで見たことがあるような・・・」
「ミハ?」
ミハの呟きにエルディランドゥが反応するが、それに答える前に紫色の髪の人物がフランに一目惚れして結婚を申し込んだのだろうと当りを付けて、若干前のめりで尋ねに行った。
「こんにちはー。ズウゾさん、こちらの方は?」
「あー。怪しい奴じゃねえと言ってやりたい所だが、俺もそんなに知っちゃいねえ。ユガリの息子だ」
「ほー。それで見たことがあるような気がしたんだ!ええっと、フランに何か?」
「ああ!あの子はフランというのか!」
余計な情報を与えてしまって頭を抱えるミハは、素早く切り替えた。
「あーっと。ちょっと、一緒に来てもらえますか?」
「どこへでしょう?」
「フランの実家です」
「是非、お訪ねしましょう。手土産は必要でしょうか?」
「・・・今の所は必要ありません。ズウゾさん、フランと一緒に今日は帰るね」
ミハは固い声で言うと、ユガリの息子を先導して歩き出した。
「ああ。気を付けてな」
ズウゾも呆気にとられたように見送った。
「フラン、今日は一旦、家に帰ろう」
「分かった」
ヒイ、フラン、ミハ、ケイが並んで座る。クロは勿論、ヒイの膝の上にいる。エルディランドゥは後ろ手待機だ。
「あなたは、ユガリさんの息子さんで・・・」
「申し遅れました、リガルと申します」
ミハが初めて耳にした顔をする。フランは口を開いた。
「へー。初めて聞いた!そんな名前だったんだね」
ミハが表情で留めたことを口にしてしまっている。ヒイの視線が二人に飛ぶ。
「ええ。これから、良く知って頂けると嬉しく思います」
リガルは座ったままで軽く礼をする。
「それで、フランからは一目惚れされて、結婚を申し込まれたと聞きました」
「はい。とても可憐な方で、一目で好きになりました」
「それで、これからどうしたくて、どうするつもりですか?」
「結婚して頂いて、ずっと一緒にいてもらいたいと思っています」
ヒイは表情をちらりとも変えなかった。それが逆に怖いとミハと無言を保ったままのケイが思う。
「気持ちが伴わなくても?」
「気持ちが無いと仰る?」
「明白では?」
フランはおっとりそのまま疑問を口にした。
「ねぇ。一目惚れってなあに?それをすると結婚するの?」
ヒイとリガルの対峙よりも緊迫した空気が漂う。




