33.褒め合戦
「テレーズさんと私が仲良くすることが、相手が一番嫌がると思うんですよ。」
「それはそうだが、テレーズが危ない目に合うのは反対だよ」
「絶対に守りきりますよ」
フレーズが信用できないと、首を振る。ニカもテレーズが危ない目に合うのは反対だ。
「このまま守っているだけだとちょっと心配で」
「・・・ふー。確かにね。今は悪戯程度の呪いですんじゃぁいるが、エスカレートしないとは限らないからね」
「テレーズさんだけじゃなく、テレーズさんの大事なあなたと、このお店にも影響が出たら、きっとテレーズさんは悲しむと思うんです」
「そうさ。それは分かっちゃいるが、可愛いあの子が!!」
「確かに、可愛い。心配なのは分かります」
呪いについて議論していたはずが、いつの間にかテレーズ可愛い話で盛り上がっていた。
「お祖母ちゃん!ニ、ニカさんも!なに、話してるの!!」
お使いから戻って来るなり、店先で自分の可愛い談義を聞かされたテレーズは、顔は真っ赤で涙目だ。ニカが褒めているのを聞けてちょっと嬉しかったが、それ以上に恥ずかしかった。店の前を通る人もちょいちょい、可愛いねとか、そこがいいとか合いの手が入るのも恥ずかしさに拍車をかけた。
風の噂では、呪い返しは派手に作用したらしい。
事の顛末を聞いたミハがぽつりとニカに告げた。
「お姉ちゃんが一番過激だよね」
「ヒイちゃんは家族愛が強いから」
それでまとめていいものかとミハは少しの疑問が浮かぶが、家族の幸せが第一だ。ヒイがしたのはニカにフレーズと可愛い談義を店先ですることの指示と、呪い返しの作成だけだ。好きならば、ライバルを落とす方法ではなく、自分の魅せ方を考えるべきだったのだ。私だったらそうするなと気持ちを切り替えると、ニカに言う。
「ニイちゃん、今度紹介してね」
「勿論」
ニカの隣に、少し照れ屋な働き者のテレーズが並ぶこととなった。
フレーズは少し寂しそうだが、新たに鍛える者を見つけたようで、直ぐにいつもの調子を取り戻した。
「ポンド、それはこっちへ出しておきな」
「?フレーズお祖母ちゃん、なんで?」
森に入る時に使う夏用の虫除けを来年のために片付けようとしていたポンドに、フレーズがまだ出しておくように言う。
「今日は暑さが戻っただろう。そういう時にまた売れるのさ」
「そうなんだ!」
ポンドの目が輝く。テレーズがニカと仲良くなると、徐々にフレーズの雑貨店とも交流が出てくるようになり、ポンドが商売に興味を持った。フレーズが育て甲斐があると請け負ってくれ、今やポンドはフレーズの二人目の孫となっている。
ポンド自身も新しいことが知れ、それが利益に直結し、また自分一人を大切にしっかり見てもらえることが嬉しかった。今までの生活も不満は無かったが、満たされた心で考えると少し寂しかったのだと思う。それぞれが自分の幸せを考えられるくらいに余裕が出てきて、皆が生き生き働いている。毎日が楽しくて、ケイに守ってもらってばかりだった自分の成長を誇らしく思う。




