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31.気立て

「おかえり」

「ただいま。お祖母ちゃん」

「どうしたんだい?」

「ううん。何も」


 浮かない顔で帰宅したテレーズへ、店番をしていた祖母フレーズが尋ねる。フレーズにとって遊びたい年頃にも係わらず、雑貨店の手伝い進んでしてくれる孫娘の最近の沈んだ様子に心配ばかりが募っていた。店番等をしてくれている時はその顔が曇ることは無く、ほぼ、外出して帰ってくると憂い顔になっているのだ。


「どうしたもんかね」

「あのう・・・」


 店は守護のまじないが掛かっているので、守ってやれる。店から離れてしまうと駄目なのだ。フレーズが嘆いていると、テレーズを追ってきたヒイがフレーズに声を掛けた。


「何だい?何が入用だい?」

「いえ、客ではなくて。先ほどお店に入っていったのはお孫さんですか?」

「あんたたち、あの子に何かしたのかい!!」


 フレーズが凄い剣幕でヒイに詰め寄るが、間にニカが入る。


「待って下さい。私達はあの子の様子が気になって、ここまで来てしまったんです。一人だけ、苦しそうだったので」

「・・・そうかい。で、それを伝えてくれただけかい」

「ヒイちゃん、お願い」

「彼女との仲の良さを見せつけにでも来たのかい?」


 フレーズががっかりしたように、ヒイとニカを見た。


「私の姉が、気が付いたことがあるようなので、お話してもいいですか?」


 フレーズが力なく頷くのを見て、ヒイが口を開いた。


「呪われているようです」

「呪いだって?」

「呪い?」

「あんたの方は知らなかったのかい?」


 ニカの驚きにフレーズが怪訝な顔をする。


「姉がそういうのに詳しいので。呪い、どうにかできる?」

「うん」

「できるのかい!お願いだ。テレーズを助けてやってくれ。金は払う。幾らかかる!?」


 フレーズの必死な様子にヒイが答える。


「お金はいいですよ。信じて頂けるんですね、呪い」

「ああ。なんとなくは感じてたからね。あたしには外まで守ってやれる力は無いんだよ。金はいらないって、なにならいるんだい?」


 孫娘の事を助ける為なら幾らでも払えるが、それ以外の事を望む良く知らない不審人物には慎重にならざるを得ない。


「この辺りのお店詳しいですよね? その情報を」

「そんなことでいいのかい?」

「私達に欠けていることなので」


 拍子抜けしたフレーズは軽く請け合う。


「それくらいならお安い御用だが、だからといってテレーズとの仲を取り持ってくれとかは許さないよ」


 自分の無力さを少しだけ嘆いたフレーズだったが、すかさずニカに向かって釘を出す。ニカが苦笑して軽く頷く。ヒイがごそごそと鞄を探りお守りを出した。店先でフレーズに話しかける前に、「健康成就」のお守りを錬金術で作っておいたのだ。


「これを」

「どう使うんだい!?」


 縋らんばかりの聞き様に、ずっと心を痛めていたであろうフレーズの思いが解消されるようにとヒイが説明する。


「持っていてくれれば効力を発揮します。多分、呪いをどうにかしても、またすぐに呪いをかけられてしまいそうなので」

「やっぱりかい。分かったよ。あの子は気立ても外見もいいからね。いらぬ嫉妬を集めちまったのかい・・・」

「ええ。呪いの効力が出そうな時に、必死に抑えられるくらい素敵な方ですもんね。そうしたものは自分に返ってくるのに」

「誰が呪ったのかも分かるのかい」

「はい」

「・・・言わないでおくれ。あたしも成り下がりたくはないからね」

「はい」

「これ、感謝するよ。あの子に会ったら挨拶くらいはいいよ」


 最後に少しだけ譲歩したフレーズに、黙っていたニカが吹き出す。


「そうさせてもらいます」

「次はお客として来ますね」


 ヒイも軽く頭を下げて店を後にした。

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