サカバコウサロ・四条
「……来訪、御免……」
「いらっしゃい。」
「……毎回、注文……」
「いつもの『おまかせ』ですね。畏まりました。こちらをどうぞ。」
「……一瞬、出現……」
「ええ、そろそろいらっしゃる頃かと思いまして」
「……喜々、感謝……」
「いいえ、お気になさらず。全てのお客様は大切な方ばかりですから」
「……赤面、汗顔……」
「ふふふ。」
「……美味、好物……」
「それは良かった。今日は良い魚が入りましたので」
「……好物、既知……」
「ええ、以前魚をお出しした際にお喜びでした」
「……記憶、卓越……」
「商売柄、ですかねえ……多少は記憶力に覚えがございます」
「……問題、挑戦……」
「ふふ、ええ。」
「……初出、邂逅……」
「初めていらっしゃった時のお話……ですか?ええ、勿論覚えておりますよ。」
「……疑問、期待……」
「ふふふ。ではお答え致します。あのときは今から50年前。雨の降る夏の夜のことでした。」
『……自棄、滅亡……』
『いらっしゃいませ……おや、これは大変だ』
『……憤怒、号泣……』
『お客様、どうかこちらに……』
『……放置!絶対……』
『そうは参りません。お客様としていらした以上、満足してお帰りいただく責任が私にはあります。』
『……騒音!騒音!……』
『……わかりました。それほどまでに仰るのであれば……私にも考えがあります』
『……無駄、疑問……』
『……運搬!?降下!……』
『よっ……と、はい、ではこちらで少々お待ちください。』
『……不明、意図……』
『……最低、羞恥……』
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『お待たせ致しました……こちらをどうぞ。』
『……不明、飲料……』
『……騙されたと思って。サービスですので』
『……臭気、躊躇……』
『……さあ。』
『……了解、承知……』
『……どうですか。』
『……適温、人肌……』
『……和酒?美味……』
『……美味、沈静……』
『落ち着きましたか。そちらは薬酒『菜種』。神経を宥める効果がございます。』
『……感謝、感謝……』
『いいえ。他にも何かお出ししますね』
『……感謝、感、謝……』
『……主人、傾聴?……』
『ええ、もちろん。お話を伺うことは致しませんが、お話されるのであれば喜んでお聞き致します。』
『……自分、地味……』
『……存在、希薄……』
『……種族、影霊……』
『……全員、不知……』
『……恋人、決裂……』
『……【お前、地味だし、一緒にいても無口でつまんねー。いるのかいないのかも曖昧になるし】……』
『……』
『……自分、初恋……』
『……今日、決裂……』
『……自分、地味……』
『……自分、駄目……』
『……魅力、不在……』
『……努力、無駄……』
『……服装、派手……』
『……存在、希薄……』
『……発声、極大!……』
『……存在、希薄……』
『……そうでしたか』
『……主人、質問……』
『はい。』
『……自分、希薄?……』
『そうだと思いますよ。現に今もたまに見失ってしまいますから。』
『……了解、結局……』
『……結局、無駄……ですか?』
『……首肯、無駄……』
『……ふむ。』
『……思案?拝聴……』
『……少し思ったのですが……なぜ、存在が希薄だといけないのですか?』
『……駄目、当然……』
『何故です?』
『……恋人、決裂……』
『……その恋人の方は、あなたの希薄さを受け入れられなかったのですね。あなたが、希薄さを無くす努力をしていたのにも関わらず。』
『……首肯、決裂……』
『……あなたは、希薄さを【認める】ことはされておりましたか。』
『……――、――……。』
『希薄さは、あなたという種族が生まれもった特性です。……そこを変えることは誰にもできない。』
『……首肯、絶望……』
『……でも。うまれもった性質をどう使うかで幸せかどうかは決まるのではないですか』
『……例題、列挙……』
『例えば。生まれついて誰よりも強く。大きく。恐ろしい存在が居たとして。……そんな存在が、孤独を感じ、友を欲しました。』
『……でも、誰もこなかった。当然です。みんな恐ろしがって近寄らなかった。』
『その存在は自分の力を恨んだ。必要のない力でした。』
『けれど……ある時出会ったのです。生まれついて誰よりも弱く、小さく、ちっぽけな存在に。』
『そいつは言いました。【俺は生まれてこの方自分より強いやつしか見てこなかった。だから――お前も俺には同じに見える。】』
『【俺は店を開こうと思っているんだが、荒くれ者があつまる店になるだろう。とても俺だけじゃ店を続けられないんだ】』
『【なあお前さん。誰よりも強いんだろう?俺と店をやってくれないか?】』
『……その時から、強き存在は自分の力を誇りに思い。幸せを手にいれたのです』
『……主人?、推測……』
『……ふふ。……とにかく彼は今、とても幸せなのです。かつて自分を必要とした存在は既に此の世にはおりませんが……それでも心のなかに温かさが確かに灯りつづけている。』
『……あなたに必要だったのは、そのままのあなたを受け入れてくれる存在を探し続けること、だったのではないかと思いますよ。』
『……存在、不在……』
『……そうですね。差し支えなければ私が……第一号になりたいのですが』
『……――、――……』
『……拝承、主人……』
『ふふ。』
『……気付!財布……』
『……財布、遺失……』
『さて、これは独り言ですが……私はただ、何となく一人で晩酌をしたくなって準備をしていたのですがね』
『……主人?代金……』
『……でしたが、ああ何故でしょう、準備をしたはずの晩酌セットが無くなってしまいました。まあ、きっと私が気づかないうちに食べてしまったのですね』
『いやはや、最近ぼうっとすることが多くなって困りますねー』
『……この分では、お客様は私が気づかないうちに帰られたのでしょう。さてさて。片付けをしなければ。』
『……主人、感謝……』
『さて!そろそろ店仕舞といたしましょう。明日は7:00からお店を開けなければ――』
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「……まあ、こんなところでしょうかね」
「……喝采、正解……」
「ふふふ。……おや、何ですかこのお金は……今日の分には多すぎますよ」
「……過去、料金……」
「……はて、何のことだかわかりかねますな」
「……先程、正解……」
「……あっ」
「……絶対、受領!……」
「…………こ、これは独り言ですが」
「……絶 対 、 受 領……」
「いやはや……今日は一人で支度をしてしまいましたがいったいなんで――」
「(代金)」
「……見事な希薄さ。これは一本も二本も取られましたね」
「……やはり、絆とは、いいものですねえ……」




