サカバコウサロ・二櫃
「むぁああああすたぁあああああああああ」
「いらっしゃいませ……おや、サキュさん……今日は荒れてますねえ」
「だあってえ……ううう……」
「まあ、まずはこちらにどうぞ……ご注文はいつものでよろしかったですか」
「……うん……」
「承りました。少々お待ちを……」
「ううう……」
「お待たせいたしました……コラーゲンたっぷり鶏皮コウモリ酒、ホットです」
「ありがと……~~~~~~ッハァ~~~~~~これよねええ~~~~~~効くわぁ」
「いつもより少し強めにさせていただきました」
「ふふっ、ありがと!気が利くわねえマスターは。それに比べてあの男ときたら……!!!」
「……こちら、サービスのおつまみです。黒トカゲのマムシ漬ですが」
「あぁ~んもう♡あたしあんな男やめてマスターとくっついちゃおうかなあ~♡」
「……おかわりはいかがですか」
「もーーつれないんだからぁ」
「……恐縮です」
「ふふっ……隙がないんだからっ。アイツとは大違いよ……」
「……確か、人間さんでしたか」
「そ。まあ知っての通り、普通の人間じゃないわけだけど。」
「ごくごく薄くではありますが、ヴァンパイアの血が流れているとか?」
「……そう、それ。それが問題なのよぉ」
「すると……あぁ」
「察しがいいわね」
「えぇ。まあ。ヴァンパイアの『魅了』は有名ですから」
「あたしら魔物種にはほとんど効かないんだけどねえ……」
「彼の住まわれている人間の町ではそうもいかないでしょうね」
「ふんっ……そうよ。今日はデートだったんだけど……アイツ……すぐ他の女の子がよってきて……」
「ふむ」
「困ってるふりして気を引こうとしてるのは見え見えなのに……わかってるのかわかってないのか知らないけど絶対助けに行っちゃうの」
「……そうなんですね」
「そうなのよ!あたしが隣にいるのによ!?せっかく……今日は二人きりでデートだったのに……デートだったのにい……うううう」
「……お酒、追加しましょうか」
「おねがぁい……」
「どうぞ」
「ありがと……。それで……それでね。」
「はい」
「あたし、アイツの気を引こうとして……他の男にナンパされてみたの。普段なら相手にもしないような奴」
「それはそれは……」
「うん。あたし美人だし、ナンパしてくる奴はいくらでもいるわ。それでね、ナンパされてるあたし見てアイツなんて言ったと思う?」
「はて……」
「『その困っている女性を離せ!』よ」
「……わかってませんね」
「そう!!!!!ほんっとそう!!!!そこは『俺のモノに手を出すな!』とかでしょーーーー!?」
「それはサキュさんが怒るのもわかる気がいたします」
「でしょ!?……あたしは……特別扱いしてほしかったのに……あいつにとってはその辺の困ってる女の子の一人なのかなって思ったら、なんか涙出てきちゃって……わかんなくて……」
「……こちらをどうぞ」
「うう……ズズッ」
「ところで……一つよろしいですか」
「なにかしら……」
「その時……彼は他の女性の用事はどうなさっていたのでしょうか」
「え……」
「確かサキュさんのお話では、次から次へと助けに行かれていたそうですが」
「うん、そうよ」
「では、サキュさんを助けに来られたのは他の女性の用事を放ってこられたということになりませんか」
「……あ……」
「もちろん、たまたま用事が途切れたということもあるかもしれませんが……」
「……いいえ、それはないわ。行列ができちゃうくらいだったんだもの」
「……サキュさん」
「……う……で、でも……」
「……ふふ……それに……どうやら、私よりも適した話相手がいらしたようですよ」
「……え?」
「サキュ!!!」
「あ……アル!?ど、どうしてそんな、ボロボロになって」
「ごめん、人を撒くのに手間取っちゃって。君を見つけに来たよ」
「なんで……あたしなんか……」
「ごめん!!!」
「あ……」
「僕が悪かった!せっかくのデートなのに、君の気持ちを全然考えてなかった!!!」
「……」
「その……もう遅いかもしれないけど……」
「……それ……丘の花ね」
「うん。今日は、君と僕があの丘で初めて会った日だから。」
「…………覚えて、くれてたんだ」
「忘れたりしない。この身体が朽ちるまで、君と一緒に居ようと誓ったんだ。」
「アル……」
「もし、許してくれるなら……」
「……イヤ」
「サキュ……」
「ちゅーして」
「え」
「ちゅーしてくれたら。許す。」
「えっ、いやちょっ、その、で、でもこんな、人の前で」
「いやなの?」
「~~~~~~ッ!」
「ふふっ……ごめんね。いじわるしちゃった。もうとっくに許して―――!?」
「(……おお……おや、おや……)」
「……これで、許してくれる?」
「……ばか」
「マスター、サキュがお世話になりました。これ、お代です」
「いえいえ……末永くお幸せに」
「ありがとね、マスター。」
「……夫婦円満が一番です」
「えへへ」
「それじゃあ、僕らはもう行きます。デートの続きを楽しまないと」
「いってらっしゃいませ。ご子孫ともども、当店をごひいきに……」
「もうっマスターったら!……またくるわ。今度は3人で」
「……またのご来店、お待ちしております」
「………………。」
「……夫婦って、いいものですねえ……」




