story1
―――はてなく続く長い道を前だけを見て走る。
彼は後ろから追いかけてくるゾンビ犬に捕まらないように必死に走っている。それでも人の体力は無限ではない。
肺が酸素を求め、足がふらついた拍子に彼はつまずいて転んでしまった。体力は底をついたようで、もう走れそうになさそうだ。彼は鼻をつく、生温かく臭い息に気付き上を見上げた。そこには、先ほどまで彼を追いかけていたゾンビ犬がいた。いつの間にか頭上でヨダレを垂らしているゾンビ犬に襲われることを覚悟し、
彼―――佐々木大輝は目を閉じた。
「ちょっとコンビニ行ってくるわ―」
7月のある暑い日のこと。佐々木大輝はアイスを買うために家を出た。
―――はずだった。
「え…?」
玄関を出てたった数歩、歩いたその先にはコンクリートの道路も、お向かいの長谷川さん宅もなくなっていた。あるのは、草原と土を踏み固めたような道と見たことも聞いたこともないようなグロテスクな動物がヨダレを垂らしてこちらを見ている光景だけだ。
「だっだぴろい草原と、それに続く土でできた道が1本。おまけに目の前にはゾンビ似の腐った犬がヨダレ垂らしながら俺のこと睨んでるし…我ながらすげぇ白昼夢だな」
のんきに辺りを見回すダイキは自分が置かれた状況がまだ分かっていないらしい。だがそんなダイキにゾンビ犬は躊躇なくとびかかった。ノーガードのダイキはまともに左腕に攻撃をくらった。左腕からは痛々しく血が流れている。
「いってぇ!?てことはこれは現実!?えっ、でもっ、はぁ!?」
意味も分からず戸惑うダイキだがゾンビ犬はさらに傷を与えようと攻撃の姿勢をとる。
「良く分からねぇけど逃げたほうが勝ちだなこれっ!」
ゾンビ犬に踵を返し、痛む左腕を押さえ全力で走る。
「なんっで!俺がっ!こんな目にっ!」
―――はてなく続く長い道を前だけを見て走る。
ダイキは後ろから追いかけてくるゾンビ犬に捕まらないように必死に走っている。それでも人の体力は無限ではない。
肺が酸素を求め、足がふらついた拍子に彼はつまずいて転んでしまった。体力は底をついたようで、もう走れそうになさそうだ。ダイキは鼻をつく、生温かく臭い息に気付き上を見上げた。そこには、先ほどまで彼を追いかけていたゾンビ犬がいた。いつの間にか頭上でヨダレを垂らしているゾンビ犬に襲われることを覚悟し、
ダイキは目を閉じた。
「…はぁっ!」
気合いの入った声と共に聞こえる斬撃。ダイキは恐る恐る目を開けた。
そこには1人の少女があのゾンビ犬と細剣を使って戦っている光景があった。
「あ、あの子は…?俺も何か…!」
自分も戦いに加わろうと剣かなにか探して辺りを見回す。すると運が良いことに近くに大きな樹がはえており、その太い幹に立派な剣が刺さっていた。それを抜こうと剣のもとへダイキは走った。
「これを抜いて俺も…」
剣は驚くほど簡単に抜けた。と、言うより触れた瞬間に抜け落ちた感じだ。剣自体もものすごく軽く、扱いやすそうだった。
ダイキはその剣を構えてゾンビ犬と戦う少女のもとへ走った。
「うおおおおおっ!」
「…え、その剣は―――」