後日談にかえて——メモ2
世界観、各登場人物の背景、その後など、様々なネタバレあります。ご注意ください。
同じく、設定についてメモ書きです。雑で大変申し訳ありません。
まっとうな後日談や番外を書く時には、引き下げる可能性があります。
よろしくお願いします。
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聖女
ある日神殿に遣わされ、身に帯びた甚大な魔素と、それを操る能力とをもって、聖女として認められた娘。身の内から光り輝く美しさを持ち、同時期に大陸に濃い影を落としていた「とある国」に対抗する連合軍設立の精神的支柱として擁立された。
征伐連合軍の旗印として従軍した際も、穏やかで荒ぶらず、仕える者たちにも優しく誠実。旗印として懸命に務める強さを目の当たりにして、一同、骨抜きに近い状態になる。常に周囲は、神殿と連合軍の強国から選りすぐりの女性の側仕えに守られており、道中常に行動を共にしていながら、王子を始め精鋭たちでさえ、言葉を交わす機会は数回しかなかった。
「とある国」の魔素遣いを征伐し、国王が急死、慌ただしい宮中で、導かれるように閉ざされた部屋で、魔素を吸い出す呪具に縛り付けられた少年を見出し、自ら衣を与えて保護。聖女の初の尊い我がままに、そのまま少年を聖女の保護下に入れることが、特別に認められた。
戦争終了後、大国の宮中に身を置くことになるが、その幸せな婚姻が大陸中の期待と注目の的となったころ、突然、依り代となった娘を残し、この世界に別れを告げた。大陸中がその帰還を惜しみ、神殿への感謝の祈りが絶えることはなかったが、いつしか、聖女はこの世界を支える異界神(柱神)とともに、世界を守っていて下さると信じられるようになった。
シェリー
弟とともに、いつの間にか、王都近くの森の中に倒れていたという娘。
その名前は、聖女の依り代として各国の歴史書にちらりと見えるのみ。
森の中で目覚めるまでの記憶は曖昧。自分の名前と弟の名前しかしっかりとは思い出せなかった。特筆すべきことはない、平凡な少女だったが、養い親を失い、弟の死を経て、魔素が溢れんばかりに沸き出し、身に付いていたかのように操る術を知っていることを思い出した。
呆然として王都に入ったのち、あれよあれよという間に、聖女として扱われ、そう振る舞うことを求められるようになる。さして強い情動もないまま、戦争が終わって行くのを見つめていたが、「とある国」でふと、囚われの少年(柱神)を見つけて、即座にその身が異界の者であると知り、翻って、自分もまた、異界から迷い込んだ身であることに、初めて思い至る。
少年の年頃が弟に近かったこともあり、この世界に捕われた者同士と、親近感を抱き、保護するうち、少年の身からこの世界の保持に相当量の魔素が常に割かれていること、そして「とある国」に魔素を搾取されて弱った少年は、身に残るだけの魔素では回復し得ず、このまま衰弱していくことを悟る。
弟に重ね合わせて、少年を救おうと決意し、王子とほか各国の代表が揃っている時機をわざわざ見計らって、少年に成り代わり、自分の魔素を送り込み始めることを計画した。
成り代わりの行く末が分からなかったことから、なにが起こるか分からない王宮ではなく、少年を弟として二人で静かに暮らしたいとは思っていたが、思いがけず、身の内の魔素量が急激に減ったことで見た目が変わったことが良い方に作用し、かつて暮らしていた村に住まうこととなり、企みの成功に、かえってどきどきしていた。
初めて会った時の少年は、窶れながらも整った顔立ちをしていたのが、成り代わった時から、弟によく似た面差しになったことを、自分への恩返しだと思っている。
柱神に魔素を循環され、聖女としての存在を取り戻したのちも、聖女として名乗ることはもうなかった。
この世界が終わるその時まで、柱神と寄り添うが、人に関わることもたびたびあり、柱神と聖女、二人の逸話は、各地にぽつぽつと残されることになる。それは、人の中に生まれ変わる弟を求めてのことだと言われている。
この世界を後にしたのちの、二人は、神々の世界で過ごすとも言われている。
柱神、異界神
数多居る神の中でも、古い神。酔いどれている間に、この世界の創造神に土下座の勢いで次の柱神となることをお願いされたので、まあいいか、と引き受けた。本来は、世界ひとつに縛られることなどない、至上神の一族のため、とても不敬な願い事。創造神にとっては、柱神という他人まかせなシステムのせいで世界の維持にたびたび困窮していたがための、自業自得の結果の暴挙だった。
ただし、柱神は頼まれたことはあまり断らないことが有名だった。実はすべてに無関心故の寛大であるため、一族の兄姉は心配をして、巨漢をお目付としてつけている。ただし、よく撒かれてしまうので、あまり役には立たない。
今回も、巨漢が撒かれて目を離している間に、柱神としてとりあえず千年ほどは世界を支えることになっていた。さらには、世界に注いだ魔素がどこかへ吸い込まれている謎を、ふと思い立って解明に向かった先で、強大な魔素の力を使いたいと、下手に出てしつこく願う魔素使いに会い、まあいいかと頷いていた。そのせいで、世界の維持のための魔素のほかに、大陸制覇のための魔素を際限なく搾り取られ、姿が少年になるほど弱っていた。
自分に成り代わって魔素を送り始めたシェリーに驚いたものの、犠牲を払われることには慣れている。ただ、弱っている身で捨てられるのも困るため、シェリーの心の中に強く刻み込まれた少年の姿形を取った。
一緒に暮らすうちに、シェリーの温もりを知り、その悩みや苦しみを目の当たりにしながら回復に手一杯で慰めることもままならないことから、徐々に気持ちが育っていく。
ただし、明確にシェリーへの好意、独占欲、欲求、と自覚したのは、巨漢に踏みつけられたシェリーが、まさに自ら命を手放そうとした時。
忠実な僕のはずの巨漢に殺意を抱いたり。
シェリーと出会い、独占欲を覚えてからは、頼まれたら断らない、という評価を返上した。シェリー至上主義。ただし、これまで気が遠くなる時間、無関心だったため、心の機微にはまるで疎い。愛情を押し付けすぎたり、束縛しすぎたり、シェリーに手を出すものに仕置きをしすぎたりする。
逆に、シェリーの一挙一動により、かつて味わったことのない悲しみや苦しみ、渇きを覚えるため、悩んだりもする。
ただ、傍らにシェリーがいて、魔素を通じて繋がっているというだけで、今後の終りの見えない生が、じんわり温かなものに感じられるので、一生、離す気はないらしい。
巨漢
名前は秘密。武闘神の一人。武闘は舞踏でもある。踊れる。
お仕事で、柱神のお守りをしている。いつも撒かれる。
今回も撒かれて、またかよ、と探していたら、力をほとんど失くして子供になっているとか、意外とのっぴきならない状況になっていて、肝を冷やした。
聖女にねだられて、その側に居るのだと思い込んでいた。聖女には、もはや足を向けては寝られない。
しかし蓋を開ければ、結局この世界に縛られることになっていて、驚愕。きっと、至上神の一族に総出で責められる。家に帰れば幼なじみの妻が待っているのに、なかなか帰れず、このたび目出たく主人が愛する人と巡り会ったことも、呪われろ、と思っている。
必要に迫られて、独自に神殿は要人と繋がりを持っていて、柱神と聖女の今後の世話の際は、がつがつ使って行く。実はそんな根回しや事務的な処理が得意。仕事変えたい。仕事繋がりで、ベルナーには同情している。
家に帰りたいがために、この世界を終わらせるべく、戦乱の種を仕込んでみたり、したこともあるかもしれない。
語り伝えられる、柱神と聖女の絵姿には、必ず、凛々しい狼の顔の乗った鎧姿で描かれ、「犬かよ」と主人に笑われる。
いつか、妻の元に帰れるはず。
ありがとうございました。
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