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53 世界の難民問題

日本では難民と言うとシナから流れてくる船を思い浮かべるけど世界で問題になっているのは陸路を集団で移動してくるやつだ。

シナの周辺国でも北アメリカやヨーロッパでも大きく問題にしているのも陸路で入り込もうとしている奴等だ。


シナの周辺国では国境沿いに緩衝地帯を設けて越境を阻止している。

緩衝地帯に侵入する密入国者は原則として射殺だ。

どの国もシナの内戦で物資を供給する事で利益を上げているので貿易自体は盛んであるが交易は緩衝地帯に設けられた特別地区のみで許されている。

満州軍による瀋陽奪還戦の結果をみて満州軍と自軍が同程度と判断している国はかなり強気になっている。

以前は緩衝地帯だけではシナ人の侵攻を阻止できるか不安そうな雰囲気が漂っていたのが最近はかなり楽観的になっている。


満州軍による瀋陽奪還戦の結果と満州の発展を知ってシナ内部では満州の様に独立した方が覇権争いを続けるより良いと考える者も増えている様だ。

考えを変えているのはシナ人と言うよりはシナの少数民族出身者が大半の様だけど皆朝鮮族の様にはなりたくないのだ。

そして上手く遣れば満州の様になれるかもしれないとも考える。

そんな感じでシナ内部が動き始めるとそれに呼応して周辺国も動き始める。

どの国も自分達がシナとの最前線には居たくないので可能であればシナからの防波堤となる国が欲しいのだ。


そうしてシナの状勢は少しづつ動き始めて独立とは行かないまでも覇権争いからは距離を置く勢力も増え始めた。

シナの周辺国もその辺りの勢力と接触している様だ。

シナ人がそんなに簡単に覇権への野望を捨てるとは思えないんだが……

軒を貸して母屋を乗っ取られることに成り兼ねないぞ!

シナ人はそういったのが得意だからくれぐれも慎重に!

懐柔しておいて後ろから刺すなんてシナ人には日常だし……

でもこのまま現状維持でも先は無い気がするしなぁ。

……シナからの離脱を望む少数民族なら大丈夫かぁ?






ヨーロッパはあの日以降の世界的な混乱時に核テロ防止を理由に殆どのイスラム教徒を追放したのだが人々は文化習慣や宗教等で群れを成して纏まる傾向が強くなって互いの群れを区別する様になっていたのでヨーロッパ地域では問題とされなかった。

その方がヨーロッパの国々が国を群れとして纏めるにも都合が良かったのだ。

でも国を追い出された側がそれを認めた訳ではないので軋轢は残った。

そして外国人は交易のため仕事で滞在する事は可能だが居住する事はほぼ不可能となった。

その辺りの状況は日本でも同じでビザなしで海外旅行なんて話はもうない。


追い出されたイスラム圏の人々は移民前の祖国が残っていれば受け入れ先が有るのでまだ問題は少なかったのだが戻ったはいいが国が崩壊して部族社会に戻ったりした地域だと馴染めずにヨーロッパに戻ろうとした。

特にヨーロッパで生まれ育った世代はヨーロッパの方に馴染んでいて縁者を引き連れて戻ろうとした。

でもヨーロッパではイスラム圏からの難民が元々問題になっていてそれも有って締め出されたのだから戻る先はない。

テロに走る過激な少数以外はそんなに危険はないにしてもヨーロッパ人にとっては追い出した者達が倍以上になって戻ってきたようにも見えるから恐怖は募るばかりだな。

そしてヨーロッパに戻ろうとしても難民扱いなのでその様に処理された。

これは無理にヨーロッパの国々に入ろうとすると殺されると言うことだ。

それでも諦められない者達はヨーロッパ近郊のイスラム圏の国に入って機会を窺う事になる。

その多くは昔の伝手を使ってヨーロッパとの交易を始めてそのまま居ついた。

テロリストになられるよりは数段マシなのでヨーロッパ人は警戒しながらもその交易を止めるまでの事はしていない。


こんな状態が二十年も続くと難民としてヨーロッパに直接向かう人は減っているけど難民の中からもそれなりに成功者が出て有力者となり避難地域も地元の有力者と話を付けて街になっていたりした。

そのような難民の集まってくる街がヨーロッパ周辺のイスラム圏に点在していた。

そしてその街の有力者はヨーロッパを故郷と感じ自分の子供達にもそう教えているイスラム教徒だ。

「お父さんの生まれた街はねぇ……」と大体は子供の頃の懐かしい良かった思い出しか残ってないから5割増しで美化されている。

それはそうだ、嫌な思い出しかなかったら戻ろうとは思わない。

そして祖国に馴染めなければ猶更のこと思い出は美化されている。


機会が有ればまたヨーロッパに住みたいと思っている者が住む街がある。

そしてその街には未だにヨーロッパに住みたいと難民が集まって来ている。






アメリカ合衆国では南からの難民の流入に頭を悩ませているのだが難民への対応はシナの周辺国がシナからの難民にしている対応と基本的に変わらない。

違うのはアメリカ合衆国は移民国家で南米や中南米からの移民も大量にいて政治力を持っている事だ。

違法合法を問わず難民を引き入れようとする勢力が存在して政治力を持っている。

そしてそれに反対する勢力も存在して難民を排除しようとしている。

アメリカ合衆国をその軍事力を背景に強引に纏めているアメリカ軍は国が維持できれば良いのでどちらに与するものでもない。


アメリカ合衆国で問題としているのは難民そのものではなくて難民の数だ。

世界的な混乱の中で北アメリカ地域は比較的その豊かさを維持している。

放置しておいたら分裂しそうな国をアメリカ軍が強引に纏めている御蔭である。

そしてその豊かさを求めて南から大量の人が流れ込もうとしている。

その全てを受け入れたら国が崩壊しかねないのでアメリカ軍が懸命に阻止し続けていた。


アメリカ合衆国では難民への対策で意見が割れているが難民の受け入れ容認派も野放図に受け入れたら国が危うい事は承知している。

それでも出来得る限りの難民を受け入れて己の権力基盤を強固にしようと画策している。

受け入れ反対派は少しでも受け入れると我も我もと難民が群がって収拾が付かなくなることが目に見えているので国の崩壊に繋がると反対していた。


アメリカ軍は国境警備は厳にして密入国に成功した者に関しては警察等に任せて政治問題化しても国の分裂に繋がらない限りは容認してきた。

アメリカ軍はいざとなったら国境沿いの難民キャンプを住民もろとも排除する予定でいる。

容認派が権力を握って仮に難民の収拾が付かなくなれば国境沿いの難民を排除し反対派が権力を握ってもし命令が有れば国境沿いの難民を排除する。

難民を排除する以外の選択肢は無くて現状は待機しているだけである。

だから国内事情に関係なく難民が暴徒と化してアメリカ合衆国に向かえばその時点で難民は排除となる。


シナの周辺みたいに地域勢力を独立させて友好国か保護国に仕立て上げれば緩衝地帯となって良いと思うのだがそう上手くは行かない様だ。

下手に独立させるとアメリカ合衆国に併合しようとする勢力が国内外に現れる。

アメリカ合衆国はそうして領土を拡大してきた訳だから法的には問題ない筈だ。

そしてそれで権力が拡大できる勢力が国内外にいるのだからそうなるだろう。

でも現状では国内に大量の難民を解き放つも同然の結果となるのでそれは亡国に繋がりかねない。

併合した時点で今迄国境だったものが唯の州境となり出入り自由になってそれまで難民だった人々が流れ込む事になる。


メキシコが国の体を成していないにも関わらずアメリカ合衆国が昔の様に領土拡大に走らないのもそれが理由だった。

そこに原住民が居ようと気にしないで乗り込んで行って独立を宣言して合衆国に加わる。

アメリカ合衆国はそうやって領土を拡大してきた。

もし同じ様に世界的な混乱に乗じて領土拡大を図っていたら間違いなく成功したであろう。

がそうすると同時に大量の国内難民を抱える破目になっていた。

領土は欲しくても難民と抱き合せではと止めていた。


現状は名ばかりのメキシコ政府に協力して国境線沿いのメキシコ側にアメリカ軍を派遣している。

アメリカ軍が派遣軍として駐留している難民の居住地帯は実質的にアメリカ領土と化して緩衝地帯となっている。

もうこれが二十年以上も続いていてアメリカ軍の派遣地は他の地域よりは治安が良い状態を保っているため人が集まって来てアメリカ軍は統治者として君臨している形だ。

メキシコが国の体を成していない現状で二十年以上も占領統治すればどう考えてもアメリカ合衆国の領土なんだけどアメリカ合衆国はそれを認めていない。

元々は難民の流入を防ぎいざとなったら難民を排除するための派遣だった筈だけど外から見たら領土を拡大して難民も準国民として支配している様にしか見えないよな。

「いまさら難民を排除しようにも出来ないだろう?これは。どうするよ」と言った状況だ。

アメリカ軍も二十年もこの状況が続く事は想定していなかったようだけど今更抜けられない。

止めたら難民としてアメリカ合衆国に流れ込むのが目に見えている。

結局は実質的には領土と抱き合わせで大量の難民を抱える破目になっていた。

そしてその数は日々増えている。

難民が増えるのは形式的にはメキシコの国内問題だからざるみたいなものだ。




南米から中南米にかけては様々な勢力が乱立してもはや国の体を成していない所が殆どだ。

現在では国として残っているのは当時の小国で大国のブラジルとかアルゼンチンはもうない。

国が崩壊した後は地方の指導者が有能であれば地方自治体レベルの統治が維持できた感じだな。

治安が悪くて人の群れの禁忌に触れるためか殺人等の凶悪犯罪は減っているものの軽犯罪はさほど減っていない。


あの日以降の混乱の中で地域勢力の権力を掴んだのはギャングだったり軍人だったり宗教家だったり政治家だったり色々だけどみんな混乱前にある程度の権力基盤を築いていて人を纏めていた者達だ。

その勢力争いから弾かれた人々は生き残れば新たに纏まって群れを創り勢力争いに再び加わるか北へ向かう難民となった。


勢力争いの激しかった頃は殺し合いも有ったけど二十年以上たった今ではそれなりの秩序を保って落ち着いている。

中には遣り過ぎて人の群れとしての禁忌に触れて潰れた群れも有るけど今は小競り合い程度だ。

それでも勢力争いから弾かれる人々は変わらずいるから北へ向かう難民の数が減る事はない。

そしてメキシコのアメリカ軍が支配する占領地帯に向かうのだ。

アメリカ合衆国から物資の補給は有るし、アメリカ軍の御蔭で他の地域に比べれば治安は良いし、将来的にはアメリカ合衆国に併合されそうだし……






アフリカ大陸は殆どの地域が部族社会に逆戻りしている感じで国として残っているのは南アフリカ等の数ヶ国だけ後は都市部とその周辺が独立勢力として残っている感じだ。

日本との結びつきは薄れているんだけど交易は細々と続いている。

大きな問題となっているのはシナの棄民だ。

アフリカ各地でコロニーを形成していたのだが母国が崩壊した後も好き勝手していたからほぼすべての現地人から拒絶されて襲撃を受けたりして一部が難民と化していた。

二十年以上たった現在ではシナ人のコロニーは数を減らしてはいたが潰れたコロニーから集まったシナ人の難民を吸収して力を増していた。

融和的なコロニーも有る様だけど殆どは現地人と敵対的で周りは敵ばかりだ。

それで益々結束が強くなってコロニーの力だけは増している様だけどそれに比例して周りの敵視は強くなっていく。

まぁ、シナ人の御蔭で部族間の対立が激減している様で悪いことばかりでは無い様だ。






オセアニアでは難民の発生源から遠いこともあって船が流れてくる様なことはないのだがシナ人のコロニーが有って問題になっている。

このコロニーの連中が海外からシナの難民を引き入れているのだ。

法に基づいての話であれば問題はないのだが大抵は不法にである。

以前は観光とかで入国してそのまま居座るのが多かったのだが現在では海外からの観光自体が禁止されているので完全な密入国だな。

シナ人は例によって国籍を取ってもそもそも国に帰属意識なんてものはないので密入国や不法滞在を悪いことだとは思っていない。

金をとって密入国させるのも唯のビジネスなのだ。

彼等にとっては逮捕されても運が悪かったで済ませるレベルの話である。

民族レベルでその感覚でそもそも近代国家とは相いれない文化習慣の持ち主なのだ。

それでオーストラリアやニュージーランドの国内では軋轢が発生しているのだが国をそれ程重要視していない彼等は気にしていない。

そうやってシナの難民は問題の火種の一つとして大きくなっていた。

難民が大量に押し寄せる訳ではないから他の国に比べれば軽く見えるけど当事者なら堪ったものではないな。




シナ人は唯の自己中で部族主義に近く自らの血縁者以外は如何でも良いと考えている奴等だ。

国が何度も潰れても血縁者で寄り添って生き抜いてきた証ではあるけどそのためか彼等は国を群れとして優先してはいない。

シナの歴史を見ると国を優先する思想も有ったはずだけどもう文献の中にしか残ってはいない。

その文献にしてもシナでは支配者に都合が悪かったのか人々が生き延びるのに都合が悪かったのか日本にしか残っていないものも有ったからもうシナ人の文化慣習の中からは消え去っているのだ。

そんな人が残っているにしてもシナでは社会的に不適応者なんだろうな。

そう言えばあの日以前のシナでは日本で日本人の中で暮らしていると馬鹿になると言っていたそうだ。

日本で暮らしていると気が緩むのか騙し騙されが日常のシナでは適応できなくなるらしい。

社会の在り方がそこまで違っていたって事だ。

そしてシナ人の間では魔法技術にしろ科学技術にしろ技術者は未だに一段下に見られているようだ。

今の文明を支えているのは彼等なのにな。

それでは覇権を掴むも何も無理だと思うんだが覇権争いは好きなんだよなシナ人は。

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