54 魔法の兵器利用
北アメリカ・ヨーロッパ諸国・ロシア等の難民を脅威と捉えている地域では満州軍の使ったシールドの効果に注目して研究を始めた様だ。
観戦武官を派遣して実際に観戦できたのはシナ周辺国の満州を承認していた国だけなので殆どの国が入手した戦闘情報は神様情報にある殲滅された朝鮮族側の故人の情報だけだ。
神様情報を解析しただけではまずシールドの復元は不可能だが自国で類似の魔法を開発中もしくは既に開発済みであれば参考になったに違いない。
と言うことは数年内にかなりの国が満州軍と同レベルの戦闘力を保持する可能性が高い。
それらの国々では兵が近代兵器に対して圧倒的な防御力を誇る魔法を身に付ける事になる。
そしてそれは魔法を身に付けた国家間では以前の様な戦争が不可能になることを意味する。
ミサイルは既に魔法によって無効化することが容易となった為に有効な兵器とは言えなくなっていた。
元々ミサイルが視認可能であれば唯の物質には攻撃魔法が効くから対処可能だったがシールドであればさらに対処が容易になる。
銃撃は充分有効とされてきたが満州軍のシールドによってそれも覆った。
以前から弾道を逸らしたりが可能な魔法使いはいたのだがシールドは完全に防いだからな。
これで戦闘形態は著しく変わる。
対人に関しては飛び道具による遠距離攻撃はこの魔法で無効となり白兵戦でも拳銃は通用しない。
対物もシールドを使う兵士がいれば防御可能な筈だから被害は格段に減るだろう。
これで戦闘はほぼ近代以前の刀と槍の時代に逆戻りとなる。
以前、バリアを開発した時に予想した事が現実味を帯びてきたな。
日本でもバリアを使用すればシールドと同等以上の事が可能な筈だが実戦には晒されていないのであくまで想定による訓練の結果でしかない。
満州軍の対朝鮮族戦では魔法技能のレベルが違い過ぎて一方的な展開となったために真面な戦訓は得られていないのだ。
得られたのは現代戦は魔法の修得と鍛錬なしに勝利はないことぐらいだ。
国は魔法により防御力の格段な向上を得たが比べると攻撃力は相対的に下がっている。
これは相手も同等程度の魔法を使えると想定してのことなので朝鮮族等は例外としての話だ。
それで私の研究室では既存の兵器を有効にする方法はないか検討してみた。
攻撃力を上げると言うよりは相手の魔法による防御力を何とか下げれないかと言う検討だ。
防衛省でも当然のこと研究はしているだろう。
世界の誰かが有効な方法を発見しているかもしれないからな。
それで初めに植物の利用を検討してみたんだが……
植物をミサイルに乗せれば攻撃魔法は効かなくなるので一見有効だけどあまりお勧めではないな。
まず植物が生きたままでないと目的の効果は得られないためミサイルの速度はあまり上げれない。
そして植物にとって快適と言える状態を保持しないと魔法を発動しない可能性すらある。
それに状況をあまり不快に感じると植物は魔法を使って対処する可能性大だ。
植物にとって加速度が増すのは明らかに異常事態だから魔法で何をしだすか分からない。
まぁ、これは植物を選別し改良する事で克服可能かもしれない。
戦闘機のパイロットだって適正と訓練で可能となる訳だから克服は可能だろう、たぶん。
それでミサイルに対する攻撃魔法を防ぐ事は可能となったと仮定する。
だけど普通の生物は自身への魔法攻撃と捉えない限りは対応はしないから魔法で兵器を無効化する方法なら他にもある。
ミサイルであれば推進器を停止させるとか推進方向を変えるとか等々。
植物を載せるだけでは不充分と言うことだな。
まぁ、攻撃魔法を防ぐ効果は有るのだから良しとしようか。
植物を弾丸や砲弾に組み入れた場合はどうか?
まず発射時の加速や衝撃に生物の細胞が耐えれるとは思えない。
まぁ、仮にそれらの問題を解決したとしよう。
これで砲弾にも銃弾にも魔法は効かないからシールドも無効だ。
でもそれである程度の効果は期待できるとして問題は全て解決するのか?
兵器としての使用は植物を一度で大量に殺す事になるので普通の生物なら避けようとするよな。
使用後に植物が生き残ることが可能かと言うとまず無理だ。
砲弾は爆破する訳だし弾丸も弾着時には対象を破壊するだけの衝撃が発生する。
まず間違いなく植物は死ぬだろうな、そのままでは死は避けられない。
それで死を避けようとして植物がどうするか?
単純に考えると魔法を使って爆破を防ぐか衝撃の原因となる加速を防ぐ。
それでは兵器として役に立たないから人はそれを止めようする。
人と植物に利害の対立が生じる訳だ。
そのまま研究を進めれば人と植物の間の利害の対立が深まる。
植物だって死にたくはないだろうからな。
死なない方法が有れば対立は解消となるが……無いな。
植物がゲートかバリアを使用すれば生き残る事も可能だとは思うが植物に亜空間系統の魔法を使わせる研究は未だに成功する兆しも無い。
そしてそのまま利害の対立が深まると植物が人を避ける様になり最悪の場合は植物を敵に回す可能性が有る。
植物からすると人を敵にすると言うよりは人と言う災害から身を守ると言った感じなのかもしれないがな。
結果として人は植物の魔法を利用出来なくなる可能性がある。
そこまでして植物を兵器に利用する価値はあるのか?
それで人が植物の魔法を利用出来なくなったら洒落にならない。
日本社会には植物の利用は浸透しているのだ。
一般家庭にまで普及した発電機すら使えなくなる可能性が有る事を進めるのか?
私は植物を載せた兵器試験すら出来得れば止めた方が良いと考えている。
仮に試験で良い結果を出せる様になったとして実戦で使用しても大丈夫なのか?
戦闘初期の植物の死は火事があれば有り得る程度だけど実戦使用した場合その程度では済まないだろうな。
使えば使う程植物を大量に殺す事になる訳だけど植物だって死にたくはないだろう。
そうなると植物が死を避けようとして魔法で爆破を止めたり、飛弾を止めたりする可能性もある。
使えば使う程不発弾が増えて行く可能性があるってことだ。
兵器として使用すると植物は死を避ける為に魔法を使うので品質は安定しない。
そしてその品質は使えば使う程に植物が死を避けようとして悪化する可能性すらある。
これでは兵器としての使用に耐えないからと人は改良を試みる。
がそれは植物の死に繋がる試みだから植物はそれを避けようとする。
それを克服するために人は……
と繰り返すうちに結局は植物を敵に回して植物の魔法を利用出来なくなる可能性がある。
どの様な過程を経るにせよ今のままでは植物の魔法を利用出来なくなる可能性がある。
これでは想定して得られるメリットに比してデメリットが大きすぎる。
少なくとも植物がゲートかバリアを身に付けて確実に死を避けれる様にしてからでないと攻撃兵器への利用は不味いのではないか?
植物以外の他の生物の利用も検討してはみたのだが人と群れを同じくする生物なら群れを守る為にと言った動機付けが出来るから確かに可能だ。
だけどその場合は人もその生物を群れの構成員と感じているのでその大量の殺害に人の精神が耐えれるのかと言ったらまず無理だ。
少なくとも私にはそこまでする必要があるとは思えないから耐えられない。
食用の牛ですら群れの仲間だからと屠殺する人がいなくて培養肉に切り替わったのだから大半の人は耐えられない。
自衛官にしても敵を殺すのは自分の群れを守る為だから平気なだけで自分の群れを守る為とは言え群れの仲間を大量に殺すとなるとかなりきつい話だ。
武器を造ったとして使えるのかと言った話でもある。
それに日本の現状がそこまで切羽詰まった状況とは思えない。
まぁ、できるなら止めた方が良いよな。
そう言った訳で植物にしろ動物にしろ兵器利用は止めた方が良いと私は考えている。
でも他の勢力が同じ様に考えるとは限らない。
シナ人は可能であれば気にせずに使うよな。
奴等は人でも下と判断したら奴隷扱いだ、他の生物種なんて初めから奴隷としか見ていない。
アメリカ合衆国はどうだろう。
あそこは放って置いたら分裂しそうなのをアメリカ軍が纏めている国だ。
元々異文化間のせめぎ合いが激しい、中にはシナ人同様に動く者もいるだろうな。
……日本は実用化はしないまでも研究は進めないといけないだろうな。
「生物の生体魔法回路に魔法を組込んだりそれを調整したりはその生物と信頼関係を築かないと不可能なのだがシナ人の様に生物を奴隷扱いして兵器利用が可能なのか?」との疑問は残る。
だけどそれを理由に何もしないでいて良いかと言う話でもない。
何かあってからでは遅いのだから。
植物の利用で核ミサイル等の核兵器が再び利用可能になるかもとの懸念もあった。
大量生産や大量消費は困難でも少量なら可能ではと考えた訳だな。
だが日本の研究者の多くは成功しないと考えている。
植物は魔法を使える、そして核兵器は魔法で無効化出来る、そして植物は核兵器を無効化可能だ。
色々な懸念を抱いた日本の研究者が植物の生体魔法回路に色々と組み込み済みだからな。
日本では既に植物の魔法を利用して核反応の制御も可能になっている。
これは核暴走の防止用なので核兵器に対しても同様に働いて臨界反応を止める事が可能だ。
植物の単体で可能な魔法は植物本来の魔法(植物群や植物種が行使する魔法)でも使用可能だから今の植物が核兵器による攻撃を受けた場合は魔法で無効化すると日本の研究者は考えている。
核爆発は人が地球で過去に何度も核実験を行っているから植物は体験済みだし、近年では中華人民共和国による核テロへとその報復として行われたアメリカによるシナでの核爆発があった。
この時点で核爆発の無効化が起きなかったのは植物がその魔法を知らなかっただけの話である。
でも現在は知っているから地球上では植生の豊かな地域ほど核ミサイル等からは守られている筈だ。
仮に核ミサイルに植物を搭載してもその搭載された植物が核爆発を防ぐだろうな。
それでも魔法による自爆核テロを防ぐことは困難なので核物質の管理は厳重な必要がある。
ああそうか人をミサイルに載せれば核ミサイルも可能になるのか自爆覚悟なら可能だな。
日本は核兵器を持っていないけど他国がバリアを使える様になったら……
態々ミサイルに乗らなくても以前考えた様にアイテムボックスに入れて持ち込めば……
それに考えてみたら転移すれば逃げる事も可能だしバリアを使えれば死なずに済むから自爆の必要はないな。
ゲートやバリアが使えればの話だけど。
それに考えてみたら植物や人の代わりに犬を核ミサイルに載せれば何とかなりそうだ。
防衛力強化の一環としてうちの研究室では農学部と共同で犬にバリアを習得させた。
重要施設の防衛に利用できないかと考えての事だ。
核施設等には犬を配備しているけどその効果の向上を図っていた。
ゲートを使用可能な使い魔は確認されていたがバリアを使用可能な使い魔は未確認だったので犬の生体魔法回路にバリアの魔法回路を組込んで訓練している。
現状では自衛隊には採用されているけどそれ以外の採用は皆無だな。
犬の訓練が大変で組織的に纏めて育てても費用が嵩む為、必要に迫られた自衛隊しか採用しなかった。
犬に鍛錬させて魔法技能の向上を図るのはかなり手間なのだ。
それで自衛隊で訓練ノウハウが積み上がってから普及させる予定で動いている。
ただ魔法を使うとなると犬の適正が最重要となる為、数を揃えるのが一番困難なようだ。
普及させるには犬の繁殖や品種の改良が必要なのでまだ当分先の話になりそうだな。
でも少数ならバリアを使える犬を用意してミサイルに載せる事は可能なんだ。
使い魔なら転移で戻す事も可能だから繰り返し使用可能だし。
ただ魔法によって核兵器は以前ほど有効な兵器では無くなっているから検討は必要だ。
搭載した犬を無事に返せる手段は有るが同等の方法を用いれば被害も減らせる。
日本ならバリアを発動すれば防御は可能だし転移で逃げる事も可能だ。
通常の核兵器は破壊対象から距離をとって爆破させる事で損傷させる兵器だから放射線や残留放射能以外は唯の大きな爆弾だ。
距離をおいたら長距離攻撃と同じでバリアを使えば防げるし今では魔法で残留放射能も除去可能となったし連鎖反応を魔法で抑える事も可能となった。
爆発の状況によって建造物等の被害は出るだろうけど以前ほど有効な兵器ではないな。
あくまで対処する魔法を使えればの話だけど。
普通のミサイルに犬を搭載すれば対象の破壊は出来そうだけど犬の数を揃えれそうにないし小型ミサイルにはそもそも搭載が不可能だ。
核ミサイルにせよ通常のミサイルにせよ費用に見合った効果は期待できるのか?
なんかバリアを使える犬には戦闘訓練をした方がよっぽど有効に使える気がする。
……防衛省には報告しておこうか、既に誰かが思い付いて検討を始めていそうだけど。
日本では植物の代わりになり得るものとして科学技術的に機械に魔法を使わせることが出来ないか研究している。
これならミサイルに搭載可能で植物も犬も使う訳ではないから気にする必要はない。
だが今の所はこれと言った成果は挙がっていない。
日本ではの話なので国外では何らかの成果が挙がっている可能性は有るがどうなんだろう?
成功したら植物より制御はし易い筈だけど生物の意志なしで魔法が発動するのか?
生物の意志なしで魔法が発動する現象は今の所は確認されていない。
生体魔法回路に組み込んだ魔法も効果の保持は出来るけど最初の発動は意志なしでは不可能だ。
生体細胞と組み合わせれば何とかなるかもと研究している人はいるけどそれで機械に魔法を使わせたことになるのだろうか?
まぁ、植物の様に利用可能になれば研究の目的は達成するし、それはそれで良いのか。
だがこれも今の所はこれと言った成果は挙がっていない。
どちらにせよ魔法技術だけでは成り立たない技術となるので既存の技術の応用で済まない場合には成果を挙げるのに時間が掛かりそうだ。




