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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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235話 世界図書館

かつて世界は無知によって苦しんでいた。


貧困村では文字を学ぶ余裕すらなかった。


病が流行れば治療法は失われる。


職人が死ねば技術も消える。


農民が死ねば農法も失われる。


教師が存在しなければ知識は継承されない。


それが長い歴史の中で繰り返されてきた。


しかし今。


世界は変わった。


全世界人口は百五十億人を超えている。


食料充足率は百三十パーセント。


識字率は限りなく百パーセントに近づいていた。


教師数は百五十億人。


教導スキル覚醒者も百五十億人。


火、水、風、土、光、闇、重力、雷、地震、空間、金属。


十一属性以上の魔法覚醒者が百五十億人を超える。


かつて存在しなかった規模の文明が形成されていた。


農業革命。


紡織産業革命。


教育革命。


魔導具革命。


数え切れない変革が積み重なり、世界は新たな段階へ到達していた。


そして。


今度は知識を守る時代が始まる。


巨大な会議場。


そこには世界中の代表者たちが集まっていた。


セリナ。


ソフィア。


カタリナ。


ロバート。


トミー。


マイケル。


エルナ。


ミシェル。


エレノア・グランディア侯爵。


リーヴ。


ティグリス。


バルド。


グラン。


リリー。


リーン。


マーガレット・ヴァレリア。


アリア。


マリン・アルベルト女王。


セレンスキー王。


ルミナ。


オルカ。


ガルシャ。


さらに世界中の教師。


研究者。


学者。


職人。


農民。


医師。


芸術家。


数万人規模の代表者が集結していた。


議長席に立ったマイケルが静かに語る。


「皆さん。」


「本日は世界図書館計画について話し合います。」


会場が静まり返る。


巨大な魔導映像が空中へ映し出された。


そこに現れたのは。


無数の本。


農業書。


医学書。


薬学書。


建築書。


歴史書。


魔法理論書。


超能力研究書。


紡織技術書。


ありとあらゆる知識だった。


「これらを失ってはいけません。」


マイケルは続ける。


「病は減りました。」


「飢餓も減りました。」


「しかし知識が失われれば文明は後退します。」


誰も反論しない。


歴史が証明している。


戦争。


災害。


疫病。


王朝交代。


人類は何度も知識を失ってきた。


アリアが頷く。


「千年前の文明にも優れた技術はありました。」


「ですが継承されなかった。」


「だから消えたのです。」


セリナも続く。


「知識は武器ではありません。」


「知識は共有財産です。」


会場から大きな拍手が起こった。


その日。


世界図書館建設計画が正式承認される。


世界各地へ巨大図書館を建設する。


さらに全ての知識を複製する。


紙。


石版。


金属板。


魔導結晶。


念写記録。


複数の媒体へ保存する。


知識の消失を許さないためだった。


魔力操作。


魔力循環。


魔力吸収。


実質無限魔力理論。


病の治療法。


農業革命の歴史。


貧困村から始まった再生の記録。


全てが保存される。


数年後。


世界図書館は完成した。


それは国家を超えた施設だった。


誰でも利用できる。


種族も関係ない。


人間。


獣人。


魔族。


エルフ。


ドワーフ。


ダークエルフ。


海洋種族。


ドラゴン。


悪魔。


全ての者に開かれている。


世界中の子供たちが学び始めた。


読み書き。


計算。


農業。


工業。


芸術。


魔法。


超能力。


識字率はついに百パーセントへ到達する。


文字が読めない者は存在しなくなった。


その時。


エルナが微笑みながら言った。


「知識は守れました。」


「次は何を守りますか?」


会場が静かになる。


しばらくして。


マーガレットが手を挙げた。


「楽しさじゃないかしら?」


その一言で空気が変わる。


生きるだけの時代は終わった。


飢えない。


病で死なない。


学べる。


働ける。


ならば次は何か。


答えは簡単だった。


人生を楽しむことである。


そこから始まった。


人類史上最大の娯楽開発会議。


演劇。


音楽。


物語。


絵画。


祭り。


競技。


料理。


旅。


笑い。


芸術。


ありとあらゆる娯楽が議論された。


バルドは酒祭りを提案する。


グランは料理祭典を提案する。


ミシェルは空中競技会を提案する。


ルミナは海中劇場を提案した。


オルカは海上競技祭。


ガルシャは世界商業博覧会。


芸術家たちは演劇祭を提案する。


吟遊詩人たちは世界音楽祭を提案する。


世界中の知恵が集まり始めた。


知識を守る文明から。


楽しさを創る文明へ。


世界は新しい段階へ進み始めていた。


環境が人を育てる。


その言葉は今も変わらない。


かつて貧困村だった場所から始まった教育は。


ついに百五十億人が知識を学び。


百五十億人が未来を創る時代へ到達したのである。







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