233話 旅行革命(前編)
異界歴八年。
人口五十億人以上。
食料充足率百三十パーセント。
教師数五十億人以上。
教導スキル保持者五十億人以上。
農業革命。
紡織産業革命。
医療革命。
酒造革命。
芸術革命。
食文化革命。
数々の変革を経た異界は、新たな時代へ突入していた。
それは戦争の時代ではない。
開拓の時代でもない。
交流の時代だった。
旅行革命。
その始まりである。
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PEAO。
平和経済発展協力機構。
かつては食料支援。
教育支援。
医療支援。
技術交流を目的とした組織だった。
しかし加盟国が増え続けるにつれ、新しい課題が生まれていた。
「お互いを知らない。」
豊かな国もある。
海の国もある。
砂漠の国もある。
山岳国家もある。
しかし実際に訪れた者は少ない。
知識はある。
映像もある。
魔導具で記録された映像は世界中へ広がっている。
それでも実際に見てみたい。
実際に食べてみたい。
実際に会ってみたい。
そんな声が増えていた。
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PEAO本部。
巨大会議場。
各国代表が集まっている。
サンナ・マリン王国。
セレンスキー王国。
海洋連盟。
アクアマリナ。
ネプトリア。
ドラゴン領。
悪魔領。
各地域代表が参加していた。
議題は一つ。
観光産業。
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トミーが説明する。
巨大地図が映し出される。
「人は交易だけで動くわけじゃない。」
商人たちが頷く。
「食べたい。」
「見たい。」
「遊びたい。」
「学びたい。」
「それも立派な需要だ。」
会議場が静かになる。
そして理解する。
確かにその通りだった。
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旅行産業育成計画。
可決。
全会一致だった。
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最初に整備されたのは転移拠点だった。
異界中央都市。
アクアマリナ。
ネプトリア。
サンナ・マリン王国。
セレンスキー王国。
主要都市を巨大転移門で結ぶ。
教師たちが運営する。
治安維持部隊も配置される。
旅行者は安心して移動できる。
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続いて宿泊施設。
宿屋。
温泉施設。
高級旅館。
長期滞在型住宅。
教育施設併設型ホテル。
様々な宿泊施設が建設される。
建築教師。
土木教師。
職人。
魔導具技師。
全員が協力する。
都市は急速に観光都市へ変貌していった。
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最初に人気となったのは海洋都市アクアマリナだった。
海が美しい。
魚介が美味しい。
海獣ショーもある。
巨大水族館もある。
観光客は感動した。
「海ってこんなに広いのか。」
山岳地帯出身の子供たちは目を輝かせる。
海を見たことがなかった。
だから感動する。
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海洋料理街。
海鮮餃子。
クラーケン焼き。
巨大魚ステーキ。
海鮮ラーメン。
魚介まん。
どこも大行列だった。
ルミナは笑う。
「観光客が去年の十倍ですね。」
商人たちは歓喜した。
漁師も潤う。
料理人も潤う。
宿屋も潤う。
観光は産業だった。
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一方。
海底都市ネプトリア。
ここも爆発的人気を誇る。
海中都市。
巨大透明ドーム。
海中庭園。
魚群が泳ぐ街並み。
観光客は息を呑む。
「夢みたいだ。」
誰もが同じ感想を漏らす。
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クラーケン餃子本店。
テンタクルまん本店。
巨大水槽劇場。
どこも満席だった。
芸術家たちも集まる。
画家。
音楽家。
吟遊詩人。
創作者。
皆が刺激を受ける。
旅行は文化を育てる。
それが証明されていた。
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そして。
異界そのものも大人気だった。
かつて五十億人が移住した巨大世界。
農業革命の象徴。
教育革命の象徴。
人材国家の象徴。
世界中の人々が見学に訪れる。
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広大な小麦畑。
巨大農場。
ゴーレムトラクター。
ゴーレム収穫機。
自動灌漑設備。
初めて見る者は圧倒された。
「何だこれは。」
「国家規模じゃない。」
「大陸規模だ。」
案内教師は微笑む。
「教育の成果です。」
その一言が全てだった。
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農業体験ツアーも人気だった。
子供たちが畑を耕す。
種を蒔く。
収穫する。
パンを焼く。
餃子を作る。
旅行者たちは楽しそうに笑う。
学びながら遊ぶ。
それが異界流の観光だった。
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さらに人気となったのは餃子街だった。
オーク餃子。
海鮮餃子。
ボア餃子。
クラーケン餃子。
テンタクル餃子。
観光客は食べ比べを始める。
そして必ず議論になる。
「どこが一番美味い?」
その議論は国境を越えた。
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旅人たちは酒場で語り合う。
ドラゴン領出身。
海洋連盟出身。
セレンスキー王国出身。
サンナ・マリン王国出身。
出身地は違う。
しかし話題は同じ。
料理。
芸術。
観光。
文化。
平和だった。
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かつて世界は恐怖で繋がっていた。
戦争。
略奪。
飢餓。
病。
貧困。
しかし今は違う。
人々は旅行で繋がる。
交流で繋がる。
文化で繋がる。
そして。
この旅行革命はさらに大きな変化を世界へもたらしていく。
それは異界人が外界へ旅立つことで始まるのだった。




