表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

271/290

232話 包む文化(前編)

異界歴七年。


人口五十億人。


食料充足率百三十パーセント。


農業革命は成熟期へ到達していた。


小麦。


大豆。


野菜。


果実。


香辛料。


家畜。


魚介。


それらはもはや不足する資源ではない。


教育を受けた農民。


教導スキルを持つ教師。


魔力操作。


魔力循環。


そして各地に広がった生産技術。


かつて貧困村で飢えに苦しんだ人々は、今では世界最大級の食料生産文明を築いていた。


しかし人々は満足しない。


豊かになれば新しい工夫が生まれる。


新しい料理が生まれる。


新しい文化が生まれる。


その中心となったのは、小麦だった。


---


異界中央調理研究都市。


巨大な料理研究施設。


そこには料理人。


農業教師。


発酵職人。


製粉職人。


無数の人材が集まっている。


研究テーマは単純だった。


「もっと持ち運びやすく。」


「もっと保存しやすく。」


「もっと美味しく。」


その答えを最初に見つけたのは若い料理人だった。


彼は麺を作っていた。


パスタ。


うどん。


ラーメン。


どれも成功した。


しかしある日。


彼は余った生地を眺めながら呟く。


「包めばいいのでは?」


それが始まりだった。


---


最初に作られたのは肉餅だった。


小麦粉。


挽肉。


香辛料。


野菜。


全てを混ぜる。


生地で包む。


焼く。


鉄板でじっくり火を通す。


香ばしい香り。


肉汁。


外はカリッと。


中はジューシー。


試食会。


職人たちは目を丸くした。


「美味い。」


「食べやすい。」


「持ち運びも楽だ。」


「保存性も高い。」


瞬く間に広まった。


市場で売られる。


学校で出される。


旅人が携帯する。


兵士も持ち歩く。


肉餅文化が誕生した。


---


しかし料理人たちは止まらなかった。


焼くだけではない。


蒸す方法も研究される。


発酵技術。


酵母。


パン文化。


それらを応用する。


ふわふわの生地。


柔らかい皮。


そこへ挽肉を包む。


巨大蒸し器。


蒸気魔法。


水属性魔法。


職人たちは改良を続けた。


そして完成する。


饅頭。


肉まん。


豚まんに近い料理だった。


最初の試食会。


エルナは静かに一口食べる。


柔らかい。


温かい。


優しい味。


病人でも食べられる。


老人でも食べられる。


子供も喜ぶ。


治療院は即採用した。


学校給食も採用した。


異界中へ広がる。


---


やがて具材は多様化していく。


オーク肉。


ボア肉。


魚介。


野菜。


発酵食品。


チーズ。


様々な組み合わせが誕生する。


最初に人気になったのはオークまんだった。


オーク肉。


醤油。


大蒜。


胡椒。


少量の味醂。


それらを混ぜる。


生地で包む。


蒸す。


完成。


酒場街で爆発的な人気を獲得した。


職人たちは昼食に食べる。


農民たちは畑へ持っていく。


市場では長蛇の列ができる。


---


続いてボアまん。


脂の甘みが特徴だった。


チーズとの相性も良い。


若者たちは夢中になった。


「ボアまん最高!」


「いやオークまんだろ!」


市場では論争まで起きる。


しかし誰も怒らない。


平和な論争だった。


---


海洋都市ではさらに別の進化が起きる。


魚介まん。


海老。


貝。


魚肉。


海洋連盟の料理人たちが研究した。


魚醤。


香草。


胡椒。


組み合わせる。


蒸す。


完成した魚介まんは大ヒットした。


港町では朝食の定番になる。


漁師たちも絶賛した。


---


さらに海底都市ネプトリア。


そこで研究されたのがクラーケンまんだった。


巨大クラーケン。


その柔らかな足肉。


旨味が強い。


食感も良い。


料理人たちは歓喜した。


細かく刻む。


挽肉状にする。


香辛料を加える。


包む。


蒸す。


完成。


予想以上の人気だった。


「これは美味い。」


「海鮮より好きかもしれない。」


観光客まで押し寄せる。


ネプトリア名物になった。


---


やがて異界の人々は気付き始める。


包む。


それだけで料理の可能性が無限に広がることに。


肉を包む。


魚を包む。


野菜を包む。


発酵食品を包む。


保存しやすい。


運びやすい。


食べやすい。


文明向きだった。


そして。


さらに大きな革命が静かに始まっていた。


ある料理人が肉餅を見ながら呟いた。


「もっと小さくしたらどうだろう。」


その発想が。


後に異界全土を巻き込む。


餃子革命の始まりとなる。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ