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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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221話 PEAO 前編

海洋連盟との交流を終えた世界は、静かに変わり始めていた。


かつて世界を覆っていた貧困。


病。


盗賊。


奴隷商。


傭兵崩れ。


それらは完全には消えていない。


しかし確実に減っていた。


アルカディア連邦。


サンナ・マリン王国。


セレンスキー連合。


海洋連盟。


そして百を超える同盟国家。


教育が広がるほど、人は変わる。


環境が変わるほど、国も変わる。


今や世界各地で学校が建ち始めていた。


治療院が建ち始めていた。


農地が増えていた。


紡織産業が育っていた。


食料不足だった国々も徐々に自立し始めていた。


そんな中。


世界規模の新組織が誕生した。


PEAO。


平和。


教育。


農業。


機会均等。


それらを目的とする国際機関だった。


本部は中立都市に置かれた。


参加国は百二十七ヵ国。


歴史上最大規模の国際組織である。


朝。


巨大会議場に各国代表が集まっていた。


エミリーが腕を組む。


「百二十七ヵ国か。」


「凄い数になったな。」


隣ではロバートが笑う。


「昔はアルナ村だけだったんだがな。」


周囲も苦笑する。


確かにそうだった。


最初は貧困村だった。


病人だらけだった。


食料もなかった。


盗賊に怯えていた。


そこから始まった。


農業革命。


紡織産業。


教育。


治療。


物流。


そして国家。


今や人口二十五億人。


教師二十四億五千万人。


教導スキル覚醒者二十四億人。


かつて誰も想像できなかった世界である。


その会議場へ二人の女性が現れた。


エレノア・グランディア侯爵。


そしてアリア。


周囲が静まり返る。


エレノアは堂々と歩いていた。


若返った肉体。


美しい銀髪。


威厳ある瞳。


かつて奴隷制度に反対し続けた老侯爵だった女性である。


一方のアリアは相変わらずだった。


年齢不詳。


種族不明。


百年以上研究を続ける魔女。


知識の塊。


歩く図書館と呼ばれる存在だった。


会場中央。


議長席へ向かう。


各国代表が起立する。


拍手が起こった。


長く続く。


それだけの功績があった。


エレノアが静かに口を開く。


「本日より。」


「私はPEAO職員として働きます。」


会場から拍手が起こる。


続いてアリアが前に出た。


「私も同じ。」


「研究者として協力する。」


簡潔だった。


しかしその一言の重みは大きい。


百年以上積み上げられた知識。


失われた技術。


魔法理論。


農業理論。


医療理論。


それらがPEAOへ提供されることになる。


その後。


アルカディア連邦代表団が発表を行った。


セリナが壇上へ上がる。


冷静な表情だった。


「アルカディア連邦は。」


「十万人の職員を派遣します。」


どよめきが起こった。


十万人。


一国の官僚機構に匹敵する規模だった。


しかしアルカディア連邦では珍しくない。


教師は二十四億五千万人。


教導スキル覚醒者二十四億人。


教育を受けた人材は無数にいる。


だからこそ可能だった。


「内訳を説明します。」


セリナが資料を表示する。


農業教師。


治癒教師。


物流教師。


建築教師。


魔法教師。


索敵教師。


行政教師。


紡織教師。


商業教師。


各分野の専門家が並んでいた。


それを見た各国代表は驚きを隠せない。


「信じられない。」


「教師だけで十万人なのか。」


「これほどの人材を派遣できる国があるのか。」


驚くのも無理はない。


かつて世界は逆だった。


人材が足りなかった。


教育がなかった。


だから貧しかった。


だから病が広がった。


だから盗賊が生まれた。


だから奴隷商が栄えた。


今は違う。


教育が人を育てる。


人が国を育てる。


その循環が始まっていた。


会議後。


休憩室。


トミーが各国商人たちと話していた。


「面白いな。」


「最近は物流の相談ばかりだ。」


笑いながら言う。


以前は違った。


武器。


傭兵。


防衛。


そういった相談が多かった。


今は農産物の輸送。


織物の取引。


市場価格。


在庫管理。


流通網。


平和な相談ばかりである。


トミーはそれが嬉しかった。


「戦争より商売の方が儲かる。」


「みんな気づいたんだ。」


商人たちも頷く。


それが現実だった。


争うより交流した方が利益になる。


略奪するより交易した方が豊かになる。


教育を受ければ誰でも分かる話だった。


だから世界は変わった。


同じ頃。


治療部門ではエルナが忙しく働いていた。


各国から治癒師が集まる。


情報交換が行われる。


新しい治療法。


病の予防。


衛生教育。


どれも重要だった。


「昔は病で村が滅んでいました。」


若い治癒師が語る。


エルナは優しく頷く。


「私たちも同じでした。」


「だから学び続けましょう。」


その言葉に多くの治癒師が頷いた。


知識は命を救う。


教育は命を救う。


それを皆理解していた。


窓の外には巨大な都市が広がっている。


各国の人々が行き交う。


人族。


獣人。


魔族。


エルフ。


ドワーフ。


ダークエルフ。


海洋種族。


様々な種族が歩いていた。


誰も驚かない。


誰も差別しない。


交流が当たり前になったからだ。


そして世界はさらに変わろうとしていた。


百二十七ヵ国。


数十億人。


人材交流。


教育交流。


農業支援。


医療支援。


物流支援。


PEAOは急速に成長していく。


かつて世界を支配していたのは恐怖だった。


今は違う。


教育だった。


その夜。


PEAO本部の屋上でエレノアとアリアが夜景を見ていた。


無数の灯りが広がる。


平和の灯だった。


エレノアが微笑む。


「良い時代になりましたね。」


アリアも珍しく頷く。


「まだ途中。」


「でも前進している。」


それは事実だった。


世界から争いが消えたわけではない。


貧困も残る。


病も残る。


それでも。


確実に減っている。


人々は未来を見始めていた。


そしてPEAOはその未来を支える新たな柱となっていくのだった。







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