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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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197話 紡織都市 農業都市

大学都市。


病院都市。


研究都市。


魔導具都市。


工業都市。


アルカディア連邦は次々と専門都市を生み出していた。


そして今。


新たな建設計画が始まろうとしていた。


会議場の巨大な円卓には各都市の代表が集まっている。


セリナが地図を広げた。


「次は生活そのものを支える都市よ」


静まり返る会議場。


彼女は二つの場所を指差した。


「紡織都市」


「農業都市」


その言葉に多くの者が頷いた。


どれだけ強大な国家になっても。


どれだけ魔法が発展しても。


人は食べなければ生きられない。


衣服がなければ暮らせない。


文明の土台。


それこそが農業と紡織だった。


リーザが立ち上がる。


「ようやくですね」


リーブも笑う。


「私たちの出番です」


リーゼは大きく頷いた。


三人は既に紡織産業の中心人物となっていた。


かつては流浪のエルフ。


今では数億人の職人を育てる教師だった。


建設は即座に始まった。


農業都市。


その規模は過去最大だった。


広大な平原。


巨大な水路。


無数の貯水池。


地下水脈。


灌漑施設。


風属性魔法による気流制御。


水属性魔法による散水。


土属性魔法による土地改良。


研究都市で生まれた技術が全て投入される。


農業都市の中心には巨大な農業研究区画も設置された。


品種改良。


病害研究。


保存技術。


肥料開発。


新作物開発。


全てが教育と結び付いている。


若い農民たちが学ぶ。


教師が教える。


経験が蓄積される。


環境が人を育てる。


ケルナインが残した思想は今も生きていた。


農業都市完成から一年。


驚異的な成果が現れる。


穀物生産量二倍。


野菜生産量三倍。


果樹生産量四倍。


家畜生産量二倍。


保存技術の向上で廃棄率は激減した。


巨大倉庫には食料が積み上がる。


冷蔵魔導具。


冷凍魔導具。


輸送用魔導車。


物流網。


全てが連動している。


トミーは倉庫群を見上げた。


「これだけあれば飢饉なんて起きねぇな」


実際その通りだった。


食料充足率は既に一五〇〇%を超えている。


それでも増産は続く。


理由は単純だった。


余剰食料は人を育てる。


教師を育てる。


研究者を育てる。


職人を育てる。


教育には余裕が必要だからだ。


農業都市では新しい職業も生まれていた。


農業教師。


品種改良師。


灌漑技師。


土壌分析師。


農業研究者。


かつて農民と呼ばれていた人々は今や高度専門職となっている。


マイケルは若い農業教師たちを見て微笑んだ。


「昔なら考えられませんでしたね」


「農業が学問になるなんて」


隣のエルナも優しく頷いた。


「食べることは生きることですから」


その言葉に周囲の教師たちも頷いた。


そして。


もう一つの都市。


紡織都市。


こちらもまた凄まじい発展を見せていた。


広大な綿花畑。


麻畑。


羊毛牧場。


絹糸工房。


染色工房。


織物工房。


服飾工房。


研究施設。


教育施設。


無数の工房が並んでいる。


中心に立つのはリーザだった。


彼女は巨大な工房を見渡しながら言う。


「服は贅沢品じゃない」


「生活そのものです」


その理念は都市全体に浸透していた。


品質。


耐久性。


機能性。


そして大量生産。


全てを両立させる。


研究都市で開発された魔導織機も導入された。


従来の数十倍の速度。


品質も安定。


しかし職人の価値は失われない。


むしろ高まった。


単純作業が減った分。


職人たちはより高度な技術へ挑戦できる。


新素材。


新織物。


新技法。


新染色。


創造力が解放されていく。


リーゼが新しい布を掲げる。


光属性繊維。


風属性繊維。


水属性繊維。


特殊な魔力を蓄積する新素材だった。


魔導具都市とも連携する。


服そのものが魔導具になる。


寒冷地用。


砂漠用。


医療用。


戦闘用。


研究用。


用途は無限に広がっていた。


リーンも紡織都市に研究所を構えていた。


薬草繊維。


治癒繊維。


抗菌繊維。


医療分野との融合研究である。


病院都市との連携も進む。


患者用衣服。


治療補助具。


医療寝具。


全てが進化していく。


産業同士が結び付く。


教育がそれを支える。


教師が知識を広める。


だから発展が止まらない。


やがて紡織都市には世界中から人が集まるようになった。


職人。


研究者。


農民。


商人。


冒険者。


移民。


多種多様な人々。


かつては貧困に苦しんでいた者も多い。


盗賊に村を焼かれた者。


奴隷商に家族を奪われた者。


飢えに苦しんだ者。


病で家族を失った者。


そんな人々が新しい人生を歩んでいた。


働く場所がある。


学ぶ場所がある。


成長できる環境がある。


それが人を変えていく。


ロバートは都市を見下ろしながら呟いた。


「結局よ」


「人は育つ場所があれば強くなるんだな」


彼の言葉にエミリーが頷く。


狼獣人の将軍は今や数千万規模の軍を率いている。


しかし彼女も知っていた。


強さは戦場だけでは生まれない。


畑でも。


工房でも。


学校でも。


病院でも。


人は強くなれる。


夕暮れ。


農業都市では黄金色の麦畑が風に揺れていた。


収穫を終えた農民たちが笑っている。


子供たちが走り回る。


教師が農業を教えている。


研究者が新しい品種を試している。


紡織都市では無数の灯りが輝いていた。


工房の音。


織機の音。


職人たちの声。


完成した衣服を喜ぶ人々。


全てが生きている。


全てが繋がっている。


農業都市が命を支える。


紡織都市が生活を支える。


病院都市が健康を支える。


大学都市が知識を支える。


研究都市が未来を支える。


工業都市が技術を支える。


魔導具都市が利便性を支える。


その中心にあるのは人だった。


人材こそ国家。


その理念は今や誰も疑わない。


人口十四億人。


教師十三億五千万人以上。


教導スキル覚醒者十三億人以上。


覚醒者十三億人以上。


巨大国家となったアルカディア連邦。


それでも本質は変わらない。


かつての貧困村と同じだった。


学び。


働き。


支え合う。


その積み重ねが国を作る。


農業都市と紡織都市の完成は新たな時代の始まりだった。


人が育つ環境はさらに増える。


教育はさらに広がる。


文明はさらに進歩する。


そしてアルカディア連邦は今日も前へ進み続ける。


誰か一人の英雄ではなく。


育った人々自身の力によって。







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