表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

219/290

193話 大学都市

旧キンペイ帝国南部。


病院都市が完成してから数か月。


アルカディア連邦の発展は止まらなかった。


広大な新領土。


かつては荒れ果てた土地だった場所に、今では街道が走り、転移門が繋がり、農地が広がり、人々が暮らしている。


人口は十二億人。


食料充足率は一五〇〇%を超えていた。


飢餓は存在しない。


病による大量死も存在しない。


盗賊も奴隷商も消えた。


外敵もほぼ姿を消している。


だが、アルカディア連邦の指導者たちは満足していなかった。


病院都市中央会議場。


巨大な円卓を囲み、多くの代表者たちが集まっていた。


セリナ。


エルナ。


マイケル。


トミー。


ガイル。


リーン。


アリア。


各分野を代表する人材たちである。


セリナが口を開いた。


「病院都市は順調に機能している」


全員が頷く。


巨大病院都市。


巨大薬草農園。


巨大研究施設。


巨大教育施設。


全てが稼働していた。


「問題は次よ」


セリナは広げられた地図を指差した。


新領土中央部。


広大な平原だった。


「治療する場所はできた」


「研究する場所も増えている」


「でも専門家を育てる場所が足りない」


その言葉にアリアが笑った。


「ようやく気付いたのですね」


「教育ですか」


「そう」


セリナは即答した。


「人材を育て続けなければ文明は止まる」


会議室が静かになる。


誰も反論しない。


全員が理解していた。


アルカディア連邦がここまで発展した理由。


それは資源ではない。


土地でもない。


軍隊でもない。


人材だった。


教育だった。


エルナが微笑む。


「大学ですね」


セリナも頷く。


「そう」


「大学都市を建設する」


会議室がざわめいた。


その日のうちに計画は承認された。


数日後。


新領土中央部。


巨大な平原に数千万の建築部隊が集結した。


エミリー率いる警備部隊。


ロバート率いる統率部隊。


ガイル率いる建築部隊。


転移門から次々と資材が運ばれてくる。


鉄。


石材。


木材。


ガラス。


レンガ。


全てが無限に近い勢いで供給されていた。


ガイルが大声を上げる。


「基礎工事開始!」


数百万の土属性魔法使いが動いた。


大地が震える。


巨大な整地が始まる。


土が動く。


石が並ぶ。


地盤が固められる。


数時間後。


本来なら数年かかる作業が終わっていた。


続いて建築。


巨大な石柱が立つ。


壁が生まれる。


屋根が形成される。


無数の建物が一斉に姿を現していく。


建築とは芸術だった。


建築とは知識だった。


そして建築とは教育だった。


数日後。


巨大講義棟が完成した。


何十万人でも収容可能な超大型講義施設。


魔法映像投影設備。


音響設備。


魔法通信設備。


全てが備えられている。


さらに建設は続く。


図書館。


研究棟。


学生寮。


教員宿舎。


大食堂。


公衆浴場。


商業区画。


公園。


街路樹。


上下水道。


巨大な都市が少しずつ姿を現していった。


その光景を見ながらエルナは呟く。


「すごいですね」


隣にいたマイケルも頷いた。


「昔は本なんてありませんでした」


「勉強したくてもできなかった」


エルナは静かに微笑む。


彼女もまた貧しい時代を知っている。


学びたくても学べない。


病気になっても治せない。


そういう世界だった。


今は違う。


学びたい者が学べる。


努力した者が成長できる。


そんな環境が整いつつあった。


建設開始から一か月。


大学都市は完成した。


巨大な正門。


そこには大きな文字が刻まれていた。


アルカディア中央大学。


その名前を見た人々は足を止める。


圧倒される。


巨大だった。


広大だった。


美しかった。


大学都市全体が一つの国家のようだった。


中央広場。


開校式典が行われていた。


数千万人が集まっている。


若者。


職人。


教師。


農民。


兵士。


治癒師。


商人。


あらゆる人々がいた。


セリナが演壇へ上がる。


静寂。


誰もが耳を傾ける。


「アルカディア中央大学を開校します」


大歓声。


広場が揺れる。


セリナは続けた。


「ここは特権階級の学校ではありません」


「努力する人間の学校です」


再び歓声。


「種族も関係ありません」


「出身も関係ありません」


「貧しいかどうかも関係ありません」


「学びたい者は学ぶ」


「それだけです」


拍手が鳴り響いた。


長い拍手だった。


続いて各学部の発表が行われる。


魔法学部。


農業学部。


紡織学部。


鍛冶学部。


商業学部。


建築学部。


行政学部。


治癒学部。


教導学部。


さらに研究課程。


専門課程。


職人育成課程。


教師養成課程。


様々な学びの場が整備されていた。


トミーは商業学部を見て笑った。


「面白くなりそうだな」


商売もまた技術である。


経験だけでなく理論も重要だった。


ガイルは鍛冶学部を見上げる。


「職人が増えるぞ」


職人の教育。


それは文明を加速させる。


リーンは薬学研究棟を見つめていた。


「もっと薬を作れる」


知識は積み上がる。


受け継がれる。


だから進歩する。


アリアは少し離れた場所から大学都市全体を見ていた。


風が吹く。


長い髪が揺れる。


彼女は小さく笑った。


「面白い時代になりましたね」


研究者。


教師。


学生。


職人。


無数の人材が集まる。


知識が集まる。


知識が交わる。


新しい発見が生まれる。


文明が加速する。


それこそが大学だった。


夕方。


第一回講義が始まった。


巨大講義棟。


数十万人が席を埋める。


教師はマイケルだった。


かつて泣き虫だった少年。


今では連邦最高峰の教師である。


静まり返る講義室。


マイケルはゆっくりと語り始めた。


「皆さん」


「ようこそ大学へ」


全員が真剣な表情で聞いている。


「ここでは知識を学びます」


「技術を学びます」


「魔法を学びます」


「超能力を学びます」


そして少し間を置いた。


「でも」


「一番大事なのは人を学ぶことです」


静寂。


誰もが聞き入っていた。


「環境が人を育てます」


「だから良い環境を作れる人になってください」


その言葉に多くの者が頷いた。


それはアルカディア連邦の原点だった。


病を治す。


飢えを無くす。


街を作る。


教育を行う。


全ては人を育てるためだった。


夜。


大学都市には無数の灯りが灯っていた。


図書館には学生たちが集まる。


研究棟では研究者たちが議論する。


寮では若者たちが夢を語る。


学びの火は消えない。


それは未来へ続く灯火だった。


病院都市。


大学都市。


そして次に生まれる研究都市。


アルカディア連邦はさらに前へ進む。


食料だけではない。


医療だけでもない。


知識を生み出す国家へ。


人材を育て続ける国家へ。


その第一歩となる大学都市は、この日、正式にその歴史を刻み始めたのであった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ