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第三十七話 リアンの弟怖い

「リンク・リディアと申します。現小伯爵になります」


無愛想に挨拶してきたのは、リアンの弟。ちなみに剣をブンブン振り回してたのもこの弟だ。


「初めまして。カタルシアの─」

「第二皇女殿下でしょう。知っています。先ほどは失礼しました。兄の気配を感じた瞬間に殺してしまいたくなって。ご無礼お許しください」


物騒!何この弟!物騒なんですけど!?


「だ、大丈夫です…リアンとは仲が悪いのですか?」

「いえ、私が一方的に嫌っているだけの事なので姫殿下がお気にする事ではございませんよ」


とっつきにくい奴だな。だが、顔が良いので許せてしまう…リアンの弟はツンデレ系なのか、いや殺したいんだったらヤンデレか?というか、攻略対象のクリフィードとキャラが駄々被りなんだけど。違うのは女嫌いじゃないところくらいかな?


「姫殿下?」

「あ、すみません。……あの、そちらの二人は…」

「気にしないでください。父はうるさいので口を塞いでいるだけで、兄は私が誤って殺さない様に拘束させていただいているだけですので」


気にするよ!?口塞いでるって言ってもリディア伯爵身動き取れてないよ!?リアンに至っては…き、気絶?してますよ!?


「むー!むむー!!」

「父上、お客様の前です、控えてください。何よりその姿はなんですか。汗臭い姿のまま行くなと俺は何度も言いましたよね?」

「むっ…むぅ…む?むむ!むー!」

「何を言っているのかわかりかねますね。父上を親父と呼ばないから怒っているなど、本当に理解不明だ」


なぜわかる…。絶対わかってるよね。しかもリディア伯爵自分の事親父って呼ばせたいの?普通パパとかじゃない?


「フッ…ククッ…」


おい、おいヨル。笑うんじゃない。帰るタイミングなくして私は今焦っているんだぞ。馬車の中とはいえクレイグは外で待たせてるわけだし、これ以上遅くなるとエスターの機嫌が悪くなる可能性がある。さっさと帰らないと。


「…それで、リアンは引き取ってもらえるのでしょうか?」

「あぁ、その件はご安心を。兄は我が家の正当な跡継ぎですから。後日改めて謝罪と礼をさせていただきます」

「む!?むむ!むむむ!」

「だからうるさいです。今だけ舌を抜きますよ」

「む…むぅ…」


怖っ。舌抜くとか閻魔様かよ。リアンの弟怖い。


「姫殿下、申し訳ないですが帰っていただいてもよろしいでしょうか。久々に兄弟の会話というものをしたくて」

「あ、あぁ、はい。わかりました」


とりあえず、無事には帰れそうだ。


───







「伯爵は弟の方に跡を継がせたいんだな」


リディア邸を出て馬車までの道を歩いている時に、ヨルが呟いた。


「そうなんですか?」

「俺の勘だがな。兄貴の方を跡継ぎにしたいなら歓迎すんだろ、普通は。なのに伯爵はリアンの坊主を姫さんに預けようとしてた。たぶん跡継ぎじゃなく、純粋な騎士として生きてほしいんだろ」

「えぇ…それだとあの弟さんが不憫じゃないですか…」

「そうだな。あの様子じゃ、何も言われずに跡継ぎにされたんじゃねぇか?」

「うわぁ…」


しかも、弟であるリンクの口振りからして、リンクは魔術の心得があるんだろう。そうじゃなかったら父親相手に舌を抜くなんて言えない。あと、壁を叩っ斬る荒技。あんな綺麗な断面にする事は、魔術を使っていなければ不可能だ。

もしもの話だが、リンクが魔術師を目指していたとして、騎士を輩出している家の当主になってしまえば魔術師になんてなれるわけがない。跡を継ぐはずの兄が出て行った事で、自分が跡継ぎになったと考えているなら殺したくなる気持ちも…わからなくも…ない?………いや、わかんないな、嘘言いましたスイマセン。


「……まぁ関係ない事ですけどね。このままリアンが跡継ぎになれば縁ができるわけですから、私にとっては良い事かもしれないけど」

「姫さんって意外と薄情だよなぁ。自分を慕う奴くらい大切にしてやったらどうだ?」

「気に入った人を側に置いてるんだから薄情じゃないでしょう。慕われているから側に置く、なんて、私はそんな偽善者寄りの聖人君主じゃないですよ」


私の言葉を聞いて、ヨルは「確かにそりゃそうだ!」と笑い始めた。何がツボに入ったのかわかんないけど、ヨルが笑っているならそれはそれで良いか…。

………それにしても、リンク・リディア…本当にどっかで聞いた事ある名前なんだよなぁ。直接会っても何も思い出さなかったけど、クロスの世界の人間なんだから、たぶんゲームに登場する人物のはずだ。思い出しておいた方が私にとっても、姉様の闇落ちを回避するためにも良いんだけど…やっぱ思い出せない。

どこで聞いたかなぁ…。


「あ、あのぉおお!そこの人!!どいてくださいぃいい!!」

「え?」


猛スピードで現れた何かが私へ激突する、前にヨルがズボンに仕込んでいたらしい細い棒で相手の軌道を逸らす。ゴンッと盛大な音を立てて向かいの木にぶつかった相手は、ゆっくりと起き上がった。


「いったぁ…あ!す、すみません!大丈夫ですか!?」


大丈夫かと言えば、大丈夫じゃない。だって、だって…


突撃してきたのがクリフィードルートの悪役なんですから!?

お読みくださりありがとうございました。

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