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第三十六話 うん!やっぱ落ち着こう!

リディア伯爵が現れて始まった会話といえば、リアンがいかに騎士として優秀かという事だった。


「私めが昔から鍛えた自慢の息子ですよ!納得がいかんと無理に話を押し進めようとする悪癖はありますが、主人には従順です!そう育てましたからなぁ!」


テンションたけぇ、うるせぇ、汗くせぇ。

私の嫌いな3コンボを達成しないでもらいたい。あの豚辺境伯もそうだったけど、私は汗臭い男が嫌いみたいだ。……そういえば、あの豚辺境伯って親の七光で仕事自体は親がしてたクズだったんだよね、思い出したくないけど。


「?…姫殿下!お話を聞いておられますかな!?」

「き、聞いてます聞いてます…」

「そうですか!それは良かった!!」


癖なのか口を大きく開けて、がはははは!と笑うリディア伯爵は、本当にあの温厚な国王の騎士なのか?今のところ国王を差し置いてガンガンに発言してる図しか見えてこないんだけども。


「それで姫殿下!ご用件はなんですかな?」


あぁ、やっとか。やっと本題に入れるよ…。


「彼はリディア家の人間ですから。他国の皇女が保護、というのも体面が悪いでしょう。なのでお家までお送りしたという次第です」

「それはご苦労ですな!ですがリアンの引き取りはしかねます!」

「……はい?」


貴族ならここは「ありがとうございます」の一択じゃないか?普通は。他国の姫が、わざわざ、わざわざだぞ?自分の家出息子を返しに来たんだから、さっさと問題解決するために頷くだろう。


「リアンは騎士にするために作った子供です!姫殿下の騎士ならば申し分ないでしょう!」


あ、そう。この人は普通じゃないのね、了解。ちゃんと理解しました。


「騎士にするつもりはありません。そちらが引き取らないというのならば置いていくまで。失礼します」


「その様な得体の知れないモノがお好みなのですかな?」


張り上げていただけの声が、ストンと部屋に落ちる。

一瞬だけ私が目を見開けば、リディア伯爵は先ほどから浮かべていた笑みをさらに深くして微笑んだ。


「得物を持たぬ騎士など、戦士とも言えない。戦場にいた頃に魔術を何度か見た事がありますが、それともまた違った何か。その男は忌み者でしょう。それもエルフとは、物好きな姫だ」

「物好きで結構。私は私が気に入ったものを側に置いているまでです。あぁ、それと。王を守る騎士が力量も見極められないとは、笑われてしまうのであまり言わない方がよろしいと思いますよ?」


亜人種の忌み者の中でも、エルフは特殊だ。無機物の加護を得る事ができるから、特別視されている。けど、それが何?魔法は才能だけで使う事ができるし、魔術は勉強すれば誰だって使える。それと何が違うの?

さっきから癇に障る男だが、なぜか言い返す気にもなれず、ただの憎まれ口しか叩く事ができなかった。


「……姫殿下は本当にリアンを連れて行く気がないと?」

「先ほども申し上げましたでしょう」

「それはそれは……困った…」

「?」


本当に悩んでいる様子のリディア伯爵に、私は首を傾げる。リアンがここにいてまずい事でもあるのか?まぁ、私には関係ないけど。


「!──おいおい、マジかよッ」


ヨルが咄嗟の反射という様に、私を庇う。

その一秒後ほどだ。


カランッ──


豪奢な壁から小石が溢れ、次の瞬間には崩れ落ちていた。


「え、」

「おー、こりゃ派手にいったな。見事なもんだ」


なんっ、え、な、ヨルはなんでそんな冷静なの?私意味わからんのだけど。


「やっと…やっと帰って来たかクソ兄貴!!!」

「リンク!?会いたかったぞ!!!」

「死に晒せぇぇえええ!!!」

「リーンク!!!」


待たんか!!!会話が全く噛み合ってないから!!リアンはとりあえず抱擁しようとすんのやめい!!

おそらく壁を壊したであろう犯人が剣先をリアンに向け、咄嗟にヨルへ指示を出す。リアンにここで死なれるとギリギリ私の責任問題になりかねない。


「退け!ダークエルフ!!」

「アァ?年上への口の利き方がなってねぇぞガキィ!」


かっこよ!!私の騎士かっこよ!!なぜか騎士なのにナイフで応戦してるのはすごい気になるところだけど!!オールラウンダーな騎士も良いと思う!!最高よ!!


「リンク!俺とそんなにハグしたいのか!!」

「殺したいんだよ!!」

「なぜだ!!」

「自分の胸に聞いてみろよ!!」


あ、やっと会話が噛み合った…。

というか、リアンって結構うるさいな。家族の前だからか?

…それにしてもこの家に来てから鼓膜が破れそうになるばかりだ。登場する人物が全員うるさい。


「ヨル…」

「あ?もう良いのかよ。つまんねぇな」

「今すぐ殺してやるクソ兄貴!!」


未だにリアンを殺そうと暴れる男を、ヨルに押さえ込んでもらう。リアンは何がなんだかわからない様子で、けれど納得もしている様子で、素直に自分の胸に手を当てていた。いや、本当に胸が答えてくれるわけないだろ…。


「えーと……落ち着きましょうか」


混乱気味のリアン、驚いた顔のリディア伯爵、戦うのを止められて不満気味なヨル、未だ暴れる誰かさん。


うん!やっぱ落ち着こう!とりあえず私に誰か状況を説明しやがれ!

お読みくださりありがとうございました。

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