第三話7『名無しの権兵衛』
◇
「─そういえばお前らの名前聞いていなかったな。名前なんなんだ?」
「人に名前を聞く前に自分から名乗るのが礼儀だろ!死ねイケメン」
「えっ?あっそっか。わりぃ、わりぃ。今まで自己紹介なんてしなくても皆が皆名前知ってたから、つい名乗るのを忘れていたぜ」
「何だソレ?嫌みか?殺すぞイケメン」
「少し忘れていただけじゃねぇか!それと、さっきから『死ね死ね』うるせぇンだよ!そんなに軽々しく死ねって言葉使うんじゃねぇよ!」
「うるせぇ。死ねイケメン」
「だから軽々しく死ねって言葉使うんじゃねぇよ!」
「軽々しくではない。本気で言ってるんだ」
「余計たちが悪いわ!」
(コレ、いつまで続くんだろ?)
ぎゃーぎゃー言い争っている部員を見て蓮宮は呆れて溜め息をついた。
◇
20分後ようやく中断していた自己紹介が再開した。
「改めて自己紹介をさせてもらう。俺様の名は、千道刃だ!千本桜の千に王道の道を書いてせんどう。刃渡りの刃を書いてやいばだ!覚えておきやがれ」
ヤイバは聞いてもないのに漢字まで説明してきた。
なんだコイツ。てか、ヤイバって・・・
「厨二くせぇ」
「オイ、聞こえてンぞ?せめて聞こえないように言ってくれないか?俺様も気にしてンだよ。・・・・・・まぁいい、で、お前らの名前は?」
ヤイバの質問に蓮宮は待ってましたとばかりに手を挙げ素早く答えた。
「僕は那伊蓮宮!紅蓮の蓮に一宮の宮で蓮宮だよ」
蓮宮も聞かれていないのに漢字まで教えていた。
蓮宮は優しいなぁ。
「OK。蓮宮ね。覚えたぜ。で、お前は?」
ヤイバは俺を指差して聞いてきた。
イケメンに教える名前なんてないんだが、仕方ねぇ。名前くらい教えてやる─
「俺は名無しの権兵衛だ・・・」
─わけねぇだろ
「うぉい!???????!?嘘つくなよ!そんな名前のやつがいるわけねぇだろ!?」
全国の名無しの権兵衛さんに謝れ!
当然ヤイバは、俺の名前を信じようとしない。
まぁ、信じたら信じたでヤバイ奴だけど
「もう楽斗。名前くらい素直に教えてあげなよ」
蓮宮はこちらを振り返って笑った。
・・・イヤまて、眼が笑ってないぞ!?っていうか、あの眼は姉さんがよく俺に向ける眼にそっくりだ・・・。
まさか、蓮宮怒ってるのか!?
仕方ない。ここは素直に教えた方が良さそうだ。
「俺は雨宮楽斗だ」
するとヤイバはニヤッと笑って
「そうかぁ。ガクトって言うのか~。ガクト君・・・イヤ違うな。ガクトちゃん、ウンいい響きだねぇ。よろしくな!ガクトちゃん?」
いつか絶対殺してやる!
この日初めて俺は本気の殺意を覚えた。
こうして3人目の部員 千道刃 が悲恋部に入部した。




