19話 選抜戦②
「さぁ昼休憩も終わり一年の部が再開致します。残すところ後二回戦とトップ10決めのみとなりました。優勝に輝くのは一体誰なのか気になるところですね」
「そうですね。ユースさんがアイテムの力を一切見せていないのが怖いところですね」
実況が話を始めた。実戦場には午前より人が多いように感じた。先輩の中には一年なんてトップ10以外見る価値もないと考えている人もいるだろう。二、三年生に比べたらそうかも知れないが、もう少し俺たち一年に期待してくれてもいいんじゃないかと思った。
「それでは三回戦目がまもなく始まります!」
実況がそう言うとユースさんと近接職の男の生徒が現れた。その生徒は勝よりも身長が大きく百八十センチほどありそうだった。しかも、筋肉量もかなり多く明らかにパワー系といった見た目だった。鷲田先生の合図で対戦が始まると、ユースさんは少し様子見をした。俺たちは近接職の生徒が戦うところを見られなかったのでどんな戦い方をするのか楽しみにしていた。すると、ユースさんの方から仕掛けた。男は背中に担いでいた二本の斧を取り出し構えた。ユースさんが正面から攻撃すると、男は見事に二本の斧を用いて防いだ。
「ユースさんの一撃を止めました剛田くん! ここからどう攻撃に転じるのか!?」
剛田という生徒は片手の斧を防御から攻撃に移行させようとしたが、ユースさんがそれを見逃すはずもなく、両手で防御しないといけないほどの力を斧に込めている。すると、剛田その状況に嫌気がさしたのか両手の斧でユースさんの剣を振り払った。互いに間合いを詰める事なく見合っていると、痺れを切らした剛田が猛攻を仕掛けた。
「剛田くん猛攻を仕掛けます。ユースさんは耐えられるのか!?」
実況の言葉とは裏腹にユースさんは案外余裕そうに剛田の猛攻を綺麗に躱していた。防ごうとしても二本の斧からの攻撃を防ぐことは至難の業であるためユースさんは回避を選択したのだろう。その瞬間、剛田が味方に持っていた斧を投げた。ユースさんは咄嗟に剣でガードした。剛田はその隙に剣を折ろうとする勢いでユースさんに猛攻を仕掛けた。流石にここからアイテムの力無しで反撃するのは厳しいと思われていた状況で取ったユースさんの選択は魔法だった。
「雷魔法だ! 剛田くん雷魔法をモロにくらいノックアウト! 勝者ユース・ヨハネス!」
これでユースさんのトップ10入りは確定となった。実戦場は大盛り上がりだった。そしてもう一組が対戦を行い決着がついた。次は春奈の番だった。春奈が入場すると先輩たちがザワザワし始めた。春奈の銀翼の天使は使い勝手も強さも一級品なのだろう。鷲田先生の合図で対戦が始まった。春奈はいつも通り空中から銀の羽で攻撃した。でも、相手が少し悪かった。相手は魔法使いで互いに遠距離を得意とする者同士戦いが長引いた。春奈は攻撃の手を弱めた。このままでは埒が開かないと理解したのだろう。春奈の銀翼の天使を見てみると、使った分の羽が無くなっている。相手の魔法で壊されたのだろう。まだ対戦は残っているので速攻を仕掛けないとジリ貧だと判断した春奈は低空飛行をやってみせた。
「羽栖さんがここで超低空飛行で勝負を仕掛けた! 魔法使いの弱点である近接戦に持ち込む気だ!」
そうはさせないと相手の魔法使いも善戦したが、春奈のスピードに翻弄され、最後は案外呆気なく春奈の勝利となった。
「勝者羽栖春奈! アイテムの使い方が勝敗を決しましたね」
「本当に上手でしたね。今年の一年生は豊作ですね」
春奈の対戦が終わり二組が対戦を行い三回戦最後の俺の番となった。俺はみんなから声援の言葉をもらい対戦に赴いた。相手は魔法使いらしく速攻を仕掛けないといけないなと思っていると、鷲田先生の合図で対戦が始まった。俺は準備が整っておらず最初に速攻を仕掛けられなかった。相手はここぞとばかりに火魔法を無数に出現させた。俺は距離を取り火魔法に対して水魔法で応戦した。
「小出くんの魔法使いにも劣らない魔法捌きにどう対処するのか!?」
実況の言葉に相手は少し取り乱していた。俺は今だと一気に距離を詰めた。でも、それはブラフだった。
「爆発魔法だ! これは小出くんモロに食らったか!?」
魔法を食らうのは初めてでかなり痛かったが、武帝に教えてもらった治癒魔法でなんとか傷は治せた。でも、ここから魔法は使えない。そして、再び攻撃を食らわないようにしなければならない。とりあえず魔法に当たらないように逃げた。マズイなと思っていると俺は笑みが消えていることに気がついた。こんな時こそ笑みの寵愛を活かすべきだと思い笑みを浮かべた。
「小出くんこの状況で笑っています! なんというタフネス! なんという自信! これはまだまだ結果が分かりません!」
先輩たちも俺を応援してくれている。状況は好転しつつある。治癒魔法にマナを集中させたおかげで傷は無くなり魔法も使えるようになった。俺は間藤さんが使っていた火の壁を再び出現させた。相手に択を押し付けられる時点で火の壁はかなり強力で俺の行動見えない。突破口を開くのに労力を必要とする。相手がどんな行動に出ても後隙を狩れる。俺は今のうちに氷刃剣に力を集め今か今かとその時を待った。相手は爆発魔法で火の壁に突破口を開けた。でも、俺はそこから攻撃をしなかった。さっきみたいに爆発魔法が仕掛けられているかも知れないと予想して相手の背後に回り込んでいたのだ。俺が攻撃するだけの部分に火の壁に穴を開けて氷刃剣で攻撃をした。相手は死角からの攻撃に対応できず俺の勝利となった。
「勝者小出健斗! 魔法とアイテムを使った多彩な戦い方で勝利を掴み取りました!」
勝たちに褒められ金田先輩にまて褒められた気分が良くなっていると、四回戦目が始まった。ユースさんと魔法使いとの戦いだった。魔法使いは火、水、風、土魔法と様々な魔法でユースさんを翻弄した。
「宮村くんの多彩な魔法がユースさんを苦しめます」
その時ユースさんが何か吹っ切れたかのように肩を下ろした。その時、突如として空が曇った。その刹那、宮村に対して雷が落ちてきた。あまりの衝撃に実戦場にいる皆が固まった。先生たちだけは迅速に行動し宮村に治癒魔法を施していた。鷲田先生の合図で対戦が終わった。
「え、えーと……勝者ユース・ヨハネス!」
「「「うおおお!」」」
今日一番の盛り上がりを見せた。あまりのアイテムの強さに俺と春奈はあれと戦わなくちゃいけないのかと絶句した。俺と春奈はユースさんのアイテムの衝撃で四回戦目どうやって戦おうか考えれないほどだった。でも、俺と春奈はそんな状況でもしっかり勝利を収めた。そしてトップ10を決める戦いが行われ剛田と俺と戦った西田という魔法使いがトップ10入りを果たした。そして最終決戦となった。でも、残っているのは俺と春奈とユースさんの三人。このままでは有利不利が出てしまう。どうするのかと思っていると実況が言った。
「残すは三人となりましたので三つ巴と行きましょう! 今まで何度か三つ巴は起こってきましたが、今回のような面白い三つ巴はそうそうないでしょう!」
俺と春奈が控室に行こうとすると金田先輩が俺にだけ言った。
「近接戦闘部の力見せてやれ」
「はい」
俺は金田先輩たちが部活でやっているのをじっくり見ていたので三つ巴の留意点などは大体分かる。でも、油断はしないように自分に喝を入れた。
「選手が出揃いました。ユースさん、羽栖さん、小出くん。一体誰が勝つのは最終決戦開幕です!」
鷲田先生の合図で対戦が始まった。俺と春奈はユースさんから距離を取った。落雷に打たれるのだけは勘弁と思ったのだ。俺と春奈は目を合わせユースさんに向かった。俺の攻撃と春奈の銀の羽の攻撃でユースさんは着実にダメージを受けていた。でも、ユースさんが本気を出していないのを感じていた俺たちはおかしいなと思った。その瞬間ユースさんが叫んだ。
「はあああ! うおぁ!」
ユースさんはアイテムの力で雷を纏っているように思えた。俺たちが構えた刹那、ユースさんは目にも止まらない速さで春奈に近づき、一太刀を浴びせた。でも、春奈は銀翼で守っており何とか大丈夫だった。今度はこっちに来た。武帝と遜色ないほど早い太刀筋に回避することしかできなかったが、マナを集中させることはできたので火魔法をユースさんのお腹に食らわした。でも、ユースさんは雷の鎧を纏っているようで全く効いていなかった。ユースさんは俺より春奈の方が倒しやすいと判断したのか春奈に猛攻を仕掛けた。俺はその隙に氷刃剣に力を込めて一太刀浴びせたが、雷の鎧のせいでまともに攻撃が入らなかった。どうにかできないのかと思っていると、俺は笑みを忘れており縋る思い出笑みを浮かべた。
「小出くんまたしても笑っている! ユースさんに勝てる見込みでもあるというのか!?」
ユースさんが春奈から俺に攻撃対象を変えた。俺は笑みを浮かべていると、体に僅かに痺れを感じた。おそらくユースさんの雷なのだろうが、マナを集中させている右手には何も感じなかった。この雷がマナを通さないのであれば勝機があると感じた。春奈が銀の羽で攻撃をするとユースさんが春奈に攻撃を始めた。春奈は銀翼の天使で空に逃げた。俺は今のうちだと氷刃剣に力と思い、マナを集中させた。その時、ユースさんが春奈に雷を落とした。春奈はモロに食い地面に落ちてきた。俺は春奈に対する思いが溢れた。氷刃剣はその思いに応えユースさんの足を凍らせた。ユースさんが身動きが取れずにいるところに氷刃剣を振り下ろした。予想通りマナが集中している氷刃剣は雷の鎧を貫通しユースさんが倒れた。先生たちが急いで治癒魔法に当たった。俺は勝利を噛み締めた。
「選抜戦一年の部、勝者は小出健斗! ユースさんを討ち破り勝利を掴み取りました!」
俺は疲れが一気に来て急に眠くなった。頑張りすぎたのだと理解したが、体は動かせずそのまま抵抗することなく眠ることにした。
ゆっくりお待ちください




