18話 選抜戦①
じいちゃんと武帝からある程度の事を教わった俺は自分の成長を実感していた。授業では実力を見せすぎないように少しセーブしないといけないぐらい成長しており、今から選抜戦が楽しみで仕方がなかった。選抜戦までもう数日しか残っておらず後は選抜戦まで待つだけとなった。勝たちは選抜戦を不安ながらも楽しみに待っておりどんな結果になるのか楽しみだ。
選抜戦ではどれだけ後の方に対戦できるかによって勝率が変わってくると金田先輩が教えてくれた。事前に次の対戦相手の情報を得て対策を練る事が出来るかららしい。最初も最後もあまり変わらないのではないかと思っていたが、戦って疲労感がある状態で対策を練るのはキツいなと改めて思った。それに、ニ、三年生はほとんどの生徒が選抜戦に出場するらしく、対策を練る生徒の数が多いからそれもしんどいらしい。
いよいよ選抜戦当日となった。一年生で選抜戦に出場する生徒は約五十名と、とても多いわけではないが塩田先生によると例年よりは多いらしい。俺たち選抜戦に出場する一年生を先輩たちが大勢見に来るのが光正の恒例行事らしい。
「さぁ始まりました光正選抜戦一年の部! 今年は例年より出場者数が多く、約五十名の一年生が選抜戦にエントリーしています! この五十名の中を勝ち抜く者は誰か! 頭角を現す生徒はいるのか!?」
「今年は何と言ってもヨハネス夫婦両者の力を受け継いだと言われている、未来のスーパースターがいますからね。とても楽しい選抜戦になると思います」
「それでは準備が整ったので一組目から参りましょう!」
かくして光正選抜戦一年の部が始まった。俺たち選抜戦に出場する一年生は出番になるまで実戦場の観客席で対戦を見て事前に他の出場者の情報を得る必要がある。と言っても、ニ、三年生の気迫が凄まじくまともに対戦を見れない状況にある。実際、一組目の対戦が始まったのは良いが、俺たち一年生は最前列に行く事が出来ず、どんなアイテムを使っているのかなど何も把握できずにいた。俺たちの対戦順は後ろの方だったため今のうちに情報を得ておきたいのにと思っていたが、結局ほとんどの情報を得る事はできなかった。
「どうするよ。俺たち全然他の奴らのこと分かんねぇけど」
勝は少し不安そうに言った。俺はみんなの不安を取り除くように言った。
「それは他のみんなも一緒だ。それに、そんな気持ちだと勝てる戦いも勝てないぞ」
俺の言葉でみんな気持ちを切り替えた。そんな話をしていると次の対戦の準備が始まった。その次が春奈の場という事もあり、春奈は選手控室に向かった。俺たちもそろそろだなと思っていると、ニ、三年生が今日イチの盛り上がりを見せた。アナウンスを聞いてみると、ユースさんの番のようだった。俺たちはどうしてもユースさんの実力を確認しておきたく最前列に行こうとしたが、無理だった。そんな時聞き覚えのある声がした。
「お前らこっちに来い! ここなら空いてるぞ!」
金田先輩だった。俺たちはお言葉に甘えて最前列を譲ってもらいユースさんの実力を目に焼き付けた。ユースさんの相手は魔法使いのようでどうなるのかと息を飲んで結果を見守った。レフェリーをしている鷲田先生の合図で対戦が始まると、魔法使いは距離を取った。すると、ユースさんはそれを読んでいたのか一気に距離を詰めた。魔法使いはユースさんの急接近に対応出来ず、いとも容易くやられてしまった。アイテムの力を使わず勝利したユースさんに先輩たちの反応は二つに分かれた。アイテムの力を見たかった勢とアイテムの力なしで勝ったのを凄いと称える勢で分かれたのだ。俺たちはアイテムの力を見たかったため少し残念に思った。でも、次は春奈の番なため春奈を精一杯応援した。
春奈の番が始まった。春奈の相手は近接職のようで春奈がどうやって戦うのかと思っていると、春奈は自分のアイテム銀翼の天使を使って背中に銀翼を生やした。そのインパクトに実戦場は割れんばかりの歓声がこだました。春奈は近接職が近づけない空中から銀の羽を飛ばし相手を降参に追いやった。俺たちが春奈を褒めると、春奈は俺たちに笑顔を見せてくれた。もうそろそろ俺たちの番も近くなってきたため控室に向かった。俺と勝、透の戦う順番が連続しているため控室で待っていると春奈が戻ってきた。俺たちは口々に春奈の事を褒めると、春奈は言った。
「私に負けないようにね」
俺たちはその言葉に闘志が燃えた。次の対戦は勝の番だったため勝が不撓の拳を装着し対戦に向かった。俺と透は勝の対戦ぶりを見るために控室から出て見に行くことにした。勝の対戦相手は魔法使いらしく苦戦を強いられていた。でも、勝のアイテムはどんな状況でも諦めない不撓の拳だ。勝の体力も合わされば魔法使いには部が悪い。勝は耐えて耐えて相手のミスを誘発した。魔法使いの攻撃が一瞬止まると勝は今だと言わんばかりに猛攻を繰り出した。魔法使いは何とか魔法を撃って応戦していたが、近接戦に持ち込まれ勝の勝利で終わった。俺たちは一言も話さず勝の勝利を讃えた。次は透の番だ。
透の対戦相手は近接職で勝と真逆のカードとなった。透がどう立ち回るのか見ていると、透は対戦が始まったと同時に足元から大きな木を生やした。透はその木の枝に乗り高所有利を取ると、相手に風魔法を浴びせた。相手の身動きが止まっているところに透は地面から木を生やし相手に直接攻撃をした。透の何とも奇抜な戦い方に相手は反応できず透の勝利となった。
次は俺の番となった。相手は近接職で大きなハンマーのような物を持っていた。どんなアイテムかは分からないが、警戒しないに越した事はないと一歩引いて戦いを始めた。すると、相手は苦手な距離感だったのか一気に距離を詰めてこようとした。相手はハンマーを頭上まで持ってきてそのまま振り翳してこようとしていた。俺は冷静にカウンターを顎に決めると、相手は脳震盪で倒れた。何とも呆気ない勝利だった。
一回戦目を勝ち抜き二回戦目となった。二回戦目でもユースさんはアイテムの力を使わなかった。春奈も一回戦目と同様優雅に勝ち越し、勝も勝ち越した。次は俺と透の対戦となった。こんなところで当たってしまうとはと思っていると、透が言ってきた。
「互いに手加減なしで」
「当たり前だ」
俺たちはグータッチをして対戦に臨んだ。対戦が始まると、透は一回戦目と同じ戦法を取った。でも、何か裏があると読んだ俺は透の木に火魔法を撃った。透は地面に降りるのを余儀なくされた。その隙に攻撃をと思ったが、透の事だから木でカウンターを狙っていると感じ魔法主体で戦うことにした。透の木に対して俺の火魔法は相性が良く透が防戦一方となっている時に、俺は間藤さんが見せた火の壁を出現させた。実はどうにかして実戦登用できないかと模索しており土壇場で成功したのだ。俺は間藤さんと同じくジワジワと火の壁を動かすと透は降参した。もう少し粘ってもよかっただろうが、透の魔法では対抗策がないため諦めたのだろう。俺と透の対戦は俺の勝利となり終わった。
三回戦目もユースさんはアイテムの力を使わず身のこなしだけで勝利した。春奈はアイテムの強さを相手に押し付けて勝利した。そして、俺と勝の戦いとなった。俺たちは透の時と同じくグータッチをした。今まで近接職と魔法使いという明らかに相性の有利不利があるカードだったが、俺たちはどちらも近接職なため実戦場は俺たちのカードに盛り上がった。俺たちはその機体に応えようと全力で戦う事を約束した。
鷲田先生の合図で始まると俺たちはすぐに近接戦闘を始めた。不撓の拳と氷刃剣がぶつかり合う音は実戦場に響いた。俺たちの実力は拮抗しているように周りには映っているだろうが、俺は武帝に稽古をつけてもらったためかなり楽に勝の攻撃を捌けている。すると、勝が言った。
「本気を出してくれ! 健斗の実力を知りたいんだ! どれだけ強くなったのか俺に味合わせてくれ!」
俺は氷刃剣に力を込め武帝に浴びせた猛攻を勝にも浴びせた。最初のうちは勝も耐えていたが、氷刃剣の冷気の力により次第に反撃の意思を削るほどのダメージを与えた。不撓の拳で諦めていないが、誰から見ても負けが覆らないような状況になった。
「そこまで!」
鷲田先生の合図で俺は猛攻を止めた。勝の不撓の拳は氷刃剣の冷気で完璧に凍っていた。本気でやっていたため氷刃剣の制御ができておらず勝を傷つけたのではないかと不安になったが、勝は不撓の拳を外し握手を求めてきた。俺は勝と握手を交わした。実戦場は歓声に包まれた。三回戦目も終わり、そろそろ一年の部が終わりに近づいてきていた。残すところ後二回戦となった。ここで昼休憩が挟まり俺たちは昼ご飯を食べに食堂に向かった。俺たちが昼ご飯を食べながら話しているとユースさんが近づいてきて言った。
「楽しみにしてる」
ユースさんは俺の目を見て言った。ユースさんが俺をライバルとして認めてくれたのだと確信した。じいちゃんと武帝に心の中で感謝を伝えた。そして、勝てるようにここまできたら優勝あるのみと自分に喝を入れた。
ゆっくりお待ちください




