15話 報酬
間藤さんが学校に特別講師に来てくださってから約一週間経った。その日は土曜日で特に用事もなくゴロゴロしていた。すると、母さんから俺宛てに電話がかかってきたとリビングに呼ばれた。俺は急いでリビングに降りた。
「電話変わりました健斗です」
「おぉ小出か」
電話をかけてきたのは塩田先生だった。
「どうしたんですか?」
「それがな、お前この前間藤さんに魔法を当てただろ。それで、間藤さんがお前にアイテムを譲渡する時間を作れたから日曜日に会えないかって」
「そうだったんですね。日曜日なら大丈夫です」
「そうかなら良かった。それじゃあ、午後一時に学校まで来てもらえるか?」
「はい分かりました」
「要件は以上だ。日曜日楽しみにしておけよ」
「はい。失礼します」
「はーい」
塩田先生との電話が終わると母さんが不思議そうな顔で尋ねてきた。
「何の電話だったの?」
「あぁこの前学校に特別講師として来た人からアイテム一個貰えるから日曜日学校来てって電話」
「え、凄いじゃん! アイテムなんて高価な物一個貰えるんでしょ? それに、そのアイテム次第で健ちゃんは今よりもっと強くなれるんでしょ?」
母さんはまるで自分のことのようにテンションが上がっていた。こんなにも嬉しそうにしてくれたらこっちまで嬉しくなってきた。
「そうだよ。それに、アイテム貰えるの俺だけなんだ」
「えぇ健ちゃんだけ!?」
「そう。ラッキーで貰えることになったんだ。正直言って、勝がいたからゲットできたみたいなものなんだ」
「そうなの? それじゃあ勝くんに何かプレゼントした方がいいんじゃない? トレーニングで使えそうな器具とか、プロテインとか?」
母さんの言う通り何かプレゼントした方がいいのではないかと思えてきた。勝の助言がなかったら俺がアイテムを貰えることにはならなかったし。とは言え、貰ったアイテムを渡すのは流石に気が引ける。勝の性格に合った何かがあればいいのだが、そんなに簡単にはいかない。
「母さん、勝にプレゼントする物見に行きたいから買い物行こ」
「分かったわ」
俺は母さんと二人でショッピングモールに向かった。色々な物を見てこれなら勝が喜びそうと思った物を三つ見つけた。
一つ目はスニーカーだ。有名ブランドで勝が一番好きなスニーカーだ。勝のお母さんに靴のサイズも確認してもらったが、合わないと無駄になるためスニーカーはやめておいた。
二つ目はバランスボール、ヨガマット、ストレッチ用ポールがまとまったセットだ。勝は筋トレを主に行っているが、柔軟をやっているところ、器具を見たことがなかったのでちょうど良いと思った。
三つ目はプロテインの三つの味がセットになった物だ。勝が好きなメーカーの物で三つの味が楽しめるいい商品を見つけた。二つ目の物は使わなくなる可能性があるが、プロテインはそんなことはないのでプロテインをあげることにした。
アイテムという高価な物と比べるとプロテインなんて安物にしか映らないが、買わないよりはマシだと思い、俺の感謝の気持ちも伝えられるので買って良かったと思った。日曜日帰ってきたら勝に渡そうと部屋に置いておいた。
日曜日になり早く一時になってくれとソワソワしながら待っていると父さんにリビングに呼ばれた。
「母さんから聞いたけどアイテム貰えるんだってな? やったな。このまま頑張れよ。それと、頑張ったご褒美としてお小遣いあげる。大事に使えよ」
そう言うと父さんは五千円を差し出した。
「ありがとう!」
俺はまさかお小遣いを貰えるとは思っておらずとても嬉しくなった。お昼までいつもの日常を送って、一時五分前に学校に着くように家を出た。いつもより足取りが軽く、七分前に学校に着いてしまった。どこで待っていたらいいか聞いていなかったので塩田先生に聞くことにした。
「失礼します。塩田先生おられますか?」
職員室のドアをノックし要件を言った。塩田先生は席から立ち上がり俺の元に来て言った。
「間藤さんから校門で待っておくようにと言われてたのをすっかり忘れてしまった。申し訳ない」
「いえいえ大丈夫ですよ。それじゃあ失礼します」
「あぁそうだ、アイテムを選ぶ時は自分の直感に信じるんだぞ。直感がこれだって言ったアイテムが自分に一番合う場合が多いからな」
「分かりました。自分の直感に従います」
俺は校門に向かい間藤さんを待っていると、黒塗りの高級車が目の前に現れた。まさかこれじゃないよなと思っていると、後部座席の窓が開いた。
「さ、乗って」
間藤さんがそう言うと、運転席からスーツを着た背の高い男性が現れ後部座席に案内してくれた。俺は促されるまま車に乗り込んだ。すると、間藤さんが話し始めた。
「小出くんには英雄級のアイテムをあげようと思ってるの。でも、英雄級の中にも扱いが難しい物があるから先にそれを説明しておくわね。
その扱いが難しい英雄級アイテムの名前は爆発大槌。その名の通り何かに当たると爆発するの。試しに使ってみたけどまともに使えないからずっと倉庫にしまってあるの。も 二つ目の扱いが難しいアイテムの名前は、疾風の杖。これは風魔法しか使えないのにその風魔法の扱いも難しいアイテムなの。使いようによっては強力なんだけど、味方を巻き込んだりするからおすすめしないわ。三つ目は溶岩槍。これは攻撃力で言うなら一級品なんだけど、疾風の杖と同様、味方にも被害が出るからおすすめしないわ。他のアイテムなら使い勝手いいのばかりだから気になったアイテムがあったら都度教えてあげるわ。
言っておくけど、私家に着いたらオンライン会議があって少し席を外すからその間に三つぐらい欲しいアイテムを選んでおいて。会議が終わったら説明してあげるわ。もし、試しに使ってみたいんだったら言ってね。訓練スペースがあるからそこで試せるわ」
「何から何までありがとうございます」
「あなたにはそのぐらい可能性を感じてるのよ。それに、今のうちに恩を売っておけばあなたに貸しを作れるからね。もし、有名になったら私たち烈火の鳳仙花のこと良く言ってね。って事もできるし。まぁ嘘だけどね。本当に君には才能があるから今のうちに伸ばしておこうって思ったの。余計なお世話かも知れないけどちょっとだけ我慢してね」
「分かりました」
色々言いたい事はあったが、失礼な事を言って不機嫌にさせるのは良くないためグッと堪えた。しばらく車に揺られていると車が停まった。後部座席のドアを開けられ外に出ると、そこには広大な敷地と三階建ての豪邸があった。
「早速倉庫に案内するから着いてきて」
「は、はい」
俺は間藤さんの後ろをついて行き倉庫に向かった。家の中に入り階段を降り地下一階に移動した。当たり前のように地下があることに驚いた。間藤さんが地下の大きなドアを開けると、そこには多くのアイテムが置いてあった。その一角に扱いが難しいアイテムだと紹介してもらった三つが他のアイテムと離れて置かれていた。教えてもらわなくてもあの三つに何かあるなと分かる置き方だったため何も聞かなかった。
「それじゃあ会議が終わったら戻ってくるから楽しんで」
俺はお言葉に甘えることにした。倉庫には壁にいくつも剣や刀、槍、弓、杖などのアイテムが飾られていた。春奈の銀翼の天使のようなリングのアイテムは宝石店のショーケースのように飾られていた。一通り見てみて、見た目が好きなアイテムをじっくり見ていると、一つのリングにとても惹かれた。
「どう何かいいの見つかった?」
俺はいつの間に間藤さんが会議から戻ってくるまでの時間が経ったのか体感できなかった。俺が不思議そうにしていると間藤さんが俺の見ていたリングを見て言った。
「これが気になるの?」
「は、はい」
俺が答えると間藤さんは好ましくない反応を示した。このアイテムに厄介な効果でもあるのだろうかと思っていると間藤さんが説明してくれた。
「このアイテムの名前は時の運命って言ってね、ある時は体感時間が長く感じたりある時は短く感じたりする変なアイテムなの。しかも、今の君みたいに装着者じゃない人にも効果がある特殊なアイテムなの。ちなみに運命って名前の通り体感時間が長く感じるか短く感じるかはランダムよ。だからこれはおすすめしないわ」
「そうですか……」
俺は他のアイテムを見てみた。特に直感がこれと言う物は無いなと思っていると、間藤さんのネックレスに目を奪われた。間藤さんは俺がネックレスを見ているのに気がつき説明してくれた。
「これは笑みの寵愛って言うの。笑っているといい事が起こるっていう特殊系で、直接力を発揮する物では無いんだけど……欲しい?」
「はい」
俺は間藤さんの目を真っ直ぐ見つめて言った。すると、間藤さんはネックレスを外し言った。
「付けてあげるから後ろ向いて」
俺は間藤さんの言葉に従い後ろを向いた。
「できたわ」
俺はネックレスを手と目で確認して感謝を伝えた。
「ありがとうございます!」
「いいのよ。それじゃあ家まで送って行くわ」
お言葉に甘えて家まで送ってもらった。道中車の中で間藤さんが経験してきた出来事を色々と話してもらったがとても刺激的で楽しい話ばかりだった。そんな話を聞いているとあっという間に家に着いてしまった。
「しばらくの間お別れね。また会う機会があったらその時は君の話を聞かせてちょうだいね」
「はい。その時までにいろんな経験をしておきます。本当にありがとうございました!」
間藤さんは微笑みその場を去った。次会えるまでにあっと驚くほど成長しようと心に決めた。父さんと母さんにも間藤さんの話を聞かせてあげようとルンルンで玄関のドアを開けた。
「ただいまー」
「「おかえり」」
ゆっくりお待ちください




