14話 魔法②
実戦場についた俺たちに準備運動の時間が与えられた。間藤さんがどのくらいマジで爆発魔法を撃ってくるのか想像できなかったが、手加減はするけどちゃんと逃げないと怪我する的な感じで言っていたから入念に準備運動を行った。透も俺に倣い入念に準備運動をしていた。
「ねぇ健ちゃん、魔法当てられる自信ある?」
「そんなの無いに決まってるだろ。今回は実戦がどんな感じなのか掴むために、逃げるのに集中して魔法はそんなにって感じでいこうかなって思ってる」
「そっか。それじゃあ僕は健ちゃんの逆でいこうかな。なるべく当てるのメインで逃げるのは後回しで」
「頑張ろうな」
そう言い俺たちはグータッチをした。俺たちが準備運動を終える頃、俺たち以外の一年生が実戦場に集まった。間藤さんがそれを確認すると俺たちに指示を出した。
「それじゃあ今から一分後に始めるから準備してね」
俺たちはいよいよかと深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。間藤さんがニコッと笑い開始の合図を出した。
「始めるぞ。みんな逃げろよ!」
その合図と同時に間藤さんが俺たちが集まっていた場所に爆発魔法を撃った。俺たちは必死の思いで逃げた。
「ほらほら逃げろ逃げろ!」
間藤さんは結構容赦なく爆発魔法を撃ってきた。こんな状況で魔法なんて撃てるかと文句を言いたかった。でも、実戦に泣き言なんて通用しないと自分に鞭を打ち何とか逃げ回った。その様子はさながら小学生に弄ばれる小動物の様だった。圧倒的な上位存在に手も足も出ないその様子に周りにいた同級生たちは悲鳴を上げたり憐れむ者までいた。それでも俺たちは必死に逃げて魔法を撃つ隙を探した。すると、魔法を撃つタイミングにほんの少しだけ次に魔法を撃つ対象を決めているのに気がついた。そのタイミングしかないと思い杖にマナを集中させようとした時、間藤さんと目が合った。間藤さんはニヤリと笑い俺に魔法を撃ってきた。きっと、他の生徒も魔法を撃とうと試しては止められてを繰り返していたのだろう。そこで俺は妙案を思いついた。
「今から全員魔法を撃つ準備をしろ! 同時にやらなくちゃ誰も間藤さんに魔法を当てられない!」
「そうは言っても……!」
俺の言葉に他クラスの女子が反応した。間藤さんは出る杭は打たれるかのように俺とその女子に魔法を撃ってきた。他の生徒は逃げるのに必死で魔法なんて頭の中から抜けているようだった。このままでは体力を削られジリ貧だ。どうにかしないと。でも、間藤さんの集中力が切れる様子もないし、一度も魔法を撃つこともなく負けてしまうのかと思っていた時好機が訪れた。なんと、間藤さんの動きが止まったのだ。一瞬何か問題が発生したのかと思ったが、この好機を逃すほど体力を消耗していなかったため火魔法を撃った。
「残念」
俺の魔法は呆気なく防がれた。他の生徒も魔法を撃ったが、間藤さんは自分の周りに火魔法を出現させた。その火魔法は壁のようだった。その壁のような火魔法の奥で間藤さんがどんなことをしているのか見当もつかなかったが、魔法の準備をさせる時間を与えてはならないと俺の直感が言っていた。俺はありったけの水魔法を間藤さんの火魔法に浴びせたが、焼け石に水をやってるんじゃないんだぞと言いたくなるほど無意味だった。
「これでおしまい」
間藤さんの声が火魔法の中から聞こえてきたと思ったら、間藤さんを守っていた火魔法がジワジワと動き始めた。俺たちは後ろに下がる他なく、ついには実戦場の壁まで追い詰められた。その時間藤さんの声が聞こえてきた。
「そこから私の元に来れた人には、魔法を当てるチャンスをあげるわ。今から三分間私は動かないからその時間内にどうにかして魔法を当ててみなさい」
俺たちの置かれている状況は目の前に火の壁があり、後ろには実戦場の壁がある。火の壁と実戦場の壁の間は一メートルほどしかない。火の壁は高さ三メートルほどあり飛び越えるのは不可能。地面を掘ることも現実的ではない。この状況をどう打開しようかと腰に手を当てた時、氷刃剣に手が当たった。俺はこれしかないと思った。氷刃剣なら不慣れな水魔法より扱いやすくまだ可能性がある。でも、身動きがしづらいため思うように氷刃剣を振り下ろせない。どうしようかと悩んでいると勝の声が聞こえてきた。
「上段だ!」
俺は心の中で勝に感謝した。自分の頭の上に氷刃剣を持ち上げ、ありったけの力と思いを込め振り下ろした。その結果、間藤さんの火魔法に切れ込みが入った。俺は何とかその切れ込みに飛び込んだ。間藤さんはまさか自分の魔法が破られるとは思っていなかったのか心底驚いていた。俺は時間制限内に火魔法を撃ち間藤さんに当てた。
「おめでとう」
間藤さんは嬉しそうに笑い言ってくれた。俺は達成感から一気に体の力が抜けて膝から崩れ落ちた。間藤さんが腕を掴んでくれ尻もちはつかなかった。そして、三分の制限時間になり間藤さんが火魔法を消した。
「これにて終了! そして、私に唯一魔法を当てたのは、小出くんです! みなさん小出くんに大きな拍手を!」
同級生のみんなは割れんばかりの拍手を送ってくれた。足に力が入らず情けない格好だったが、それでも間藤さんに魔法を当てた事実には変わりなくしばらくの間拍手が鳴り止むことはなかった。周りを見てみると、ユースさんも拍手してくれていた。これで少しは俺の事を認めてくれただろうと思った。でも、ユースさんに認められて何になるんだとも思った。俺はただユースさんと友達になりたいだけだから認められなくてもいいのではないかと感じた。まぁ今は目の前の達成感に浸ろうと考えないことにした。
「今回はこれで終わろうと考えていたんですが、想像以上に君たちに可能性があると感じたのでより詳しく魔法の解説をしたいと思います。みなさん体育館に移動してください」
俺は透に連れられ体育館に移動すると、ちょうど解説が始まった。
「魔法の使い方なんですけど、多くの魔法使いは先人が使ってきた魔法を使います。ですが、先人が使ってきた魔法を改良したりもっと自分に合った魔法に変える人もいます。今回は先人たちが使ってきた魔法を解説します。
火魔法のもっとも基礎的な魔法はイグニスと言います。他の魔法でもイグニスのような魔法があるんですが、時間がないのでイグニスだけ解説します。イグニスは火を出現させる魔法で、もっとも基礎的な魔法です。人によってはイグニスと唱えなくても火を出現させられますが、これはマナ感知に長けている人が得意としている無言魔法です。普通の人はイグニスと唱えることでマナが自動で火に変換され火が出現します。マナ感知が不得意な人はこの変換する作業が苦手なので魔法の名前を唱える事が最善です。
先ほど、魔法が出現しなかった人は勘違いしないでください。あなたたちは魔法を初めて使った人が多いでしょう。初めてのことにすぐ順応できる人なんてそうそういませんし、マナを魔法に変換することはかなり経験がいります。実戦場で私と戦った生徒たちはマナ感知に長けている人だったのですぐに魔法を使えたのです。だから落ち込むことなく魔法を使い続けてください。少し休憩を挟んで、次はイグニスを自分なりに変える方法を教えます」
十分休憩を挟み間藤さんが解説を続けた。
「再開します。もしかしたらみなさんの中には魔法を難しいものと考えている人もいるかも知れませんが、そんなことはありません。先ほど説明したイグニスはマナを着火剤のようにして燃やしていると考えてください。その着火剤をあなたの思う形に変えられるとしたらどんな形にしますか? 実戦場で使った魔法はその着火剤を薄くして広げた感じですね。そして、ジワジワと動かした感じです。マナの形を自由自在に変えるのは経験がいる作業ですのでゆっくり焦らずやってください。
魔法はイメージ次第とは言いますが、少し違います。マナの形を変えたり性質を変えたりすることで魔法自体も変わるので、イメージと言うより工作ですね。木材を好きな形に切るみたいな感じで考えたら分かりやすいんじゃないかな? まぁ、そこに至るまでにまずマナを感じ取れないと意味ないから魔法の授業はちゃんと受けるようにね。私が教えられることはこれぐらいです。もし分からないことや教えて欲しいことがあったら先生に聞くように。先輩攻略者に聞くのもありだよ。
それじゃあ私はこれで帰るけど、落ち込んだりしないようにね。それじゃあまたどこかで会ったらみんなの成長見せてね。バイバーイ」
みんな間藤さんが帰るのを惜しんでいたが、心残りないようにありったけのお別れの言葉を叫んでいた。間藤さんは全員に手を振り最後の最後まで笑顔を見せてくれた。嵐のような人だったけど確実に成長できたのを実感できるいい機会だった。
ゆっくりお待ちください




