120話 神災級レベル
小柄な悪魔との戦いが始まると悪魔は爪を伸ばし近接戦闘を仕掛けてきた。ユース、勝、拓郎さんが近接戦闘を行い、透、春奈、未来さんが魔法で攻撃、メアリーさんはみんなのサポート。俺は準備に時間がかかるトールさんを守るという役割だった。戦いが始まると同時にトールさんがミョルニルを天空へと掲げ言葉を紡いだ。
「我は雷神トールの名を冠する者。そして、ミョルニルを使う者。雷神トールよ我が願いを聞き入れ我に力を授け賜え。我は雷神トールの名においてかの者を打ち倒す力を渇望す。我が肉体と魂を生贄に捧げ、生贄を糧に我が肉体と精神に雷神トールを憑依させ、かの者を打ち倒す力を。誰一人死なせることなく倒せるほどの膂力を。雷神トールと見紛うほどの圧倒的な強さを我に授け賜え!」
トールさんがそう言い終えるとミョルニルが光り輝いた。トールさんの体から雷が溢れ出ており髪の毛は逆立ち手や髪の毛の先端からはバチバチと雷が見えていた。ユースの雷王の剣のような感じだったが、明らかに存在感が違った。さっきの言葉通りなら雷神トールが力を授けたのだろう。その圧倒的なオーラに心を奪われているとトールさんが悪魔の方に向かって歩き出した。そこでユースたちが悪魔と戦っていることを思い出した。ユースたちはそこまで負傷を負っている様子は無かったが、かすり傷がいくつもあった。透たちは魔法でユースたちをサポートしつつ悪魔に攻撃していたが、悪魔は全てを避けていた。人間とは比べ物にならないほどの動体視力で避けているのだろうと思っているとトールさんがユースたちに向かって言った。
「此度の戦い少しは楽しめそうだな。そこの三人、我と変われ久しぶりの実戦なのだ邪魔は許さん」
いつものトールさんとは全く違う口調に驚いているとユースと勝、拓郎さんが俺たちの元に戻ってきた。俺たちは拓郎さんにどういうことなのか問いただすと拓郎さんが説明してくれた。
「あれは雷神トールを自分に憑依させてるんだよ。だから今のトールさんはトールさんじゃない。あれは雷神トールその人だ」
まさかそんなことが出来るとは思っておらず心底驚いていると雷神トールと悪魔の戦いが始まった。雷神トールは雷を利用しての遠距離攻撃とミョルニルを使った近接攻撃のどちらも使い悪魔を翻弄させていた。でも、悪魔は攻撃が掠ることはあっても致命傷となることはなく戦闘センスの高さを見せつけられた。
「小賢しい奴め。貴様から攻撃してきてはどうだ? 逃げているだけじゃ楽しめないであろう?」
「それじゃあお言葉に甘えて!」
そう言うと悪魔は目にも止まらないスピードで移動し始めた。どこに悪魔がいるのか目で追えないでいると隣にいた拓郎さんが口から血を吐いた。拓郎さんを見ると背後から悪魔の爪によって胸を刺されたようだった。俺は悪魔に対してすぐに爆発魔法を撃ったが、悪魔は自慢の身体能力で逃げた。俺はすぐに拓郎さんを治癒魔法で治療した。
「卑怯だぞ!」
勝がそう叫ぶと悪魔が言った。
「卑怯? これは殺し合いなんだぞ。卑怯もクソもあるか。それに、自分より強い奴より弱い奴いじめる方が楽しいからな。雷神トールなんて勝てねぇんだし他の奴ら狙う方が賢いだろ」
悪魔は色んな場所を移動しながら話しているため至る方向から声が聞こえてきてどこにいるのか位置を把握出来ないでいた。そんな時雷神トールが言った。
「面倒だな。おい、貴様ら自衛の準備をしろ。奴の動きを止めるために広範囲攻撃をする。逃げ遅れた奴諸共やるからな」
「全員俺の周りに来てください!」
俺はみんなを守るために拓郎さんの近くに寄るように呼びかけた。すると、悪魔は俺たちの方に向かってくる途中のメアリーさんの背中を爪で傷つけた。メアリーさんは何とか俺たちの所まで来たので俺はプライシディウムを発動させた。拓郎さんの治療を終えるとすぐにメアリーさんの治療にもあたった。
「準備は良いな悪魔よ。我が何故雷神と呼ばれているか見せてやろう」
そう言うと雷神トールはその空間を埋め尽くすほどの雷を発生させた。プライシディウムが壊されるんじゃないかと思うほどの雷に驚愕していると雷が収まった。すると、小柄な悪魔は雷をモロにくらっていたのか全身ボロボロな姿になっていた。さすがにあれを受けてはもうまともに戦えないだろうと思っていると悪魔が言った。
「あーいってぇ……もういいやお前から殺す。どうせあいつらじゃ僕には敵いっこないし。お前を殺してから絶望の淵であいつらを弄んでやる」
「ほぉ我の攻撃をくらってもそんな戯言を吐けるとは。なかなかにタフな奴もいたもんだ。どれ、本気を出してやろう」
そう言うと雷神トールは今までよりさらに過剰に全身に雷を纏った。近くにいるだけで感電してしまいそうなほどの雷で悪魔に突っ込んだ。そのスピードは落雷とほぼ同じスピードだった。そのスピードから繰り出される威力はとてつもないもので、悪魔の左腹部はミョルニルで抉り取られていた。これならいけると思ったその時、雷神トールが言った。
「軟弱な体だな。たった一撃で脚が壊れるとは」
トールさんの体が雷神トールの力に耐えられず脚が肉は裂け骨がボロボロに砕けていた。その脚は見るに耐えなく俺たちは目を瞑った。すると、悪魔が言った。
「ははは、雷神トールとは言え人間の体じゃ満足に戦えないんだ。じゃあもう僕の勝ちじゃん。どう痛ぶってやろうかなっ!」
悪魔はテンション高めで言っていた。左腹部を抉られたとは思えないほど愉快だった。すると、雷神トールが言った。
「敵の弱い部分しか見ていないのにもう勝利宣言か。モンスターも弱くなったな」
「はぁ? この状況からどうやって逆転するんだよ。それともただの戯言かぁ?」
悪魔の煽りに対して雷神トールがミョルニルを掲げて叫んだ。
「雷鳴よ、雷神トールの名においてかの者に粛清を!」
そう叫んだ刹那、悪魔に無数の落雷が発生した。魔法では到底再現不可能な芸当に驚いていると落雷が収まった。小柄な悪魔は地面で完全に動きを止め死んだように思えた。俺はプライシディウムを解除しすぐにトールさんの脚を治療しに向かった。すると、雷神トールが話しかけてきた。
「トールに伝えておいてくれ貴様の体で無理をしてすまなかったと」
「分かりました。伝えておきます」
そう言うと雷神トールがいなくなったのを感じ取った。オーラが無くなった感じがしたのだ。でも、トールさんは目を覚まさなかった。とりあえずトールさんが目を覚ました時に痛みを極力感じないように莫大な量のマナでトールさんの脚を治療した。みんなもトールさんを気遣うように駆け寄ってきた。俺が治療を終えてもトールさんは目を覚まさなかった。ユースが心配そうにしていたが、メアリーさんたちが大丈夫だと慰めていた。その時、聞きたくもない声が聞こえてきた。
「あー痛かった。マジで死ぬかと思った」
何と悪魔が生きていたのだ。俺たちはどうしてという疑問が浮かぶより先に戦闘体制をとった。すると、悪魔は俺たちの方を見て笑みを浮かべた。
「ラッキーまだいるじゃん」
悪魔のバケモノじみた強さに恐れを抱いているのか全員動けないでいた。俺はみんなを守りながら戦うのは無理だと察しヤンウェイで全員を避難させた。誰もいなければ正直なところこの悪魔には負ける気はしない。龍王を見たから感覚が狂ってしまったのかも知れないが、こいつからはそこまでのオーラは感じなかった。そんなことを思っていると悪魔が言った。
「何々、英雄気取り? 俺が犠牲になるからみんなは逃げろって感じ? ほんっとうに人間って馬鹿だよね。絶対に一人より全員で戦った方が強いのに」
「どうせお前のことだからみんなを先に狙うだろうから俺しか攻撃させないようにしたんだよ。ほんとモンスターって知性ないよな」
俺は悪魔を煽るように言うと悪魔が反論してきた。
「人間の身体能力とパワーで僕に勝てると思ってんの? 知性あるんだから君も逃げたら良かったのに。ほんと人間って知性あるのに馬鹿だね。まぁ僕としては退屈しないからありがたいけど」
「さっさと掛かってこいよ。ビビってんのか?」
「分かった分かった。英雄気取りの死にたがり屋さんは僕の手できっちり殺してあげるから」
そうして俺と小柄な悪魔のタイマンが始まった。正直言って死嫌のリングも反応してないし龍王とじいちゃんから、武帝の三人に比べればこいつなんて何とも思わない。武帝が言ってた本能がヤバいって感じもしないから大丈夫だと確信していた。何ならここらで自分がどれだけ成長したのか確認する意味もあったりする。悪魔はそんなこと知らないまま戦うことになるだろうが、知った時どんな顔をするのか楽しみですらあった。
次回もお楽しみに




