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忘れられた記憶の断片から力を得れる俺は小出しで成り上がる  作者: 描空


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1話 入学試験①

 ここは現代社会とは似て非なる世界。世界各地にはダンジョンが点在しており、その中には1つで遊んで暮らせるほどの金額になるアイテムや莫大な力を得られるアイテムが眠っている。一攫千金を狙う者や力を求める者はアイテムを求めダンジョンを攻略するようになり、いつしか彼らは攻略者と呼ばれるようになった。

 だが、そんな美味しい話に裏が無いはずもなく、ダンジョンには恐ろしいモンスターが生息している。人間なんかが到底敵わないモンスターが。攻略者はそんなモンスターと戦いながら必死の思いでアイテムを持ち帰る。攻略者とは常に死と隣り合わせなのだ。だが、価値のあるアイテムを探し求める者が後を絶たない。一攫千金を夢に見てダンジョンから帰らなかった者は数知れず。

 だから政府はダンジョンに挑めるのは高校生以上と法律で決めている。これは大抵の国もそうしている。若い人材がダンジョンで命を落とすことは国にとって損失だからだろう。高校生になったからと言って、ポンポンダンジョンに挑めるようになるわけでは無いのもその一つだろう。

 これはそんなハイリスクハイリターンな世界に足を踏み入れる1人の高校生を描いた物語である。

 俺は小出健斗どこにでもいる中学三年生だ。俺は中学三年生ということもあり進路に悩んでいる。担任の先生からは早めに決めないと攻略者にはなれないと念押しされた。正直言って、攻略者なんて言う危険な職業は俺には向いていないと思ってあまり考えていなかった。でも、いつメンのみんなは違った。


「みんなは進路決まった? 私は光正(こうせい)に行こうと思ってるんだ」


 そう言う彼女は羽栖(うすみ)春奈。俺の幼馴染でいつメンの一人だ。


「俺は五大で悩んでる最中」


 そう言うこいつも春奈と同様幼馴染でいつメンの相川(まさる)だ。あだ名はまっさー。


「僕は自分の入れる所で良いから春奈と同じ所にしようかな」


 そう言うこいつも幼馴染でいつメンの中村透だ。


「健ちゃんは?」


「お、俺も入れる所で一番実績の良いところかな?」


 春奈に問われ俺は咄嗟に嘘をついてしまった。俺は三人みたいに明確に攻略者になりたいと思っていないのに、さもなりたいように話してしまった。俺が心の中で一人で焦っていると春奈が言った。


「それじゃあみんなで光正受けようよ。それで高校も四人で一緒に過ごそ!」


 春奈の明るく元気な言葉に反論できず、その場は終わってしまった。俺は一人でどうしようか考えた。まっさーが言っていた五大と言うのは、日本五大攻略校という名前で知られており、攻略者になりたい中学生の九割が五大のどこかを受けると言われている高校だ。そんな超有名校に俺のような嘘ついて受けるような奴が受かるはずがない。つまり、いつメンの中で俺だけ落ちる可能性があまりにも高い。このままだといつメンと疎遠になり俺だけボッチの高校生活を送ることになる。それだけは回避しようと俺は放課後に担任の先生に相談に乗ってもらうことにした。


「相談って言うのは?」


 開口一番担任の先生がそう聞いてきた。俺は率直に現状を話した。


「友達が光正を受けるっぽくて、俺はそんなつもりなかったんですけどその場の勢いで受けるって言っちゃって……でも、俺攻略者になるつもりなくて全然そっちの勉強してないからどうしたら良いんだろうって……」


 俺の心配とは裏腹に先生はあまり深く考えずに言葉を発した。


「別に受けたら良いんじゃない?」


「え、でも俺なんか受からないですよね?」


 俺は先生の言葉に自分の思っていることを言った。すると、先生は詳しく話してくれた。


「光正の入試はちょっと変わっててね、勉学が問われることは一切なくて、入試で行われるダンジョン攻略の成績のみが判断材料なんだ。それに、ダンジョンに入ったこともない中学生に高難易度のダンジョンなんてあり得ないだろ? だから、光正は案外簡単に受かるんだよ。でも、その分光正は卒業するのが他の五大より比較的難しいけどな」


 先生の言葉を聞いて俺は少し安心したと同時に心配になった。俺は光正についてあまり詳しくないので今のうちに先生に聞いておくことにした。


「ちなみに試験内容ってどんな感じですか?」


「光正が管理してるダンジョンで一番難易度が低いダンジョンに入って、アイテムを持って帰るだけ。簡単だろ?」


「い、いや簡単じゃないと思いますけど」


「でも、光正の合格率は結構高いんだけどなぁ……ちなみに光正は他の五大の滑り止めのために受ける生徒が多いから結構な数を取ってるぞ。多分小出でも受かると思うぞ。体力テスト結構良い結果だっただろ?」


「そんなに簡単なんですか?」


「うん。物は試しだ受けてみろ」


 先生の言葉を鵜呑みに俺は光正の入試を受けることにした。みんなの前でさも一緒に光正に行く感じをしておきながら直前で裏切るなんてことはできなかった。


「楽しみだけどちょっと怖いね光正の入試。まぁ私たち中学生だし簡単だと思うけどね」


 春奈が俺たちにそう言った。入試がもうそろそろといった時期になってきてみんな意識し始めたのだろう。先生に相談に乗ってもらって入試を決めることにした日からゆっくり着実に体力をつけるために毎日筋トレとランニングをしていた。だから、少しばかり自信がついてきていた。前光正を受けることを話した時より自分に自信を持てるようになり入試にも自信を持てるようになった。


「自分自身に大丈夫だって言い聞かせたら少しはマシになるぞ」


 俺は春奈に自信を持たせようと声をかけた。すると、春奈は深呼吸をした。


「ちょっとだけ気が楽になった。ありがとう健ちゃん」


 春奈の言葉に続くように勝が言った。


「みんなは入試対策何してる? 俺はネットでダンジョンがどんな感じかとか筋トレぐらいしかしてないけど」


「私は筋トレじゃなくてランニングかな」


「僕もランニングだね。過去問が無いから掲示板で聞き込みしたり過去の書き込みを見たりして何とかって感じ」


「俺は勝と同じかなランニングもちょっとしてるけど」


 俺たちの話を聞いた勝が言った。


「じゃあ俺の家でみんなで入試対策しようぜ」


 勝の言葉に俺たちは放課後勝の家で入試対策をすることにした。勝の家はかなり大きく三階建てとかなり大きく広い庭もある。それに筋トレ器具がかなり揃っており体力作りにはもってこいだ。俺は早速筋トレをしようとしたが、透に止められた。


「先に僕が集めた情報をみんなに共有するから筋トレは後でしよ」


 俺は頷き透の集めた情報を聞くことにした。


「まず、過去の書き込みについてなんだけど、これは結構バラバラで難しかったって言う書き込みもあれば、簡単だったって言う書き込みもある。掲示板では担当者の違いから試験難易度が変わってるんじゃないかって言われてる。年度によって変わってるから担当者の違いが難易度に影響してるのは間違いないと思う。聞き込みなんだけど、実際に光正の先輩方に入試について聞いたんだ。一年の先輩は簡単だって言ってたけど、二年の先輩は難しかったって言ってた。三年の先輩は不在で聞けなかったけど、もしかしたら僕たちの時は二年の先輩たちと同じく難しくなるかもしれないってのが僕の見解かな」


 透の有益な情報に俺たちは賛辞を送った。


「それじゃあみんなで筋トレをしようか」


 勝が言った。俺たちは入試まで時間が残されていないことを理解していたためすぐに筋トレを行った。合トレをするのは初めてでいつもより筋トレが楽しくいつもより自分自身を追い込めた。その日は勝の家で晩ごはんまでご馳走になった。


「小学生の頃を思い出すわねぇ。最近は全然みんなでうちに来てくれないから寂しかったわ」


 勝のお母さんの言葉に俺たちは何故だか自然と微笑んでいた。それから俺たちは思い出話に花を咲かせていると、勝のお父さんが帰ってきた。最後に勝のお父さんと会ったのは先に話していた小学生の頃まで遡るため勝のお父さんは俺たちの成長ぶりに心底驚いていた。それから勝のお父さんとも話をしていると時間はあっという間に過ぎてしまい、夜の十時になってしまった。俺たちの家は互いに近く、走れば五分で家に着く距離に位置している。そろそろ帰ろうとしたところ勝両親が今日は遅いから泊まって行きなさいと言ってくれた。俺たちはお言葉に甘えて勝の家に泊まった。親には勝のお母さんが連絡してくれ俺たちは心ゆくままにみんなと夜までおしゃべりをした。


「みんな起きなさい!」


 勝のお母さんが起こしに来てくれた声で自分たちがしゃべり疲れて寝落ちしてしまったことに気がついた。俺たちは大きなあくびをし、眠い目を擦りながら身支度をした。朝食も勝の家で食べそのまま学校に向かった。それから俺たちは毎日のように勝の家で入試対策をすることが日課となった。


 入試まで一週間となった日、学校で俺たち四人を含む数十名程度が先生たちに呼び出された。俺たちが一緒であることから入試のことだろうと思った。


「集まったな。ここにいる皆は後日光正高校の入試を受けるライバルでもあり、協力するパートナーでもある。何を言っているか分からないと思うが、光正の入試内容を聞いたら理解できるだろう。君たちが受ける攻略校の入試がかなり特殊なのは知っているだろう。光正もその例に漏れない。光正は受験者がダンジョンからアイテムを持ち帰ることで入試の点数を付ける。詳細は分からないが、アイテムのランクや数に応じて点数が上がるだろう。入試は個人戦だが、光正は受験者同士で協力することも敵対することも禁止していない。つまり何でもありだ。今のうちに協力する者を集ったり仲を深めておくように。一つ助言をしておくと光正は定員よりかなり多くの人数を合格させる。敵対するより協力することの方が得なのは中学生でも分かるだろ?」


 俺たちはどうしようか話し合ったこのまま四人で入試に挑むのも良いが、もっと人数がいた方が良いだろうなど話し合った。そんな時俺たちは声をかけられた。


「もし良かったら俺たちと組みませんか?」


 そちらを見ると、そこには俺たちと同じような幼馴染だと思われる三人がいた。男三人で一人はリーダー気質で二人はどこか自信なさ気だった。俺たちはすぐに答えることはなく少し話し合いをさせてもらった。


「どうする? 仲間が増えるのは良いが、もし裏切られたら……」


「先生の話から裏切るなんてことしないだろ」


「分からないわよ。ダンジョンだから何が起こるか分からないし私たちだけで挑も」


 俺たちは協力しないという結論を出した。勝が申し訳なさそうにさっきの人たちに伝えてくれた。三人は少し残念そうにしていたが、仕方ないよなと分かってくれた。何組か手を組もうと言ってきたが、俺たちは全て断った。しばらく経ち、先生が解散を言い放った。あと一週間俺たちは最後の追い込みをかけた。入試前日は体を休めてしっかりと眠り入試に挑んだ。


 入試当日俺たちは共に光正に向かった。道中同じ中学の奴も何人かいたが、他校の生徒もかなりいた。俺は深呼吸をして心を落ち着かせた。今まで頑張って体力作りしたんだから大丈夫だと自分に言い聞かせた。光正高校に着くとそこには数え切れないほどの生徒がいた。俺たちは受験票を受付に持って行き何とか落ち着けた。体育館で待つように促されたので指示通り待っていると光正の教師たちが集まってきた。いよいよ始まるそう思うと心拍数が上がった。でも、なんだか嫌な感じはしなかった。俺は高揚感を覚え目を閉じゆっくりと呼吸した。目を開けると不思議と落ち着いており自分がしてきたことは間違いではなかったと確信した。


「今回光正大学附属高等学校の入学試験を担当する鷲田だ。皆知っているだろうが、試験内容は我が校が管理しているダンジョンに入りアイテムを持ち帰るそれだけだ。禁止事項は特にないが、犯罪行為を行った者は即刻不合格だ。後、持ち込みは禁止だ。必要な物は全て現地調達すること。一度に挑む人数の上限は決めていないが、多過ぎても面倒だろうし、各校に別れて挑んでもらう。数が少ない中学から始める。代表が中学名と人数を報告しろ」


 俺たちは学校別に別れて待つように指示されていたため、リーダーシップがある人たちが率先して行動してくれたため俺たちは静かに待っておくことにした。その結果、俺たちは三番目にダンジョンに挑むことになった。最初の人たちがダンジョンに挑んでいる間、特にやることがなかったのでみんなと話したりして待っていると鷲田先生が体育館に戻ってきた。


「次の奴ら準備しておけー!」


 鷲田先生の声に俺たちにも緊張が走った。ダンジョンがどんな物なのか表面上ぐらいしか知らない俺は少し怖くなってきた。その時、透がスマホを見せてきて言った。


「これ、ダンジョンの攻略動画なんだけど、僕たちが攻略するのはこれより全然簡単らしいから見といたら?」


「ありがと。ちなみに透は怖く無いのか?」


「僕だってちょっとは怖いけど、そもそもダンジョンに入ることすら許されてなかった僕たちに急に普通のダンジョン攻略しろなんて言われないから大丈夫だって!」


「そ、そうだよな心配しすぎだよな」


 俺は自分に言い聞かせるように返事をした。動画を見ると、そこにはゴブリンと戦う人たちが映っていた。彼らがどれほどの実力を有しているのかは分からなかったが、いとも容易くゴブリンを殺していた。アイテムの効果なのかゴブリンが弱いのか分からないが、少しだけ恐怖心は薄らいだ。すると、動画の人が話し始めた。


「これから攻略校を受ける中学生たちいると思うけど、入試には絶対高校の先生がいざって時のためについて来てくれるからそこまで心配する必要はないよ。それに、先生たちのアイテムのランク次第では大きな怪我をしてもあっという間に治っちゃうとか当たり前だから。

 でも、油断はしないこと。ゴブリンだからって素手で勝てるなんて思わないこと。まずはダンジョンの中にあるアイテムを探してそのアイテムで戦うこと。高校によってはアイテムを貸し出しているかも知れないけど、その場合も油断はせずに舐めてかからないように。それと、ソロじゃなくてパーティで行動するように。一人より二人、二人より三人。パーティメンバーを危険に晒さないように。

 今言ったことさえ守っていれば大抵の攻略校は受かると思うよ。それじゃあ頑張れ未来の攻略者たち!」


 動画はそこで終わった。これなら俺にもできると思えてきた。俺は透に感謝を述べてスマホを返した。俺は自分に大丈夫だと言い聞かせていると鷲田先生の声がした。


「次の奴ら準備しておけー!」


 いよいよ俺たちの番となった。俺の心臓は鼓動を高めた。俺はそれを受け入れその適度な緊張に任せることにした。この緊張感ならヘマもしないし迂闊な行動も油断もしないベストコンディションだそう確信した。鷲田先生が迎えに来ると俺たちはダンジョンまで案内された。そこは鉄筋コンクリートで厳重に保護されたシェルターのような建物だった。


「ここの中がダンジョンになってる。制限時間は一時間だ。できることなら複数のアイテムを持ち帰ることを推奨するが、絶対に無理はするな。俺たち先生が途中まではついて行くが、そこから先はお前たち次第だ。もし怪我を負ったとしても大抵は治してやれる。だが、無茶はするな。お前たちはまだ子供だ。そこまでの結果は求めていない。準備が出来た者から入れ。先生たちは最後に入る」


 そう言った瞬間、周りにいたみんなが我先にとダンジョン内に入った。一瞬出遅れたと思ったが、みんなは案外焦っていなかった。俺はいつ向かうのか心配していると勝が一歩踏み出した。それに続いて春奈、透と続いた。俺は自然と最後尾になった。


「頑張れよ」


 鷲田先生が小さく俺たちに言ってくれた。俺にはその一言が大きな心の支えとなった気がした。

のんびり投稿していきますのでよろしくお願いします。次作は恋愛にしようと思ってましたが、やっぱりファンタジーの方が描きたくなったのでファンタジーにします。

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