第二十五話 行こうや荒野 キャットタワータウン
『店内は、軽微な損傷もなく。
怪我人もいません。
以上、現場からお伝えしました。』
…否。
重症…重篤な……加害者がいた。
おこである。
激おこ…… 否。
激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム
である。
なにやら…
既視感のある、
どこぞのドラゴンに自らのホルモンを与えた時のような…
日本の宝のようなドラミング。
が、
壁際で不貞寝する黒猫の尾から発せられていた。
それを不安げな目で見つめる、
白猫もいた。
おっさんも、さすがに哀れに思い、
究極混沌魔石汁を与えようとするが…
ギルマスは床板を掻きむしるばかり。
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とりあえず、何もしていないが――疲れた。
おっさんはカウンターの椅子を陣取り、酒を頼む。
あんなに優雅に世話をしてくれていた女豹メイドが、
今やまるで壊れたペッパー君のようにガタガタと震えながら、お酌をし始める。
「……あんべぇわりぃなぁ」
おそらくはこの店秘蔵の、貴重な一杯なのだろう。
……が、おっさんはグラスをくるくる回しながら、
どこか虚空を見つめて、こう呟いた。
「なんでかんで……焼酎のが飲んだそらすっぺよなぁ……」
――異世界語より、わからないボヤキだった。
陽は登り、落ち…
幾度目かの紅い月が荒野を染める頃…
俺は黒猫と和解した。
要するに、運動不足だったらしい。
石造りの街は、爪を研いでも引っかからないし…
そもそもほぼ平屋しかないこの街では、
他者を見下ろし悦に浸る、
種族的本能が満たされない。
来る日も来る日も…
ストレスを溜め、威嚇しては小動物を狩る。
そんな不遇な人生を過ごして来たらしい。
おっさんは、数日で解決してやった。
【行こうや荒野 キャットタワータウン】
街中に、ステップ、爪研ぎ、見張り台、ダッシュ用階段、肉球が望めるアクリルボウル、
感覚を研ぎ澄ますカーテンレール
不確定方向に動く、偏信起き上がりネコじゃらし。
ありとあらゆる
ネコ好きおっさんの思いつく限りの設備を、
砂塵舞う荒野のバッドランドに施した。
それにより、
砂塵豊富な、
キャットランド
が爆誕した。
第四章 完




