第九話 家、間に合ってます。
「…甲羅をくれる…って?」
あいつ…亀のふりした、中身トカゲとかなんかな?
そして時刻は無事上棟した夕刻に進む…
娘達の証言によれば、巨大な亀が巨木を物凄い勢いでよじ登ってきて、方形屋根を投げ捨てて、
駆け降り居なくなった。
だそうだ。
「甲羅の下どうなってたん?」
モヤモヤして二人に聞くが、あっとゆう間の出来事だったので、よく覚えてない。
だそうだ。
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「いいぞー!がんばれー!」
ユラユラと宙に浮く屋根ユニット。
不思議なことに裏側がない。
地上ではテティスが顔をこわばらせ、なにか我慢するような顔で鼻を赤くし、浮遊の魔法を使ってくれている。
ピッタリと骨組みの上に納まる鼈甲。
2階の床面積は、正方形で30坪。
下階の方が大きいので、バルコニー部分もあるがそこは含んでいない。
建物の一辺の長さは約10メートル。
甲羅屋根が被さり、軒先が約2メートル張り出ている。
「計画通り。」ニヤリ
暮れゆく夕陽に反射し、山吹色にキラキラと輝く。
それはそれは幻想的な光景。
屋根垂木と隅木にしっかり接着剤塗ったし、明日、破風板取り付けて雨樋とかやれば外は竣工でいいな。
「はーふー?」
トゥエラがコテンと首をかしげる。
「あの、屋根の先っちょに棒がいっぱい見えてるだろ?あそこに板をくっつけるわけさ。
ちなみに鼻隠しとも呼ぶんだぜ?」
「ふーん」
どうでもよさそうであった。
浮遊魔法で疲れたテティスは、遠くで自分の鼻を隠している。
「微笑ましい…」
うっすら寒くなってきたので、屋内に入ることにする。
まだ内装は終わってないので、風呂は外の仮設ユニットバスに行くしかないが…
「隙間風もないし、もうここで寝てもよさそうだな、ベッドもないが…」
子供たちを風呂に向かわせ、夕食の段取りを始める。
システムキッチンを召喚してみると…
どうゆうわけか、水もお湯も出るし火もつくので…
「鍋でも作るか、簡単だし。」
ガス台に土鍋を置き、白菜っぽい野菜を一枚づつ剥がしよく洗う。その上に鬼バラ肉を薄切りにしたやつと斜めに切ったネギを置く。白菜、豚バラ、ネギと順番に重ねる。
手で少しおっぺしてから、取りやすい大きさに切り、断層が見えるように鍋の中に入れる。
昆布だし、酒、醤油をだいたいで入れ蓋をして15分くらい煮る。
せりも森に生えてたので、切って散らす。
全体に柚子の皮を刻んだやつをばら撒き完成。
素手で土鍋をテーブルの上のカセットコンロへ運ぶ。
娘達のリンゴジュースを用意して、取り皿と箸を並べて、危ないのでよそって取り分けてやる。
空の缶酒を捨て、氷たっぷりのジョッキに焼酎を注ぎ、頂きます♪
はふはふとうまそうに食べる娘達。
口に合ったようで良かった。
テティスは箸でミルフィーユ豚バラを器用に掴む。
トゥエラには難しそうだったので、先割れスプーンを出してやった。
ちょっとコッテリしたが、ゆずの風味で箸が進む。酒も進む。
〆はうどんかなーと思っていたが、鍋のスープが思ってたより多く残ってる事に気づき、「こりゃアレぶっこむか」
釧路二番の麺だけを鍋へ投入。
安っぽい麺だが、こいつには特性がある。
鍋の出汁をどんどん吸収し、めっちゃ美味しく茹る。
ちゅるちゅると大好評の夕食が終わる。
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なんとなく違和感があり、風呂場予定の部屋にユニットバスを召喚すると…
完成品が現れ、湯船にお湯まで溜まっていた。
「外に仮設で組んだ時は部品が出てきたよなぁ…」
俺が携わった現場の道具や資材が召喚される…
つまりパーツでも完成品でも出るってことか…?
まさかと思い、昔造った建売住宅を…腰袋から出そうとして…やめた。
「恐ろしいわ…」
腰袋の底に、玄関ドアのようなものが…見えた気がした…
家、間に合ってます。
イラストは設計と違いますがなんとなくのイメージです




