第十話 社会人失格である。
こんな人里もない魔境で暮らしてゆくには、
いろいろな不便がある。
大体のことは不思議な腰袋が解決してくれるのだが…
「娘達の着替とか…」
腰袋のなかを漁ってみると、
子供用のピンクのニッカポッカがあった…
あとドカジャンもあった。
ので、トゥエラに着せてみると…
ド派手なお子様職人が誕生した!
マチェットナイフは使う時以外は物騒なので、ミニ掛矢を出してやると、肩に担ぎ片手を腰に。
ベテランの風格である。
自分の世界に入っているトゥエラを、
少しひきつった顔で見ているテティス。
彼女には…
ガサゴソするとシュッとした上下のデニムが出てきた。
「最近こうゆう作業服多いよな」
作業服とは思えないような値段で、おっさんは近寄ることはなかった。
作業服屋での思い出だ。
テティスにも服を渡してみると、家の中で着替えてきた。
恥ずかしそうに鼻を隠している。
「微笑ましい…」
最近は生活に必要な家具や小物などをまったりと作っている。
最初は3人分のベットだった。
角材に製材した材料で、娘達は仲良しなので、二人で寝かせればいいかと思い、天蓋つきのキングサイズベットにした。
いい感じの琉球畳が腰袋にあったので、それにサイズを合わせた。
朱色と白のペンキで塗装して仕上がると…
首里城みたいになっていた。
俺のベッドは普通だ。
いや普通以下だ。
箱作って板のせただけ。
手抜きもいいとこである。
だが腰痛は辛いので、マットレスも作った。
昔、飲食店やスナックなどでさんざん作らされた、
コンパネにウレタンフォームを乗せ、革で包み裏側をタッカーで止めたものだ。
寝心地は…普通だ。
あとは、あちこちに棚や引き出し付き収納なども拵えたが…
メシを食うテーブルも作り直した。
日本では値段が高くてちょっと手が出なかった、いい雰囲気の一枚板。
今となっては、卸問屋ができるほど在庫がある。
とくに木目も綺麗でかっこよかったウォールナット風の板、幅1メートル、長さ2メートル、厚み15センチほどの重量もあるどっしりとした板を…
縦半分で裂いてみた。
もったいない?ノンノン。
2枚になった板をひっくり返し真ん中に隙間をあけて並べる。
この作業は、こないだ亀を殺しそこなった鉄板の上でやっている。
端部を余った板切れで塞いだら、レジン液を流し込む。
すこーしづつ…だ
レジン液自体にも少しづつ着色をほどこしながら何層にもグラデーションになるように流す
板の厚みまで入ったら、
数日間放置する。
完全に硬化した頃合いに、電動回転式紙鑢で荒いヤスリからガンガン削り、だんだんと仕上げてゆく。
ヴイィィィィィィィィィィィィィィ!!!
と唸り声をあげる機械。
そのまま使っては、粉塵がやばいことになるので、
集塵機のホースを繋ぎ連動させる
この研磨作業も数日かかる。
なぜなら…
飽きて酒が呑みたくなってしまうからだ。
二時間ほど作業しては休憩し、午後少しやったら呑んでしまう。
社会人失格である。
まぁおっさんは、異世界の樹海の仙人になったので、別にいいだろう。
そんなこんなで、顔が映るほどの輝くレジンテーブルが完成した。
「まぁまぁだな。」




