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出会い②

 拓人ん家から我が家までの大した距離でもない、見慣れた道を歩くあたしと拓人。


「ねえ、拓人」

「ん?」

「拓人って彼女いる?」

「……はい?」


 隣にいる拓人をチラッと見上げると、めちゃくちゃ真顔な拓人と目が合った。なんなら『なに言ってんだ、こいつは』みたいな、ちょっと冷めた目で見ているような?


「あたしが知らないだけで彼女がいたり、なんてことは?」

「はあ? いや、彼女なんていたら真っ先に舞には言うでしょ」

「ということは……?」

「いませーん」


 よかったぁ……と謎に安心するあたし。だってさ、拓人に彼女がいたら、さすがに今の距離感ではいられないでしょ? “鬱陶しい嫌な幼なじみの女”みたいなレッテル貼られるのも嫌だし。……まあ、中学卒業して高校へ行き始めたら、さすがに彼女のひとりやふたりは出来るよね。うーん、いい加減あたしも拓人離れしなきゃいけないのかなぁ?


「送ってくれてありがとう。じゃあね」


 家の中に入ろうと玄関の取っ手に触れた時、後ろからグッと腕を掴まれた。いきなりだったから、かなり驚いてビクッ! と体が跳ね上がる。


「ひっ!? ちょ、いきなり何!? もぉ、びっくりしたなぁ」


 腕を掴んだのはもちろん拓人で、拓人となぜか驚いてる始末。


「あ、ああ……悪い悪い。あのさ、あの話。別に冗談ってわけでもないから」


 ・・・えっと、『あの話』とは?


「え? あの話ってなんだっけ?」

「万が一、舞が貰い手見つかんなかったら俺が貰ってやってもいいよって話」


 こういう時の拓人って、いまいち何を考えてるのか分かんないんだよね。


「えっと、そりゃどうも?」

「なんで疑問系なんだよ」


 あたしの髪をグシャグシャしながら撫でて笑いつつ、『じゃーな』って手を振って去って行く拓人の後ろ姿をただ呆然と眺めるあたし。


「……なんだったんだろあれ。謎すぎる」


 ── 1週間後


「あ、舞」

「ん? なに~? お母さん」

「悪いけど学校帰りにロウソク買って来てくれる?」

「ああ……はいはーい、ロウソクね~。じゃ、いってきます」


 古びた玄関ドアを開けて外に出て、壊れかけてる門扉に手をかけた。


「ロウソク、ですか」


 突然ですが皆さん、“ロウソク”ってご存知ですか? 皆さんはロウソクって何に使います? 七瀬家では時々“電気”の代わりに使います!


「はぁ、そうか」


 どうやら電気料金の支払いが間に合わなかったらしい。ま、これも七瀬家あるあるだから特に驚くことでもないし、1~2日我慢するだけだしね。


 我が家はこれを“ロウソクパーティー”と呼んでいる。なんでもかんでも“パーティー”をつければいい感じなるでしょ! という馬鹿げた思考が丸分かりのやつ。


「ロウソク買うなら、あのホームセンターが一番安いかなぁ」


 そんなことを考えながら歩いていると、少し前に律が歩いていた。


「おーい、律~」


 あたしがそう呼ぶと足を止めてゆっくり振り向いた律は、ヒラヒラと手を振ってる。こうやって見ると律って意外と……イケメン? 顔はお父さん似だから、わりと整った顔してるんだよなぁ。どうか中身だけはお父さんに似ないでくれ……と願うばかり。


「あれ、慶は?」

「友達と先に行ったよ」

「そっか。……あ、ちなみに今日ロウソクパーティー開催するから」

「おお、マジですかぁ。それは大変ですな」


 拍子抜けするほど無関心というか、他人事というか。


「なら俺、学校終わりにロウソク買って帰ろうか?」


 ほう、どうやら全くの無関心・他人事ってわけではなかったらしい。ちょっと安心したわ。泣いても喚いてもあんただって七瀬家の一員なんだから。


「いや、あたしが買いに行くからいいよ」

「お若いというのに精が出ますな」


 いや、誰だよ、おまえは。どんな立ち位置にいるんだよ。たまに律が何者なのかが分からなくなる時がある。


「じゃ、学校頑張ってね」

「舞もね」


 あたし達は背を向けて、反対方向へ足を進めた。


 しばらく歩いてると、ゆっくりとあたしを追い抜いてった1台の車。パッと見でも分かるほどの高級車が少し先で停車して、ハザードを点灯させてる。あんな高級車あたしとは無縁だな、そんなことを思いながらその高級車を通り過ぎようとした時──。


「おい」


 突然声をかけられて、少しビクッとしながらも声がしたほうへ顔を向けた。顔を向けた先には窓を開けて、あたしに話しかけてきたであろう男が車内から、ジッとあたしの顔を観察するように見ていた。


 え、ちょ……なっ、なに?


「ふーん。お前がジジイの言ってた女?」

「……へ?」


『ジジイの言ってた女?』って何? ていうか、マジで誰? こんな男知らないんだけど。


「まぁまぁだな」


 小馬鹿にするような感じでフンッと鼻で笑われる。それがどうにもあたしの癪に障った。マジでなんなの、こいつ。


「……いや、なんなの? てか、あんた誰?」

「んー、中の上くらいか」

「……は?」


 なんだろう、この男。危険な匂いがする。


「もしくは上の下……か? まあ、言うほど不足はなさそうだな」


 あ、“危険な匂い”って要は“クズっぽい”ってことね? お父さんとはまた違う感じのクズさを感じる……というか、段違いでこいつのほうがヤバい気がするのは気のせい? いや、気のせいではないと断言する。


「ま、俺の女にしてやってもいいけど?」


 ナニをイッテンダこいつは。


 にしてもこの男、顔面偏差値たっかーい。無駄にイケメンすぎるとは、まさにこの男のことを言う。女に困ったこともなければ、絶対にフラれたこともないだろうなぁ。自信に満ち溢れすぎちゃっててなんだか眩しいわ~、目が痛い痛い。


 “俺の誘いを断る女なんて、この世に存在しない”と言わんばかりのドヤ顔してるし、相当な自信家さんだね。


 うん、ないな、ナイナイ。こういう男と関わると、ろくなことがないって相場は決まってる。となると、あたしが今すべきことは?


「うあっ!! なにあれ!? UFOじゃない!?」

「あ?」


 男があたしから目を逸らした瞬間、猛ダッシュで逃げた。


「おいっ!! 待て!!」


 この状況で『待て』って言われて待つ馬鹿がどこにいんのよ……って、これデジャブ!? まさかのデジャブじゃん!


 あの老人といい、あの男いい、一体なんなの? あたし、命でも狙われてます!? 何もしてないのに!? あぁもお、最っ悪! なんなのマジで、非常に怖いんですけど!?


「ハァッハァッ、ほんっと勘弁して!」


 あたしは死に物狂いで爆走した──。



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