↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御用猫  作者: 露瀬
58/150

死剣 人取り 23

「……お手柄だったな」


「役に、立つ女だと……言ったでしょう? 」


 そうだな、と、御用猫は頷く。


 最後の最後に、ガンタカの隠形が崩れたのは、みつばちの放った癇癪玉のおかげだった。


 小指の爪ほどのそれを、親指で弾いたのだという。


 志能便として、修行を積んだ、みつばちの指弾とはいえ、直接にガンタカを狙ったのなら、躱されたか、弾かれたかしたのだろうが。


 足元を狙った、殺意無き技に、ガンタカは反応出来なかったのだ。


 確かに、役に立った、他に表す言葉がないほどに。


 御用猫は、両の手袋を外すと、横たわるみつばちの頭の下に敷き、少し冷い額から、髪の毛を剥がしてやる。


「馬鹿なやつですね……死体が動くのは、自分が、一番、知っていたでしょうに」


「少し休め、傷に障るぞ」


 御用猫は、隣に腰を下ろし、みつばちの頭を撫でる。


「先生……お怪我……」


「良いから、少し寝ろ、俺のは擦り傷だ」


 脇腹の傷は、肋骨で剣が滑ったおかげで、内臓に傷は付いていないだろう。


 ガンタカには、既に、骨を断つ力は残されていなかったのだ。


 軽傷では無いが、死にはしない。


「嫌です……約束が、ありますから」


 まだ、眠りたくは、無いのだと。


「心配すんな、怪我が治ったら、聞いてやるよ」


「先生は、嘘つきです」


 みつばちは、少し、辛そうに、目を閉じた。


「後悔は、一瞬だとか言って、嘘です……もっと、ずっと……色んな事」


 御用猫は、震えるみつばちの手を強く握った。


 温かい。


 まだ、温かい。


「普通の、女の子みたいに、恋だの、愛だの、も、したいです」


「出来るさ」


 弱々しくも、みつばちは、手を握り返し。


「……先生が、教えて、くれますか? 」


「それはやだ」


 御用猫は、きっぱりと断った。


「何でですか、胸が無いからですか、さらしを取れば、多少はありますよ」


「血が止まってるからかな? 」


 そもそも、腹を刺されて死にかけの人間が、これ程に喋る事が出来ようか。


「変り身の術です」


「変わってねーだろ、刺さってるし」


 内臓の位置を、ずらして受けたのだと、みつばちは言う。


 馬鹿げた話だと思ったが、腹の中に呪い札が埋めてある、と聞いた時は、流石の御用猫も、志能便の業の深さに、呆れる他はなかったのだ。


「でも、約束は約束ですからね」


「それは、聞いてやるって言っただろ? 」


 意外な返事だったのか、みつばちは言葉を止めた。


 いつものように、感情のこもらぬ瞳で見つめてくる。


 いや、僅かに、こころの灯が見えるだろうか。


「……良いんですか? 」


「隙を作る為に、わざと刺されたんだろ? ……下手すれば、死んでたんだ……感謝こそすれ、文句がある筈ないだろう」


 そうですか、と、みつばちは目を閉じた。


「先程、犬笛を吹きましたから、知能は低いですが、犬並みの聴力をもつ、黒雀が来るはずです、先生も、治療の呪いを、かけてもらってくださいね」


「わかったから、いい加減、休め、痛くない訳じゃ無いんだろ」


 みつばちの頭を撫でながら、目と口を閉じていれば、可愛い奴なのかも知れないな、と考えた。


「先生が、優しいのは、珍しいですから」


 勿体無いです、と、こちらも珍しく、歳相応の笑顔を見せる、みつばちに。


 御用猫は、前言を撤回したのだった。









幽霊の、正体見たり、枯れ尾花


枯れ女、正体見たりは、後ろ帯


誰が決めたか裏表


明日のお天道、裏表


御用、御用の、御用猫











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。