第5話 無双コロシアム
〜無双コロシアム〜
今、俺は謎の殺気に包まれている。しかし、確かではないがどこからか誰かを憎む感情が風に乗ってくる。でもなぜその人間が殺気を放っているのか。もしそれが運営側に対する怒りでできたものなら、このイベントに参加する必要性を感じない。このイベントは約200人の中からたった3人だけが賞金を得られる。確率でいうと賞金を手にすることができるのは1.5%のみ。しかも賞金が手に入っても相手がプレイヤーのこのゲームは経験値が少しも上がらない。ヴァンクールオンラインは敵モブと判断されるもの以外からは経験値を得ることはできないのだ。そんな中で冷静さを保てないプレイヤーがこのイベントに出るとは考えにくい。早くこのゲームから出たいという気持ちだけなら外で狩ってた方が得をするし、イベントなんて知らんこっちゃないはずだ。ここにいるのは、自分たちがゲームに閉じ込められたことを理解し、その事実を受け止められているプレイヤーのみだ。それならば、この異様な殺気の正体は何だろうか。どちらにせよ、このゲームに俺は勝たなければならない。そのためにも冷静さを保ち、この汚れきった空気の中から希望を見い出すことが鍵となるんだ。どんなプレイヤーが攻めて来ようが、どんなプレイヤーが残ろうが今の俺に求められているのは優勝という希望にたどり着くだけ。そのためにも集中をしよう。もしかしたら闘っていけばこの殺気の正体を知ることができるかもしれない。
「残り1分です。各プレイヤーは戦闘準備をしてください。今回のステージは「古都 ヴューヴィル」です。このステージにギミックは仕掛けられていません。参加人数は192人です。」
始まる。この戦いで勝って賞金を入手し、武器防具を強化してヴァンクールオンラインをクリアする。そして、すぐに悠人を連れ戻す!今回のイベントのために俺は魔晶石、つまりは魔力の籠められる水晶を埋め込んだ剣を用意した。だけど今は使わない。最初は魔法で戦うんだ。
「ゲームを開始します。10・9・8・7・6・5・4・3・2・1スタートです。」
始まった。まずはあの塔を確保しよう。敵の気配は感じない。今だ!できるだけ音を立てずに走る。向こうに敵が3人見えるがどうやらグループを組んでるみたいだから上から狙おう。音を立てずに静かに上がる。やばい、違うやつに気付かれた。下から上がってくる。狙い定めて、
「闇よ、火の力で切り裂け、フラムクーペ!」
塔を走るように降っていく。相手は抵抗しようと手を出しているがもう遅い。フラムクーペが相手を切り裂く。これでやっと1人だ。他でも何人かやられているらしい。残りのプレイヤーは192分の185人だ。順調順調。よしてっぺんにたどり着いた。この塔の高さからして狙えるのは半径80m程度が限界だな。とりあえずさっきの3人を。
あれ?いなくなってる。移動したか?でも気配はある……違う。この感じは殺気だ。あいつか、暴走してやがる。
あれはオーバーキルだ、完全に。敵モブに対するオーバーキルは、レアドロップの出る確率が上がる。しかし、相手はモブではなくプレイヤー。このゲームは死んでもレベルや所持品お金をもったまま生き返ることが可能だからオーバーキルすることに意味はないのだ。しかし、ここで彼にとどめを刺すのはもったいない。彼のおかげで開始から25分しか経っていないのに192分の123人しか残っていない。そう、彼を生かしておくことで魔力を消費せずに人数をへらせるよしまた少しずつ減っていく俺も負けていられない。
「聖よ、水の力を放て、アクアエクスプロジオン!」
〜残り45分〜
残るは俺を含めた4人。全員が俺の目の前に並ぶ。
1人目は、先ほどと暴走してた殺気男。魔術式格闘家のようなスタイルで、このゲームに参加した、レイパドというプレイヤーにウロボロスのことで口論になり怒りがあふれていたらしい。プレイヤーネームはガラン。
2人目は、クールなメガネの弓使い。今俺たちが戦わずにいるのは彼の一言「決着は残り30分につけましょう。各々休憩したいでしょうし、僕も本気の皆さんとぶつかりたい。意義がある人はいなさそうなのでよろしいですね?」から始まった。彼のプレイヤーネームはクラフ。
3人目は、以外にも女性。年齢的には俺と同じぐらいの子でとても可愛らしい。魔法使いでプレイヤーネームはユキナ。俺と同じ日本人だ。
只今の残り時間は35分。残り5分で再戦する。クラフは弓から右手に短剣と左手に魔晶石。魔晶石は単体で持つことによって、威力は上がるが制御は難しくなる。おそらくこのクラフという人は相当な腕を持っている。ユキナは鉢合わせした時と同様に杖を持っているため、近接魔法で挑むのだろう。ガランは殴る気満々なのだろう。指をバキバキ鳴らしている。俺も例の剣を取り出す。残り1分だ。それぞれ少しずつ距離を取る。集中をすると時間が早く感じる。残り30秒。剣を強く握る。相手を睨み、剣を前に構える。10・9・8・7・6・5・4・3・2・1
「ゲームスタート!」




