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英雄=掠奪者、あるいは欲望に従う者  作者: 軌跡
第一章 二度目のトロイア
23/23

第23話 自覚

「……」


 そんな女に惚れるなんて、オレステスも苦労する。

 ちょっと同情したい気持ちが湧いてきた。――とはいえ彼を慰めたところで、逆に傷を抉るだけだろう。男同士、それぐらいのことは察したい。

 ベッドから起き上がって、俺は全身の動きをチェックした。

 身体の痛みはどこにもない。……当然か。一回死んで、蘇った後なんだ。傷が残ってたら訴えてやるぐらいである。


「よし、んじゃ行くか。向こうの様子も気になって仕方ねえし」


「えっ、もう? 少しぐらいはトウキョウの見物したかったのに……」


「俺はそういうのに頓着しねえ男だよ。強請るんだったらオレステスみたいなやつにやってくれ」


「――」


 一瞬で訪れた沈黙。祭りの後とはこのことか。

 俺は慌てて、ヘルミオネに謝罪の言葉を口にする。本当はもう一言つけ加えたい気持ちもあるが、今そこまで言う必要はないだろう。


「……やっぱこの二人、お似合いじゃねえのかな?」


 オレステスとヘルミオネ。

 少なくともまだ、彼女の方は意識するところがあるんだろう。罪悪感を、一つの好意と解釈すればの話だが。

 だってどうでもいい人間に対して、罪の意識を感じたりはしない筈。

 個人的には脈ありだと思う。まあ男の俺がそう思ってるだけなんで、女性であるヘルミオネについては全く別だろうが。


「――」


 不意に、孤独を思う。

 俺は何一つ、自分で手に入れたものなんてないんじゃないか?

 何もかも、他人から奪ってばかりじゃないか?


「……ネオ?」


「お、おう?」


「珍しいね、考え事してそうな顔で」


「俺だって物思いに耽ることはあんだよ。ほら、アテナ様の部屋に行くぞ」


「あ、ちょっと!」


 心配するヘルミオネの横を、仏頂面で通過する。

 頭の中にあるのは、自分に対する嫌悪感だけだった。

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