最終話 罪と罰
午後七時三十分。東京都の奥地にある辺鄙な村。犬吠埼村に建設されたロッジの中で、一人の女が安楽椅子に腰掛けた。
部屋の机には蝋燭が置かれている。蝋燭の炎が、その近くに置かれた時限爆弾を照らす。
「後三十分。これで私の復讐は終わる」
安楽椅子に座る女が呟くと突然、周囲が明るくなり、部屋の中に誰かが侵入した。
侵入者は先程の女の声が聞こえたのか、このように言葉を返す。
「残念ながら、あなたには復讐する動機がない。なぜなら僕があなたから復讐という犯行動機を奪ったから。即ちあなたは復讐できない」
聞き覚えのある男の声に、女は頬を緩ませる。
「まさかこんな辺鄙な場所で会うことになるとは思わなかったですね。ラグエル」
ラグエルというコードネームを聞き、男は懐中電灯で椅子に座る女の顔を照らす。黒いボブヘアの女は、眩しい光に思わず目を瞑る。
ラグエルと対峙する女の正体は田中ナズナだった。
「リアルでは初めてですよね。いつもは電話でしか会話したことがなかったので、緊張しますよ。ガブリエル」
ガブリエルというコードネームを聞き、田中ナズナは笑みを見せる。
「それでは説明してください。私の目的とは何か」
「九年前の豪華客船ファンタジア号人質籠城事件に関する復讐。あの事件で最後まで人質として監禁されたあなたは、爆発に巻き込まれながらも生存しました。しかしあなたは同じように監禁された妹を失ってしまった。本来なら船長や主催者も最後まで人質として監禁されなければならなかったが、あの二人は最後まで残らなかった。それが許せなくて殺人計画を作り、ネット上で見つけた三人の手駒を利用して、あの三人を殺害しましたね」
ラグエルこと愛澤春樹の推理を聞き、田中ナズナは拍手する。
「正解。箱辺小次郎を殺害計画の被害者リストに加えたのは、九年前の会見の言動に殺意を感じたから」
「三好葛と女郎花仁太は、捜査かく乱のため。この二人に秋野進希を加えた三人に殺意を覚えている二人を犯行グループに入れることで、本来の復讐という犯行動機を隠す。最高な計画でしょう」
「はい。この計画を授けたのは工藤瀬里香。彼女は優秀なサイコパスの才能があったから影武者として利用させてもらいました」
田中ナズナがペラペラと自白すると、愛澤は一歩を踏み出す。
「それではあなたの犯行動機。九年前の豪華客船ファンタジア号人質籠城事件に関する復讐。これを論破してみます」
「面白いですね。あなたらしくないと思いますよ。あなたは世界と光に復讐する天使。ラグエルのコードネームを持つ男。そんなあなたが復讐を否定するなんて」
「否定するつもりはないのですが、幼馴染としてあなたを救いたいと考えているだけですよ。僕はラグエルとしてあなたに会いに来たわけではなく、愛澤春樹として会いに来たのですから。それでは論破してみますね。まずあなたが復讐しようと思ったのは、事件を起こしたテロリストだったはずですね。しかしそのテロリストはウリエルが、残党共々抹殺しました。逮捕されたテロリストは、今年一月に発生した東京拘置所爆破事件に巻き込まれ亡くなったことでしょう。これであなたはテロリストに復讐するという犯行動機を失いました」
田中ナズナは安楽椅子に腰かけた状態で足を組む。
「その情報なら調査済みですよ。今年の五月に雇った探偵さんに調べてもらいました。彼の調査報告書を読んで、私は自分の本当の名前を取り戻したんです。それで論破したつもりですか」
「慌てないでください。ここからが本番です。最愛の妹を失ったことで、あなたは九年前の事件関係者たちを恨んだそうですが、残念ながらその犯行動機も成立しなくなるんですよ」
「逆恨みだからと言いたいんでしょう」
田中ナズナは鼻で笑う。しかし愛澤は首を横に振った。
「そうではありません。前提を引っくり返そうと言う話です。原因があるから結果がある。しかしその原因が間違っていたとしたらどうでしょう」
愛澤春樹が告げると、二人がいる部屋に新たなる侵入者が現れた。愛澤は咄嗟に電燈を付け、二人の顔を田中ナズナの前に晒す。
愛澤の隣に立ったその女の顔は、田中ナズナと似ている。髪型までそっくりで、違いは首筋に黒子がないことのみ。
もう一人の女は茶髪のショートカットが特徴的である。その女とどこかで会ったことがあると田中ナズナは感じた。
「ご紹介します。あなた。江口寿々菜の双子の妹の江口寿々白。そしてあなたの友人として最後まで人質として監禁されていた早見結さんです」
愛澤の紹介を受け江口寿々白は改めて姉の顔を見る。そして彼女は双子の姉の元へ右腕を差しのばし、涙を流す。
「寿々菜お姉ちゃん。私のために復讐しようとしていたのなら、自首してください。私も出頭しますから」
田中ナズナは安楽椅子から立ち上がり妹の手を取る。
「この暖かさ。間違いなく寿々白の手。私はあなたが死んだと思っていました。だから復讐しようとしたのに……」
江口寿々白は愛する双子の妹に抱き着き、涙を流す。その光景を見た西村桜子、本名早見結は、ラグエルに耳打ちする。
「これが結果なら、私は必要なかったのでは」
「何も分かっていませんね。九年前の豪華客船ファンタジア号人質籠城事件の呪縛からあなたたちを解放するには、あなたにもこの現場に立ち会ってもらう必要があります。そのように感じたから、あなたを連れて来たんですよ」
その直後、江口寿々白は姉から離れ、愛澤に対して優しく微笑む。
「春くん。ごめんなさい。私は父親を殺害した罪を償わないといけないから。これ以上一緒に暮らすわけにはいかない。お姉ちゃんは殺人計画を企てたということは、何かしらの罪に問われるんでしょう。だから姉妹仲良く警察に行く」
その幼馴染の声を愛澤は静かに聞くことしかできなかった。
「そうですか。分かりました。その前に爆弾を解除する必要がありますね。おそらく後十分ほどで警察が到着することでしょう」
愛澤は手際よく爆弾を解除してみせる。その最中、西村桜子は右手を挙げた。
「ラグエル。私もここに残る。ここにいた方がややこしくならなくて済むと思うから」
「分かりました」
爆弾の解除が終わると、愛澤春樹は三人をロッジに残し、西村桜子と共にロッジから脱出した。
三人だけになったロッジの中で、江口寿々白は小さく呟く。
「今でも好きだから。出所するまで待っていてね。春くん」
それから五分後、愛澤たちと入れ替わる形で警視庁の刑事たちが到着する。
現場に乗り込んだ大野警部補と須藤涼風はそのロッジで西村桜子の姿を見る。
「まさかこの場所に行っていたとは思いませんでした。心配しましたよ」
大野が西村桜子の肩に手を置く。すると彼女は優しく微笑んだ。
「ごめんなさい。少しだけ昔のことを思い出して、過去の因縁に決着を付けにいってきました。でもこうして九年前の事件で爆発が起きるまで囚われていた三人の生き残りが一堂に会すことができて、幸せです」
ロッジの玄関先では、双子の姉妹が立っている。
「日向沙織。嫌、江口寿々白だな。殺人容疑で逮捕する」
警視庁の刑事が江口寿々白の手に手錠を掛ける。その彼女の隣にいる田中ナズナ、本名江口寿々奈は静かに両腕を刑事に差し出した。
「刑事さん。ロッジの中を見てください。中に解除済みの爆弾と宝石店空海から盗ませたアクアマリンとトバースが置かれていますから」
田中ナズナの一言を聞き、須藤涼風は彼女の顔を見る。
「それは本当ですか」
「もちろん」
田中ナズナの答えを聞き、須藤涼風は刑事たちに指示する。
「ロッジの中を調べてください」
田中ナズナの供述通り、ロッジの中からトバースとアクアマリンが発見された。
それから江口寿々奈と寿々白の双子姉妹は、警視庁のパトカーに乗せられた。
連行されるパトカーの車内で、江口寿々白は隣の席に座る姉の手を優しく握る。
その後の捜査でロッジから、アクアマリンとトバースが発見される。見つかった宝石は何れも宝石店空海で盗まれた物だった。
こうして劇場型犯罪にまで発展した復讐劇は静かに幕を閉じた。
翌日の早朝。警察庁の官房室長室に倉崎和仁官房室長を始め、浅野房栄公安調査庁長官と八嶋祐樹公安部長が集まった。
官房室長に設置された大きなテレビでは、ニュースが流れている。
『昨晩インターネット上に爆破予告が書き込まれた事件について。警視庁は悪質なイタズラであると発表しました』
そのニュースを聞き、倉崎和仁官房室長はテレビのスイッチを切る。
「やっぱりイタズラだったか。奴らによる爆破テロが始まったと思ったのだが」
倉崎が呟くと、浅野房栄が椅子に座り足を組む。
「そういえば昨晩テロ組織『退屈な天使たち』のメンバー、ガブリエルが逮捕されたと聞いたのよ」
浅野は八嶋の顔を見る。だが八嶋は組織の幹部が逮捕されたというのに、全く喜ばない。
「ガブリエルは不起訴になりそうです。彼女を逮捕の前には、最大の壁が立ち塞がるのですから」
「どういうことなの」
浅野房栄が首を傾げると、八嶋公安部長は机の上に一枚の紙を置いた。
「昨晩警視庁に届いた匿名のメールです。現在事実確認を実施しているところですが、ガブリエル、本名江口寿々白は二年前に亡くなっているようです」
「最大の壁というのは、失踪宣告のことか」
倉崎官房室長の声に八嶋公安部長は首を縦に振る。
「民法三十条第一項より。不在者の生死が七年間明らかでないとき、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。失踪宣告をすれば、戸籍は抹消されます。江口寿々白は失踪宣告をされ、社会的に死亡した存在ということですよ。死亡扱いされている人間を、警察組織は裁くことができない。それに彼女が一連の事件に関与していると言う証拠もない。だから不起訴処分になりそうなんです。その代り、彼女は失脚して、二度と政治家として活動できないようですが」
「ガブリエル。厄介な相手ね。この国の法律によれば、テロ組織のメンバー全員が逮捕されないと、死刑は執行できない。一人でも逮捕できない存在がいるのなら、万が一組織を一網打尽にできたとしても、事実上の終身刑で終わる」
浅野房栄は不安を口にしながら、警視庁に送られた匿名のメールを見つめた。
丁度その頃、イタリアンレストランディーノで愛澤春樹は優雅な朝食を味わった。
そんな彼はコーヒーを一口飲みながら、数週間前の出来事を思い出す。
平成二十五年七月六日。午後十時。愛澤春樹はイタリアンレストランディーノに仲間たちを集めた。
貸し切り状態となった店内には愛澤を含む十人の男女が集まる。この場にいる十人は、テロ組織『退屈な天使たち』のメンバーだ。
「皆様に集まっていただいたのは、他でもありません。実は先日ガブリエルから犯行計画書が届きました。その計画によると七月十四日、彼女は私怨を晴らすための復讐殺人を実行しようとしているようです」
愛澤春樹。コードネームラグエルが仲間たちに伝えると、肩より下まで髪を伸ばした女、ハニエルが挙手した。
「その個人的な復讐を止めるために私たちを集めたのですか?」
「ハニエル。違いますよ。我々は彼女の復讐を止めるのではなく。彼女の復讐に協力するんです。因みにボスは彼女の復讐を黙認しています。ボスが復讐を黙認した目的は、彼女の復讐を利用して、某国の工作員を国外に逃がすためと、彼女が仕掛ける劇場型犯罪を検証することで、組織の目的の達成時期を計算すること」
「復讐殺人か。ということは人間を撃ち殺してもいいんだな」
レミエルが目を輝かせてラグエルに尋ねる。
「はい。計画にはあなたの狙撃も含まれていますよ。しかし僕は彼女の復讐を黙認することができません。ということで、彼女の復讐に加担したうえで、彼女の暴走を止めます。一見矛盾しているように見えますが、協力しますか」
ラグエルの言葉を聞き、九人の男女は一斉に首を縦に振る。
「それは良かったです。ということで作戦を伝えます。まずはサラフィエル。あなたには凶器の運搬を担当していただきます。ガブリエルの復讐に協力する三人の暗殺者に凶器となる拳銃と、リストに書かれた宝石を詰めて送ってください。ガンリュウ流通の社員に変装して」
ラグエルは短い茶色の髪に赤い眼鏡をかけた痩せ型の男、サラフィエルに視線を移す。
それから次に彼はハニエルの顔を見る。
「ハニエル。あなたは明日から海王島の秋野邸でメイドとして潜入していただきます。そこで暗殺者の手助けをしてください」
「分かりました」
次にラグエルは席から立ち上がり、レミエルの肩を叩く。
「レミエル。あなたは少し忙しいですよ。七月十四日午前十一時、エリザベスマンションの前で張り込みを続けている公安を狙撃で始末してください。それからヘリコプターに乗って海王島に飛び、第四の被害者を始末してください。標的の写真は後程送ります」
ラグエルは最後に残った五人の男女に声を掛けた。
「ウリエルはレミエルと共に七月十四日午前十一時、公安を始末してください。そして残りの四人の男『鴉』はエリザベスマンション周辺での張り込みです。不審な人影を目撃したら始末して構いません。それでは全員に指示を与えたので、作戦会議は終了します」
愛澤は、あの夜の作戦会議のことを思い出しながら、熱いコーヒーを飲む。
それから彼がコーヒーカップをテーブルに置くと、店主の板利明はカウンター席に座る愛澤の前にサラダを置きながら、尋ねる。
「良かったのか。江口寿々白が出頭して」
この問いを聞き、愛澤は失笑する。
「愚問ですね。彼女は脱獄を望みません。だから裏技を使わせてもらいました」
「裏技」
板利が小さく呟くと、愛澤春樹はテーブルの上に書類を置く。
「これは数か月前に幼馴染の高崎一探偵から受け取った調査報告書です。この書類には真実が書いてあります。江口寿々奈は失踪宣告により二年前に死去。江口寿々白は戸籍が抹消されていない。二人の内一人が生き残って一人が死んだ。彼女も死んでいたならば、同じ手を使ったのですが、彼女は生きていました。だから菅野弁護士に事情を話し、強硬手段で彼女を不起訴処分にしようと暗躍したんですよ」
「どんな手段を使った」
「記憶喪失の彼女は、突然現れた父親を前にして錯乱し、殺してしまった。この真実を利用して、刑法三十九条第一項。心神喪失者の行為は、罰しない。この条文が利用できないかと相談したら、かなり強引な形で刑法三十九条第一項を使うと約束しましたよ。これで彼女は不起訴処分になるでしょう」
「愛する幼馴染のためにそこまでするとは。最初からこうすれば良かったのではないか。あの段階で彼女が江口寿々白だということは分かっていたのだろう」
板利の発言を聞き、愛澤は赤面する。
「別にいいでしょう。幼馴染が困っている所を助けて何が悪いのでしょうか」
「その台詞を聞いたら、娘の郁美ちゃんが悲しむだろうが」
娘の名前を聞き、愛澤は不敵な笑みを浮かべた。
「さあ。どうでしょうか。そろそろ彼女にも打ち明けるべきなのかもしれません。出生の秘密」
その頃、大分県竹田市の金山旅館から、テレサ・テリーがチェックアウトした。
旅館の玄関の前に彼女が立つと、同じく玄関に立っていた一人の大男が、彼女に声を掛ける。
その男は藤井京助警部だった。藤井はテレサの姿を見つけると、咄嗟に彼女の手を掴む。
「テレサ。待っていた。お前に話が……」
藤井は勇気を振り絞り、デートを申し込む。その直後、テレサのスマートフォンが着信する。
テレサは手荷物からスマートフォンを取り出し、表示された名前を読む。そして彼女は赤面しながら、電話に出た。
「ハロー。博也。何のよう?」
藤井京助は博也と言う名前に聞き覚えがない。その男の名前から藤井は嫌な予感を覚える。
「そう。来週帰国するんだね。だったら来週ロードショーされる最後の武道会を一緒に観ない?」
最後の武道会。それは人気推理作家原作の劇場映画だったことを、藤井京助は思い出す。
その映画の内容よりも、この状況を理解しなければならないと藤井京助は思う。
テレサは自分の目の前で博也と名乗る男にデートを申し込んだ。それが意味することに、彼はすぐに察した。
「良かった。じゃあ、チケットは用意してあるから心配しないで」
テレサが電話を切り、藤井の顔を見る。
「それで話って何?」
「その前に一つだけ聞かせてくれ。プライベートなことを聞くのは変かもしれないが、博也というのは誰なんだ」
「高校の同級生で私の友達だよ」
「そうか。だったら俺と付き合ってくれ」
藤井京助は後悔した。いくらなんでもタイミングが早過ぎる。こういうことは交際を続けてからなのではないかいう思考が彼の頭に浮かぶ。
「捜査三課の係長さんとは友達になりたいと思うよ。また非番の日にゆっくり話が聞きたいな」
テレサの言葉を聞き、藤井はガッツポーズをとる。とりあえずテレサは藤井の告白をスルーしたようだった。
その後でテレサは藤井に名刺を渡す。
「これがプライベート用の名刺だよ。また会おうね」
間もなく旅館の玄関前にタクシーが停車する。テレサはタクシーの後部座席に乗り込む直前、藤井京助に優しく微笑みかけた。
平成二十五年七月二十一日。事件解決から一週間後、江口寿々白は東京都内のカフェで黒いスーツを着た菅野弁護士と向かい合う形で座った。
店内に静かなクラシック音楽が流れる中で、江口寿々白は目の前に座る弁護士に尋ねた。
「どうして私を不起訴処分にしたんですか」
菅野はコーヒーを一口飲み、彼女の目を見る。
「当時記憶喪失だったあなたは、錯乱状態に陥り、突然目の前に現れた父親と名乗る男を殺してしまった。これは事実でしょう。だったら不起訴処分になって当たり前です。刑務所に入ることだけが、罪を償う手段だと思ったら大間違いですよ。あなたなりの罪の償い方をすればいいではありませんか」
「確かにそれは事実だけど、それではいつまでたってもあの人の元に帰れないんです」
「なるほど。罪を償った綺麗な姿で、誰かと再会を果たしたいと考えているようですね。弁護士の自分が言うのもおかしな話ですが、罪を犯した人間は全員同じ十字架を背負って生きているんです。その十字架と向き合うが罪を償うということなんですよ。自分の罪と向き合うことが罰だと僕は考えています」
菅野弁護士の話を聞いた江口寿々白は、突然涙を流す。その涙は延々と流れ続ける。
菅野聖也弁護士は静かなクラシック音楽と涙の声を聞きながら、自分の席から立ち上がり、彼女の肩に優しく触れた。