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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な転校生に手を焼く】
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第九話 ジュリアスの気持ち……?2*

 私が呼ばれたのは窓際のテーブルだった。リリーシャとクェンティン、ガーサイド、アリヴィナが座って談笑している。


「一緒に食べていいの?」

「良いよ。友達だろ?」


 クェンティンは隣の空いた席から椅子を持って来てくれた。


「相席を許可するわ! さあ座って!」

「うん、ありがと!」


 トレイをテーブルの上に置いて、座ろうとしたときだった。


「……私は嫌よ」


 隣からヘソを曲げたような声が聞こえてきた。誰かと思って振り返ると、それは以前仲が良かったアリヴィナ・ロイドだった。

 アリヴィナは、片肘付いて私を横目で見ている。それも、不機嫌極まりない表情で。


「えっ!? アリヴィナさん、なんで!?」


 にわかにはアリヴィナの言葉だとは信じ難かった。けれども、アリヴィナの目が確かに私を敵視していた。


「私は、異国の人なんて信用できないから、嫌だって言ってるの」

「そ、そんな……! だって、私たち友達だよねっ!」

「そんなこと言った覚えはないわ」

「そんな……」


 私の魂が、リリーシャの身体と同化していたときには、あれほどまでにアリヴィナは私に優しかったというのに。見た目でこれほどまでに反応が変わってしまうものなのだろうか。

 二の句が継げなくて、突っ立たままアリヴィナを見つめていると、彼女はうんざりしたように、怒気をため息に変えた。


「アンタが退かないなら、私が退くわ。じゃあね」

「あ、アリヴィナさん……」


 アリヴィナはトレイを持って立ち上がると、私の方を気に懸けるそぶりもなく、さっさと帰って行ってしまった。


「鳥居、わりぃ! アリヴィナに変わって謝る! おい、アリヴィナ!」


 ガーサイドは、すまなそうな表情をしていたが、食器の乗ったトレイを持って足早に消えた彼女を追いかけて行った。


「そんな……」


 私は泣きたい気持ちになっていた。食欲もすっかり失せてしまった。スプーンを持ったまま固まっていると、リリーシャが私の肩に手を乗せた。


「仕方ないの!」

「香姫が悪いわけじゃないよ」

「驚かないで聞いてね!」

「アリヴィナは、異国の妖魔に妹を殺されているから……」

「えっ!?」

「残念ながら本当なんだ」


 そんなこと聞いたこともない。だって、アリヴィナはいつも明るくて、クラスの中心人物で――。

 異国の妖魔に、妹を殺された……?

 そんな人が身近にいるだなんて――。


「アリヴィナだって、香姫の事が本心から嫌いなわけじゃないはずよ! 香姫の良さは、私が一番分かってるんだから!」

「そうだな、きっと大丈夫だよ」

「う、うん!」


 リリーシャとクェンティンの言うとおりだ。私がリリーシャだったとき、アリヴィナとあんなに仲良くできていたのだから。きっと分かってくれる時が来る。

 気を取り直した私は、リリーシャとクェンティンと談笑しながら、美味しく食事を摂ることができたのだった。



・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜゜・*:..。o○☆*゜¨゜



 その日の夜、私は女子寮の自室に戻り、勉強机に向かいデータキューブを開いて宿題をしていた。

 やっとデータキューブを自力で開けるようになったのだ。初めてデータキューブを開いたときの感動は、筆舌に尽くし難い。感極まって泣いてしまったのはここだけの話だ。


「でーきたっ!」


 ご機嫌で私は椅子に座っていた足をばたつかせた。そして、膨らんだポケットの中身を確認する。


 ポケットの中には、ジュリアスから貰った『授業で当てられなくなるおふだ』と『アメ玉』が入っている。それを確かめてにんまりした。明日はシャード先生の授業でこのおふだの効き目を確かめるのだ。


「そう言えば、このアメを食べたらジュリアス君が私に抱いている想いが分かるって――」


 どういうことなのだろう。私は胸を高鳴らせながら、包み紙を開いて口の中に放り込んだ。


 甘い味が――。

 しないうちに、口の中でボンッと破裂した。口の中でポップコーンの粒が一つはじけるような感じで、特にケガはないが。

 口を開くと白い煙が立ち上る。

 特に味は感じない。焦げ臭いにおいが口の中で充満した。


「けほっ!」


 口の中で破裂するようなのがジュリアスの気持ち……? 焦げ臭いのが?

 それはつまり――。


「分かるかっ!」


 思わず包み紙をくずかごに思い切り放り投げる。しかし、ジュリアスの性格のようにゆらゆらと軌道からはずれて外に落ちた。


「うがあああああ!」


 ジュリアスが、クスクスと笑っているような気がして、ことさら歯がゆい気持ちになるのだった。


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