第八話 ジュリアスの気持ち……?*
澄恋に頭を撫でてもらっていた女子を、まさかこんなところで見つけてしまうだなんて。立ち止まって暫く見ていると、彼女がその場から離れた。それを見計らって、今まで彼女がそこにいた場所に私は駆け寄った。
一体、何を見ていたのだろう?
そのショーケースを取り巻く人々は、向こうの雑貨を見ている人たちとは一線を画し、身なりが良い。
彼らに混じって、私はショーケースに近づいた。
そこには、高価な剣や弓などの武器や装飾品が、まるで宝石のように並んでいた。あの女の子が見ていたのは、腕輪だった。
何の腕輪だろう? もうちょっと近づかないとタグが敷き布に隠れて見えない。私はショーケースに近付こうとした。
「香姫さん、もうそろそろ帰らないとまずいんじゃない? 門限に間に合わないよ?」
「えっ……誰?」
そこに立っていたのは、大きな紙の買い物袋を両手に抱えた少年だった。声だけでかろうじて少年だと分かる。
「僕だよ?」
少年はクスクスと笑って、買い物袋を地面に降ろした。
「ジュリアス君!?」
それはジュリアス・シェイファーだった。
「たくさん買い込んだんだね……」
「まあね? お金なら沢山あるからね?」
そうか、賞金首を倒したから……。借金だらけの私には羨ましい限りだ。
「あっ! そうだ!」
私は少女が見ていたショーケースの事を思いだして駆け寄った。
しかし――。
「あ、あれ? なくなってる!?」
ショーケースの中身は売れてしまい、いつの間にかなくなっていた。
「どうしたの?」
「う、ううん……なんでもない」
不思議そうに訊いてくるジュリアスに曖昧な笑みを返した。
あの子が、何を見ていたのか詮索してもどうにもならないだろう。澄恋とあの子の関係がどうにかなるわけでもあるまいし。
「すみません、魔法学校まで瞬間移動の魔法をかけてもらえませんか?」
ジュリアスはちゃっかりしていた。
傍にいた軍警官にそう言って、私とジュリアスは瞬間移動の魔法ですぐに送って貰えたのだった。
そこは、魔法学校のグラウンドだった。私の横を物珍しそうに生徒たちが通り過ぎていく。
「ジュリアス君、今日はありがとう」
「僕の買い物のついでだから構わないよ」
そう語るジュリアスの顔は、買い物袋に隠れて見えない。
「ジュリアス君、そんなに買い込んでどうするの?」
「どうするって、使うんだよ……色々なことにね……」
そう言って、ジュリアスはクスクスと笑っている。
怖い! 怖すぎる……!
私がドン引きしていると、ジュリアスは買い物袋を降ろした。
「ええとね……」
買い物袋の中をジュリアスはかき回して、何かを取り出した。
そして、私ににっこりと微笑みかけた。
「これ、あげる。欲しそうにしてたからね?」
それは、私が喉から手が出るほど欲しかった『授業で当てられなくなるおふだ』だった。プラスチックみたいな透明なケースに入っていて折れ曲がらないようになっている。
「ありがとう、ジュリアス君!」
「いいよ。お金なら沢山あるからね?」
綺麗な悪魔はクスクスと笑っている。
うあ……。
更に、買い物袋からジュリアスは何かを取り出した。
「それと、これ。後で食べてみて?」
私の手を取って何かを手に握らせた。かさりと音がして手を開くと、包み紙にくるまれた飴玉が一個あった。
「えっ? これってアメ?」
何も書かれていないが、何のアメなのだろう。
「それを食べたら、僕が香姫さんに抱いている気持ちが分かるよ」
「えっ?」
「じゃあね、香姫さん」
「う、うん、また明日!」
それでお開きとなり、私たちは解散した。
そしてお腹がすいたので、大食堂で夕飯を食べることになった。
私はパエリアのような貝の乗った料理を選択して席を探した。
しかし、丁度夕飯時らしく賑わっていて、空いたテーブルが見つからない。
「香姫!」
向こうで、リリーシャ・ローランドが手を振っていた。隣にはクェンティン・ノースブルッグも、アミアン・ガーサイドにアリヴィナ・ロイドまでいた。
「香姫、ここ座りなよ」
クェンティンが優しい言葉をかけてくれた。
「うん、ありがとう!」
私は嬉しくなって彼らの元に駆け寄るのだった。




