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心理学は正しいのか?  作者: シンリーベクトル


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11/20

イジメ対策に足りないのは構造的視点だ

直近のいじめと「対応の遅れ」


直近でも、いじめに関する痛ましい出来事が報道された。

ここで責任の所在を追うつもりはない。


ただ一つ確かなのは、

多くのケースで問題になるのは

「いじめがあったか」以前に、「対応が遅れたこと」だ。


この遅れは怠慢ではない。

状況を見極め、波風を立てないよう配慮した結果として起きている。


だが時間が経つほど、

いじめ行動は

「止められなかった」「黙認された」「環境が動いた」

という経験を積み、強化されていく。


対応の遅れとは、

いじめに報酬が与えられ続ける時間が延びることでもある。


この先では、

感情や個人ではなく、

「報酬が残る構造」に焦点を当てる。


いじめは「支配による報酬」への依存である


いじめはしばしば、

感情の暴発や性格の歪みとして説明される。


だがそれだけでは、

なぜ繰り返されるのか

なぜ簡単にやめられないのか

を十分に説明できない。


視点を少し変えると、

いじめはもっと単純な構造をしている。



いじめで得られる「即時の報酬」


人を制圧した瞬間、

加害側には複数の報酬が同時に入る。

• 相手を下に置いたという 優位ランク

• 自分が攻撃されない側だという 安心セフティ

• 周囲が黙認・同調することで得られる 歪んだ帰属ユナイト


しかもこの報酬は、

• 努力がいらない

• 能力がいらない

• 結果がすぐに出る


という特徴を持つ。


つまり、


気に入らない

→ 制圧する

→ 即、報酬が入る


という、非常に効率のよい行動ルートが成立する。



なぜ「依存」になるのか


この構造は、強い依存性を持つ。


不快や不安を感じた瞬間、

いじめという行動を選べば、

• 状況が即座に変わり

• 自分が上に立ち

• 不快感が一時的に消える


という成功体験が積み重なる。


その結果、


不安

→ 制圧

→ 報酬


というループが学習されていく。


これは感情の問題というより、

報酬によって行動が固定されていく学習構造に近い。



「嫌いだからいじめる」は本質ではない


表面的には、

• あいつがムカつく

• 変だから

• 空気を乱すから


といった理由が語られることが多い。


しかし実際には、


「制圧した方が早くて楽」


という選択が、

無意識のうちに最適化されているケースが多い。


いじめは、

強い意志や悪意によって始まる行為というより、

楽に報酬が得られる手段として固定されてしまった行動

と考えた方が実態に近い。



例外①:生存防衛として起きるケース


すべてのいじめが、

支配による快楽を主目的としているわけではない。


たとえば、

• 自分がいじめられている立場の人が

 さらに弱い相手を攻撃する場合


このときの動機は、

支配の快感ではなく、

自分が次の標的にならないための防衛である。


結果として報酬は入るが、

このケースは依存というより

セフティ(安全)の誤作動に近い。



例外②:集団同調としてのいじめ


また、

• 主犯ではない

• 流れに逆らえない

• 乗らないと自分が危ない


という理由で加担するケースもある。


この場合に得ている報酬は、


相手を支配する快感

ではなく

排除されずに済む安心


である。


それでも行動としてはいじめに関与するため、

結果的には同じ報酬ループの中に組み込まれていく。



それでも共通していること


例外を含めても、

共通している点は明確だ。


人を制圧することで、

何らかの報酬が得られている


この報酬が続く限り、

行動は止まりにくい。



いじめを止めるために必要な視点


ここから見えてくるのは、

いじめを

• 心の問題

• 道徳の問題

• 性格の問題


として扱うだけでは不十分だ、ということだ。


本質は、


報酬設計の問題


にある。


制圧するよりも、

• 成果や貢献が評価される

• 工夫が可視化される

• 安全が保証される


別の報酬ルートが用意されていない環境では、

いじめは「最も楽な選択肢」として残ってしまう。



まとめ


いじめは、

人を支配することで簡単に報酬が得られる構造に

依存してしまった行動パターンである。


例外は存在するが、核心は変わらない。


いじめをなくしたいなら、

人の心を叱る前に、

人が何によって報酬を得てしまう環境なのか

を見直す必要がある。


学校や大人が無意識に作ってしまう


「いじめに報酬が残る構造」


いじめが続く最大の理由は、

「注意が足りないから」でも

「厳しく叱っていないから」でもない。


行為の後に、報酬が残ってしまっているからだ。


学校や教師、周囲の大人は、

決して「放置しているつもり」はない。

むしろ多くの場合、

「指導した」「介入した」と感じている。


だが、構造的に見たとき、

報酬が断たれていない対応が繰り返されている。



①「注意するだけ」は報酬を消していない


最も典型的な対応はこうだ。

• 教師が口頭で注意する

• 本人はうなずく

• 場は収まったように見える


しかしその裏で、次のことが起きている。

• 周囲の注目を集めた

• 教師を動かした

• クラスの空気を支配した


これは

ランク(影響力)報酬と

可視性(注目)報酬が発生している状態だ。


怒られたとしても、

「場を動かせた」という実感が残れば、

行動は弱化しない。



②「双方に問題がある」は最悪の報酬設計


よくある処理に、次の言葉がある。


「どちらにも悪いところがあったよね」


一見、公平に見えるが、

構造的にはこう学習される。

• 制圧した側

 → 相手を動かせた

• 制圧された側

 → 責任まで負わされた


結果として、


制圧は“有効で、咎められにくい手段”だった


という学習が残る。


これは、

報酬と正当性を同時に与える

最も危険な対応だ。



③「早く終わらせる」は報酬を最大化する


学校現場では、

混乱を早く収める必要がある。


そのために、

• 被害者に我慢を促す

• 配置換えで済ませる

• 話し合いで曖昧に終わらせる


といった対応が取られがちになる。


だが結果はこうだ。

• 行動した側

 → 環境を動かせた

• 行動しなかった側

 → 負担を引き受けた


これは明確に、


「動かした者が得をする」


という報酬設計であり、

いじめ依存を強化する構造になる。



④ 周囲の沈黙も「報酬」になっている


問題は教師だけではない。

• 周囲の生徒

• 保護者

• 他の教職員


が沈黙することで、

• やっても大きな問題にならない

• 誰も本気で止めない


というメッセージが成立する。


沈黙は中立ではない。


制圧行動を、実質的に承認している状態になる。



では、何を変えるべきか


重要なのは、

「叱るかどうか」ではない。


制圧しても、何も得られない

という経験を、

現実として積ませることだ。



報酬を与えないための最低条件


① 可視性を与えない

• 皆の前で長く注意しない

• 見せしめにしない

• 舞台に上げない


注目そのものが報酬になる。



② 行動で状況が好転しないようにする

• 制圧によって

 立場・環境・役割が改善しない

• 得をしない


ここが最重要だ。



③ 別の報酬ルートを明示する

• 協力

• 貢献

• 工夫


「我慢」ではなく、

非制圧的な行動が評価される設計を

実際に機能させる必要がある。


これがなければ、

制圧は最適解のまま残り続ける。



いじめを止めるとは、怒りをぶつけることではない


いじめを本当に止めるとは、

• 加害者を叱り倒すことでも

• 被害者に強さを求めることでもない。


「制圧では何も得られない」という現実を、

一貫して作り続けることだ。


それには時間も労力もかかる。

だが、それ以外に

依存ループを断つ方法はない。



まとめ


いじめは、

個人の性格の問題ではない。


報酬が与えられ続けている環境の問題だ。


学校・教師・周囲の大人が、

無意識に与えてしまっている報酬を見直さない限り、

いじめは形を変えて再発する。


見るべきなのは、


「注意したか」ではなく、

「何を与えてしまったか」


そこである。

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