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─21話─ その後のバシリアン

─21話─


おばあちゃんのお葬式から何日か経った。


おばあちゃんは特に病気を抱えていたわけではなかったが、突然の心臓発作が原因のようだった。


コウガとハクガの落ち込みはもう見ていられないぐらいのものだったが、唯一の肉親として現世の煩雑な手続きをこなしていた。


こんな時に迅雷拳は無力だ。


人を抹殺することは出来ても甦らせることは出来ない。

当たり前の事だが、その事実が私たちに重くのしかかる。


我らの拳の在り様は暗殺拳だ

それは変わらぬ


だがその使い方は自ら決める事が出来る

アハムの世は狂った世だった故にその使い方も狂っていたのだ

この現世では誤ってはならぬ拳よ


ライデンの説教も今は素直に入ってくる

いや、それはライデン自身の後悔と決意の表れだったのかも知れない


そしてある日の喫茶バシリアン


「こんにちは!」


バシリアンは数日前から営業を再開していた。

最近はお客さんも増え始め、コウガとハクガは忙しそうにしていた。

しかし忙しいぐらいがちょうどいいのかも知れない。


「いらっしゃい」

コウガは相変わらず仏頂面だが、幾分表情が柔らかくなった気もする。

あくまで気がするだけだが。


そうそう

サユリちゃんがバシリアンにアルバイトで入ったのだ。


コウガとハクガだけだと人手も足りなかったし、新メニュー考案のためにはちょうど良かった。


「サユリちゃんお疲れ様!」


「いらっしゃいませマイ様!」


サユリちゃん、喫茶店の制服が似合ってる。


「どう?お店は」


「毎日楽しいです。お店を切り盛りするのもメニューを考えるのも」


嬉しそうに話すサユリちゃんを見て安心した。その表情もずいぶん優しくなったように見える。


「我ら姐さんにはいつも教えられています」

ハクガが答えた。


え、新入りのバイトの子に教えられてるの?

しかも姐さん呼びって、君ら大人として大丈夫か?


しかし3人でのカウンターの様子を見るとまさに姐さんと弟子たちのようだった。


「姐さん!お菓子こんな感じでどうでしょう?」

コウガが尋ね、サユリちゃんがOKサインを出す。

「ほらハクガ!いつまでも顔赤くしてないでこれ持ってって!」

「は、はい⋯!」


あ、これは適材適所だったかも。

そういえばサユリちゃん(バロン)はライデン軍の武将だった人だ。コウガとハクガも当然その下にいただろうから相性が良いのも納得だ。


収まるべきところに収まった

としか言いようがないね。


私は今日は挨拶に寄っただけだったが、ご馳走してくれると言うので一杯だけ注文することにした。


「じゃあハクガ、この『シンデレラの王子様とのキスの味がするレモンティー』をお願い」

また破壊力の増したメニューになってるな


くっ、と一瞬息を詰まらせたハクガが答える

「ふ、復唱します⋯、シ、シンデレラの王子様とのキ、キスの味がするレモンティーおひとつですね⋯」


ハクガ相変わらず真っ赤

可哀想だから変更はしないであげるね


バシリアンはもう大丈夫だ。

私はそう確信した。


そんなある日の喫茶バシリアン定例会議


私とサユリちゃん、コウガとハクガが出席者だ。今日圭一君はジンケイの意識と一緒に後継者探しをしているらしい。


まったくあの男は

「誰とも交わるつもりは無い」のなんと軽いことよ


サユリ

「まずこの店のメニューの根本的な問題点ですが、ネーミングの可愛らしさに実体が追いついていないのです」


確かに、メニューを見るとコウガが描いた(とは思えないような)可愛らしいイラストと、実際に供される商品との間にはかなりの開きを感じる。


サユリ

「ですので、このお店の看板メニューとして、多少値段は張りますがこのイラスト通りの物を再現したいと思っています」


マイ

「メニューに描かれているこの家とかウサギさんとかも?」


サユリ

「はいマイ様、その通りでございます」


コウガ

「なるほど!それなら映え重視の客にも好まれそうですな」


サユリ

「さすがに全てのメニューを揃えるのは難しいでしょうから、まずはひとつかふたつ作って『オススメ』として載せて様子を見ましょう」


サユリちゃん、この店のオーナーだったかな⋯


ハクガは押し黙っていた。

(今度は名前だけでなくアレそのものを運ばされる⋯だと⋯!?)


ハクガの声が聞こえてくるようだ

頑張って!応援してるから!



一方その頃の圭一


メガネをかけた圭一の意識にはジンケイが現れており、特にあてもなく学校内をうろついていた。


ジンケイ︰圭一君、今日はお付き合いありがとうございます


圭一︰いや構いませんけど⋯ジンケイさんが僕の中に同居してたのは何となく分かってましたけど、何で急に出てきたんですか?


ジンケイ︰ははは、マイさんたちにちょっと怒られちゃいましてね。「仲良くしなさい」って


圭一の意識と共に現れている状態でのジンケイは、圭一の言動に強く引っ張られていた。


圭一︰はあ、そうですか⋯

(今までこの人の記憶が無いから分からないけど、ジンケイってこんな人なんだ?なんというか随分馴れ馴れしいというか⋯)


圭一はこのジンケイという男のことも迅雷拳のこともよく知らなかった。

自分が産まれる前に完結しているコミック「迅雷の覇者」も読んだことはなかった。


圭一︰ところでジンケイさん、この先どうするんですか?


ジンケイ︰ええ、そこなんですが特に心当たりもないのでどうしようかと悩んでましてね


圭一︰え!ちょっと待って下さいよ!僕も勉強があるのでただぶらぶらしてるだけならもう帰りましょうよ!


ジンケイ︰ああそうなんですね!ごめんなさい、それでは帰りましょうか


この状態でのジンケイは主体性もあまり無かった。


こうして無駄な時間を過ごした圭一はようやく学校を後にしたのだった。


帰って遅れた分勉強しなきゃな⋯

そういえばバシリアンの会議はもう終わったかな

そんな事を考えていた圭一


「あっと、すみません」

誰かと肩が当たってしまった。


「おう、ちょっと待てや兄ちゃん」


あ、面倒な人に当たったな

圭一は即座に思った

「どうもすみません」


「人に怪我させておいてそれで済むと思ってんのか?ちょっとこっち来いや」


相手は3人、路地裏に連れていかれた

隙を見て逃げるか⋯?

さてどうしたものかと思案していると


ジンケイ︰圭一君、ちょっとメガネ外してもらって良いですか?こういう手合いには慣れてるんで


え?と思いつつ圭一はメガネを外した


「おお?メガネ外してやる気かー!?」

相手はそれを臨戦態勢だと受け取ったようだ。そしてそれはある意味当たっていた。


「怪我した肩というのはここのことか?」

ゴキュっと圭一の手が相手の肩にめり込んだ


「ぎゃあああ!!」

相手は肩を押さえて座り込んだ


「何しやがった!」

残りの連中が掴みかかってきた


「貴様らに俺は倒せん!」

ジンケイ(圭一)の拳が相手の額に次々とめり込み、全員がバタバタとその場に倒れた


「心配するな、貴様らの記憶を消したのみ」


ジンケイはその場を立ち去りメガネをかけた


圭一︰あれ?今確か男たちに絡まれてましたよね?


ジンケイ︰ああ、ちょっと話し合いをしたら許してくれましたよ。早いとこ帰りましょう


圭一︰は、はあ⋯


圭一にはメガネを外している間の記憶は無く、何が起こったのか分からないまま帰宅したのだった。


その日の夜


MINE着信︰陣 圭一



つづく


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